オーラル山中拓也が語る、初エッセイで伝えたかったこと「どんなクズでも這い上がれる」

 THE ORAL CIGARETTESの山中拓也が、自身初の著書『他がままに生かされて』を3月2日に発売した。本作は、発売日に30歳の節目を迎えた山中拓也が、自らの人生を振り返り、その経験をもとに現代を生きる人々にエールを送る内容となっている。

 努力することの大切さ。才能の有無は関係ない。消し去りたい過去も今の自分に必要な経験であり、自分の言葉でしか語れない教訓がある。家族や友達、仲間の存在。これまでの人生を振り返って、ここまで来られたのは自分ひとりの力ではなかったと彼は語る。きっと誰もが、”他がまま”に生かされている。

 本作に綴られている山中拓也の人生は、多くの人の人生とは重ならないかもしれない。けれど山中拓也は、一貫して、勝つまで粘り続ける強さを伝えてくれている気がする。そして、インタビューで語られるまっすぐな言葉は、あらゆる人に向けられていると感じたのだ。(とり)

「他がままに生かされて」の意味

――本作は「勉強よりも好きなことをやれ」ではなく、ちゃんと「受験勉強はやった方がいい」と書かれているなど、ある意味ミュージシャンらしくないエッセイ本だと思います。このようなメッセージを書いたのはなぜですか?

山中:学生時代は、受験に失敗したら人生が終わるみたいな風潮があるじゃないですか。でも、実際は受験に失敗したくらいで人生は終わらないし、たとえ落ちたとしても、合格に向けて努力した事実は必ず今後の力になる。だから、受験勉強を頑張ることには意味があるんです。そのように僕自身も学生時代に言われたかったなと。だから書きました。そう言われたら、もっと楽しく勉強に取り組めたのにって。僕もテストや受験に苦しめられた記憶が強くて、いまだにテストの前日に勉強できてなくて焦る夢を見ることがあるんですけど、今思うとあのとき頑張ってよかったなって思っているんですよ。

――いまの活動にも生きていると。

山中:はい。sin,cos,tanとか全く覚えてないですけど、目標に向かって努力し続ける忍耐力はバンド活動において生きている実感がありますね。もし、いま目の前の受験に向き合えない人は、受験以外のことに対しても同じように目を背けてしまうと思うんですよ。だから、落ちたら人生終わりって気負う必要はないけど、諦めずに努力する大切さを知ってほしいですね。

――中学生の頃も、ヤンチャをしつつも塾には行かれてましたよね。普通ならサボっちゃいそうですけど。

山中:当時は塾が唯一、親に対して筋を通せる場所だったんですよね。それに、小学生の頃は親に言われてドリルをやらされていたので、その頑張りが消えてしまうのはもったいないって気持ちもあったと思います。

――親や先生から言われたことを素直に受け入れるところも山中さんのいいところだと、読んでいて思いました。そして関わってきた先生たちが、みなさんとても熱心な方々でした。

山中:周りの人たちには、本当に感謝しかないですね。必要なタイミングで大切な言葉をかけられて、誰かの協力があって今がある。僕だけの力では、ここまで来られなかったと思います。泣き虫だった幼少期、親父に「その髪型がよくないんだ!」って言われて半ば強引に美容院に連れて行かれて、角刈りにされたことも感謝すべき思い出です(笑)。当時は訳がわからなかったけど、もしあのとき角刈りにされていなかったら、僕は今も泣き虫のままだったかもしれないですから。

――そのエピソード、とても面白かったです。ファンキーなお父さんですよね。

山中:基本は無口な人なんですが、例えば「今何時や?」って聞かれて、時計を見たら7時55分くらいだったので「8時やで」って答えたんですよ。そしたらすぐに「55分やないかい!」って背負い投げされたり(笑)。学生時代、警察に補導されたときも、めっちゃ怒られるって思ったら「いっそのこと刑務所入ってまえ」って笑いながら言われましたし。本当に掴みどころの分からない人です。

――今、お父さんとの関係は?

山中:最初はライブにも全然来てくれなかったです。メジャーデビューから3年後に日本武道館でライブをしたときも無反応でしたが、翌年、大阪城ホールでライブをやったときに初めて見にきてくれましたね。今では、実家に帰ったとき一緒に飲みに行って話をするくらいの仲になりました。なんだかんだ言っても、親父は頭がいいし尊敬する部分がたくさんあるので、大事な話が聞けるのはありがたいです。

――現在、「酒将軍」という居酒屋をやられている、中学生の頃の友人もすごかったですね。店名も最高です。

山中:彼はマジでヤバいです。漫画の『花の慶次』大好きな男で、自分が入院中で死にかかっていたとき、誰も病室に入れる状態じゃなくなったんですよ。それでみんな帰ったんですけど、彼だけは「いや入れてください」と無理やり入ってきて、枕元に『花の慶次』を全巻置いて帰ったらしいんですよ。何のメッセージ?という(笑)。

――助かったあと暇だと思ったのかもしれないですね(笑)。そのエピソードも含めて、タイトル通りの人生ですよね。このタイトルにはどんな意味があるのでしょうか。

山中:最初はタイトルを「七転び九起き」にしようと思っていたんですよ。小学生の頃、野球部の監督にもらった言葉で、「拓也は7回転んでも9回起き上がってくるやつだ」って意味があるんですけど、制作を進めていくうちに、もっとふさわしいタイトルがあるかもねって話になって。

 でも、その作業の中で担当の編集さんに「他人の話がよく出てきますね」「自分以外の”他”の存在を大切にされてきたんですね」と言われたことをきっかけに、「他がまま」という言葉が出てきました。そこに僕がずっと持っている「生かされている」という感覚を組み合わせて『他がままに生かされて』になりました。なのでこのタイトルも、僕だけの力で生み出されたものではなく、他人の言葉を受け入れて生まれたものなんですよね。