『東京卍リベンジャーズ』SF × ヤンキーの化学反応 花垣武道が戦う理由とは?

 本作の1番の特徴は、やはり「SF漫画」と「不良漫画」の両方の側面を持つことだろう。一見“空想の世界を描く”SF漫画と“リアルな世界観を描く”不良漫画では、相性が悪いように思う。しかし本作はしっかりと両ジャンルのバランスを取っている。まずSF漫画としてだが、これは“過去に戻って未来を変える”というSFの王道だ。過去を変えた後未来を確認するも想定とは違う未来になっているなど、手に汗握る場面も豊富にある。そして不良漫画としては“漢気のある主人公が成り上がる”という、こちらもまさしく王道。カリスマ性のある総長の存在やチーム同士での抗争など、不良漫画としてのアツい描写も多く描かれている。つまり『東京卍リベンジャーズ』は、どちらのジャンルとして読んでも楽しめるように仕上がっているのだ。そして2つのジャンルを掛け合わせることは、相性が悪いどころか2つの化学反応を起こしている。

 1つ目は不良漫画として、主人公が負けられない理由に裏付けがある点だ。従来の不良漫画では「主人公が負けたくないから勝つ」というのが戦う理由の主流であった。もちろんそれも爽快で面白いのだが、人間ドラマとしてはどこか物足りなく感じてしまう。しかし本作の場合は、主人公は自堕落なただのフリーター。喧嘩も弱ければ度胸もない。しかし武道はどれだけ殴られても、絶対に這い上がってくる。それは「未来を変え日向を守る」という裏付けがあるからに他ならない。この不良漫画の主人公らしくやられてもやられても立ち上がる姿に裏付けがあるため、読者はより感情移入して応援したくなるのだ。

 そして2つ目はSFジャンルと不良ジャンルを合わせることで、ミステリーとしての要素も強めている点である。本作では例えミッションに成功したとしても、想定とは違う事態が度々起こった。その度になぜそうなってしまうのかを推理しながら、武道が過去に戻り役割を果たすことになる。しかしこの手法は間々の過去での描写に強い魅力がなければ不可能なものだ。もし本作のジャンルがSF1本で、過去での武道の行動が未来を変えるための奔走に終始していたとする。そうなると何度も未来と過去を往復する構成は、ありきたりな展開となってしまい、読者を飽きさせてしまう。『東京卍リベンジャーズ』は武道の過去での行動が、不良漫画として単体で楽しめほどの内容になっているため、相乗効果でより厚みのあるSF作品に昇華できていると言えるだろう。

 アニメと実写映画の公開を控え、現在大注目の『東京卍リベンジャーズ』。本作の魅力の根源に、2つのジャンルを組み合わせた絶妙なバランスがあることは間違いないだろう。一見接点がなさそうなジャンルを組み合わせることで、邪魔になるどころか互いが互いに作品としてのクオリティーを底上げしている。『東京卍リベンジャーズ』は、“新しいSF漫画”であり、“新しい不良漫画”なのである。

■青木圭介
エンタメ系フリーライター兼編集者。漫画・アニメジャンルのコラムや書評を中心に執筆しており、主にwebメディアで活動している。

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