『美味しんぼ』屈指のトラブルメーカー・富井副部長にも長所はある? 好感度あげたファインプレー4選

ねぎまで上司の失態を防ぐ

 地下鉄のホームでネズミを見て腰を抜かし、さらに定期入れを落としたにもかかわらず「盗まれた」と騒いだ富井副部長。ホームに居合わせた氷岩人事部長は、その様子に憤りを持つ。

 氷岩人事部長から谷村部長とともに喫茶店に呼び出された富井副部長は説教を受けるが、その際、人事部長の後ろにいた山岡の変顔に吹き出し、口の中に入れたコーヒーを人事部長の顔にかけてしまった。

 激怒する氷岩部長は、「文化部のメンバーを全員入れ替える」と大原社主に迫る。困惑する大原社主、小泉局長と文化部の谷村部長、富井副部長、そして山岡と栗田。ここで山岡は、快楽亭ブラックの落語から「ねぎま」でなんとかすることを思いつく。

『美味しんぼ』(26巻)

 大原社主の計らいで、角丸副総理など政財界のお偉方を集め、「江戸情緒を味わう会」を開いた文化部。ここで出された料理はネギマで、大原社主は同席した氷岩部長に「皆さんの前で氷岩部長が食べ方を教える」と話すと、「私の言う通りやってみたまえ」と食べ方を説明し、やって見るよう促した。

 説明通りに食べると、ネギの芯の部分が喉に引っかかり、「熱い」とのたうち回る。ここで富井副部長が大きな声で「熱い、熱い、熱いよお母ちゃん」などと叫んで苦しむ。一同の注意は富井副部長に向けられ、氷岩部長が苦しむ様子から、完全に注意がそれたのだ。

 氷岩部長は「君のおかげで私の醜態が目立たなくて済んだ」「本当に軽佻浮薄な人間に、とっさにあんなことができるわけがない。すまなかった」と謝罪。人事異動の話は全て消え、丸く収まった(26巻)

 発端は富井副部長の失態であり、アイディアも山岡だったものの、富井副部長が文化部を救ったことは、間違いないだろう。

妻へ愛情弁当を作る

 倹約のため昼食を弁当にすることにした山岡夫妻。この構想を聞いた三谷と荒川も賛同し、お弁当同盟を結成する。話を聞きつけた富井副部長も「奥さんが外出する日は別として、私が毎日弁当を作っておいてあげるんだ」「外出や出前が続いたら身体によくないからね」と乗り気。

 そして「自分だけ弁当を作って食べるのは管理職として問題があるから止めた」「でも君たちが弁当を持ってくるなら、私も弁当を持ってこられるってわけだ。私もお弁当同盟に入るぞ」と宣言。続けて「ありがたい。これでうちの奥さんと一緒の弁当が食べられる。夫婦の絆が強くなる。愛は全てに勝つ」と大喜びした。

 翌日富井副部長が作ってきた弁当は奥さんと一緒のもので、栗田が「すごいわー。こんなお弁当を作ってもらえるなんて、とても幸せな奥様だわ」と絶賛するほど。そして「今ちょうど奥さんも弁当の蓋を開いたところだよ」「家と会社、離れていても二人の心は一つさ。僕は幸せだなあ」と喜びの表情を浮かべる。

 富井副部長はお弁当同盟がかなり気にいったようで、「お弁当同盟バンザイ。うちの奥さんの愛情を感じながら食べる昼ごはん。ああ、幸せ」とご満悦だった。

 結局お弁当同盟は社員食堂の利用者減少に危機感を募らせた相川料理長が、山岡や栗田のアドバイスを受け弁当作りに着手したため、「当分お休み」に。富井副部長は「奥さんと愛情を通わせるお弁当の時間がなくなるなんて、悲しい」と落胆する。

 それを見た山岡は「お弁当同盟止めてよかったな」と笑い、三谷と荒川も「副部長の気持ちの悪いおのろけから開放されるもんね」と同調した(49巻)

 奥さんのために毎日弁当を作り、一緒の弁当を食べることに幸せを感じる。少々「気持ちの悪いおのろけ」のような気もするが、富井副部長が強く妻を愛している様子を窺い知れるエピソードだった。

富井副部長のいいところも見直そう

 『美味しんぼ』屈指のトラブルメーカーといわれる富井副部長だが、随所に良い部分も見せているのだ。漫画を読み返してみると、そんな富井副部長のイメージとはかけ離れた意外な一面を見ることができるかもしれない。

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