『SLAM DUNK』映画化で「最後の1分間」は描かれるのか? 連載終了から25年、進化したアニメへの期待
原作を既読の方は当然ご存じだろうが、単行本の31巻(ジャンプ・コミックス版)、湘北高校と山王工業の試合ラスト1分の描写は圧巻である(なんと単行本ほぼ1冊ぶんのページ数が、この「最後の1分間」の描写に費やされている)。特に、残り12秒を切った段階からは、セリフ、モノローグ、ナレーションは一切排除され、選手たちの動きと観客の表情の描写だけで物語は進んでいく。これは、言葉に頼らない究極のスポーツ漫画の表現だともいえるし、逆に、最後の最後で桜木がぽつりとつぶやく「左手はそえるだけ…」というセリフを最大限に活かすための演出だともいえよう。
いずれにせよ、新しい映画(劇場版としては5作目となる)が公開された暁には、ふたたび『SLAM DUNK』の(いま以上の)ブームが訪れるのは間違いないだろう。
できることなら、(前述の「左手はそえるだけ…」の名場面もさることながら)単行本の30巻――味方のボールを生かすために危険を顧みず、プレス席に飛び込んでいく赤い髪の元不良少年の勇姿を見て、妹・晴子の「初心者だけど… いつかバスケ部の…… 救世主になれる人かも知れないよ」という言葉をキャプテンの赤木が思い出す、あの泣ける場面を映画館のでかいスクリーンで観てみたいものである。
■島田一志
1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。Twitter。
■書籍情報
『SLAM DUNK(1)』
井上雄彦 著
定価:本体390円+税
出版社:集英社
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