鈴木絢音の“王道なアイドルではない”魅力とは? 1st写真集『光の角度』で示した普遍性

 乃木坂46鈴木絢音の1st写真集『光の角度』が11月10日に発売された。南国にあるタヒチ島とモーレア島の二つの島で撮られた本作は、自身を“王道なアイドルではない”と語る鈴木絢音らしい姿が率直に写った写真集となっている。

 カメラマンは鈴木絢音自身の希望により新津保建秀が担当。ところどころに風景写真や白黒写真が挟まれており、今まで発売されてきた乃木坂46メンバーの写真集とはガラリと変わった目新しい雰囲気があるので、アイドルの写真集を多く見続けてきた人からすると驚く構成かもしれない。それだけに鈴木絢音が寄せた「この写真集はたった1人でも大事に大切に思ってくださる方がいることで、評価以上の価値が生まれるような気がします」のコメントが活きている気がする。アイドルの写真集と聞いて思い浮かぶイメージとは少し違うかもしれないが、細く長く、誰かの心のなかに生き続けるような写真集になっていると感じられるのだ。

鈴木絢音が見た景色と過ごした時間

 まず、どこにも鈴木絢音が写っていない風景のカットから写真集が始まる。鈴木絢音の姿を一枚でも多く見たい気持ちを考えると、風景写真は無駄なカットのようにも感じるかもしれないが、ここで五感をフルに働かせてみてほしい。これらの風景は鈴木絢音自身が見て感じた景色であり、存在した場所なのだ。太陽の匂い、水が流れる音、広大な風。日本とは違うこの地の空気を、鈴木絢音はどう感じたのだろうか。グループから離れ、静かに旅をする心地良さにリラックスしていたかもしれないし、読書が好きな彼女だからこそ、何かの小説の一節と重ね合わせて、言葉を当てはめていたかもしれない。今すぐタヒチ島に行くことはできないけれど、鈴木絢音が辿った風景を五感を働かせて感じることはできるし、これこそ写真が伝えてくれる色褪せないメッセージだと思う。

 ベッドでくつろいでいたり、部屋で着替えていたり。もちろん南国らしい海の風景や水着姿のカットもあるけれど、静かな部屋のなかで撮られたカットが多いのも印象的だ。また、日常的にかけているという眼鏡姿のカットも多い。アイドルとして活動しているときは眼鏡をかけていないからこそ、眼鏡のカットの多さは、アイドルではなく鈴木絢音という一人の人間として写ってくれていることを意味していると読めるし、秋田で生まれ育った一人の文学少女の繊細な個性に触れられた気がして嬉しくなる。いい意味でアイドルとしての影がないから、乃木坂46という枠に囚われない彼女自身の華が惜しみなく写っていて、紛れもない鈴木絢音の写真集だと言い切れてしまう。

一人旅の様子を覗き見しているような距離感

 覗き見しているような瞬間が多いことも、この写真集の特徴と言えるだろう。カメラに向かって可愛くポーズを決めたり、カメラに近い距離で触れられそうな演出を見せたりすることはアイドル写真集の醍醐味だが、勝手に鈴木絢音の一人旅の様子を覗き見しているような絶妙に一歩引いた距離感があるのが面白い。撮られていることなど知らないような自然な表情で、静かな動作がしっかり写っている。ときに視線に気づいて目が合うかのようにカメラ目線のカットもあるのだけど、旅の気分の高揚感からか、心を許してくれているんじゃないかと考えてしまう。

 付かず離れずの距離感のなか、後半、ピンクのワンピースを着たシーンのあたりから、より鈴木絢音の心に近いたような気持ちになる。お酒に酔った表情は今まで見たことがないほどに解れていて、彼女の透き通った笑い声と店内の騒音が無意識的に脳内に響く。旅は思いがけない発見がたくさん潜んでいる。夢のような覗き見。そんな写真集もあっていい。

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