林遣都が魅せるソリッドな素顔 光の反射と空気感に満ちた作品集『THREE TALES』

 筆者も編集者やインタビュアーの立場で、俳優の写真集に携わることがあるが、特に俳優にとって2冊目以降の写真集である場合、本人も含めてコンセプトを話し合うと、たいていは「ドラマや映画ではやっていないことをやろう」という方向性になる。それでアーティスティックなかっこいい本を目指すのだが、やはりイケメンと呼ばれている人なら、ファンに喜んでもらうためにも顔のアップやカメラ目線ばっちりのベタなショットは入れたい。そこでコンセプトが少しぶれてしまいがちだ。その点、『THREE TALES』はかなりアーティスティックな方向に振り切っている。それは気鋭のクリエイターである林響太朗と組んだからだろうし、30歳という節目に俳優自身が「行きたいところ」を示したかったからではないか。

 この本の中では、涙は一滴も見せない。笑顔もほんの少しだけ。エモーショナルな演技で心を揺さぶる林遣都もいいけれど、この“作品集”のような彼も映像作品で見てみたい。ソリッドでクールで孤独な、しかし人間らしい。そんな物語の続きを待ちたいと思った。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■書籍情報
『林遣都 作品集 THREE TALES』
発行:SDP
著者:林遣都
撮影:林響太朗
発売日:2020年12月6日
価格:2,500円+税
http://www.stardustpictures.co.jp/book/2020/threetales.html

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