『僕のヒーローアカデミア』爆豪はなぜヴィランにならなかったのか? デクとの関係から考察
変わるデクと爆豪の関係
ヴィラン連合にさらわれ、そこから助け出される過程でオールマイトがヒーローとしての力を完全になくしてしまったことは、爆豪にとって初めての挫折とも言える経験だった。
そんな挫折を経験した爆豪が避けて通れなかったのは、デクとの対峙だった。デクは仲間や友達、自分の目に留まる人のことを放っておけない性格だ。それはもちろん爆豪に対しても。むしろ昔から知っている幼なじみだからこそ、デクの想いは大きかっただろう。デクの個性はオールマイトから受け継いだものであるという秘密も、爆豪にだけは知られることになる。
オールマイトの力を受け継いだデクと、オールマイトを終わらせてしまった爆豪。同じヒーローに憧れた2人が直面する現実はあまりに辛いものだった。しかし、そこでデクを憎むわけではなく、「戦えや。ここで、今」と言うところに、爆轟の“ヒーローの素質”を感じる。卑怯な手は一切なしで、真正面から2人は闘うことになる。そもそも、中学時代の爆豪なら自尊心からそんな言葉をデクに言えなかったはずだ。
デクも爆豪もまだ少年で成長の過程だ。弱さを知っていたデク。強さを信じ、弱さを認めたくなかった爆豪。違う弱さを抱えた2人は、ヒーローになるためにこれからも切磋琢磨していく。
(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))
■書籍情報
『僕のヒーローアカデミア』(ジャンプコミックス)既刊28巻
著者:堀越耕平
出版社:集英社
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