『NARUTO』にも影響を与えた漫画『忍空』の深い魅力とは? 連載中断を乗り越えた、根強い人気を考察

 『DRAGON BALL』、『幽☆遊☆白書』、『SLAM DUNK』が国民的ヒットを博した1990年代前半の週刊少年ジャンプ。その陰で根強い人気があった漫画がある。

 累計発行部数、1億5000万部を超える2000年代の大ヒットマンガ『NARUTO』の岸本斉史は「忍空の続きが読みたくて(『NARUTO』を)始めた」と語る『忍空』だ。

 連載中断を経験しつつも、完結までたどり着いたのはなぜか。忍空の持つ魅力に迫る。

戦争終結後の世界で起きた「忍空」を巡る争い

 漫画版『忍空』は大きく分けて3つのフェーズがある。忍空狼編、干支忍編、ウルトラジャンプによる干支忍編の3つだ。

 ファーストステージと呼ばれる忍空狼編は、EDO歴3年、忍空と呼ばれる武術を駆使する者たちの活躍により、戦乱が終わった後の世界が舞台だ。主人公の風助も元・忍空組。隣の家のおばあちゃんのために薬を買いに行く途中で、忍空組の残党「忍空狼」が悪事を働いているのを目撃する。風助は忍空を不殺の武術とする師の教えを心に刻み、かつて最強と呼ばれた干支忍を集め、忍空狼の悪事を止めようと奔走する。

『忍空―SECOND STAGE 干支忍編― 1』

 セカンドステージと呼ばれる干支忍編は、戦乱で両親を亡くした風助がファーストステージでも共闘した橙次と出会い、忍空を学び、忍空が戦乱で「不殺」を捨てるに至るまでを描く。ウルトラジャンプによるSECONDSTAGE、干支忍編でも同様に、干支忍たちの出会いや、未登場の干支忍が集結した。

 セカンドステージは1995年に週刊少年ジャンプで連載が中断したものの、2005年に再始動している。(その際にSECOND STAGEと英語表記になった)2011年に完結しており、18年の時を経て、忍空と風助をめぐる物語は終わりを迎えた。

 題材は「戦争」や「かつての仲間との戦い」という重さがあるのだが、要所に挟まれる下ネタや、キャラ同士の肩の力が抜けた掛け合い、マスコットキャラクターであるペンギンのヒロユキといった明るさで、子ども受けしやすいギャグテイストとなっている。漫画版に比べ、アニメ版はよりその傾向が顕著だ。

 『忍空』は、アニメ版と漫画版でストーリーやキャラの登場が違う。原作版『忍空』は前述したとおり、かつての仲間の蛮行を止めるストーリーだ。アニメ版では、忍空と敵対していた帝国府が戦後を収めている。帝国府は忍空の力を恐れ、殲滅しようとしている。風助は幼いときに連れ去られた母を探す旅をしており、橙次や藍眺といった干支忍たちも共にする。

 原作では忍空狼と戦う仲間だった黄純が敵として出てきたり、ヒロインの里穂子が旅を共にする(原作では帰りを待っている)など違う点が多い。また、敵の帝国府の面々はアニメオリジナルである。

 55話という長期アニメだったことや、原作のたび重なる休止から、原作との乖離が大きいが、1990年代~2000年代のジャンプアニメでは良くあったことだ。

 『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』や『シャーマンキング』など、原作のストーリー展開が決まっていない時期にアニメ化が決まった作品は、概要やキャラ設定を利用することもしばしばある。

 2000年代の『テニスの王子様』は、たびたび原作に追いつきそうになり、アニメオリジナルを入れることがよくあった。

 『忍空』の監督である阿部記之監督は、インタビューで以下のように語っている。

原作のテイストはそのまま使いました。ただ連載がまだあまり進んでなかったこともあり、「旅をする風助」など要素は限られていました。

僕が話をいただいた時には「最初から作りましょう」と。製作のフジテレビと読売広告社の方からは「戦後すぐの世界」「敵側である官軍を作って物語を進める」「敵との再決戦となるような話にする」とお題をいただきました。

引用:https://s.animeanime.jp/article/2015/06/26/23870_2.html?amp=paging

 原作版とアニメ版、どちらも違ったストーリーで風助の旅を味わえるのは、昨今ではなかなかない。

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