『ハイキュー!!』及川と影山はライバルを越えた関係へ ふたりの終わらない戦い

影山の「怖いモン」はなくなったのか

 インターハイでの敗退後、日向が「自分の意思でスパイクが打てるようになりたい」と言い出す。影山は「お前の意思は必要ない」ときっぱり言い切るが日向との衝突で迷いが生じ、そこで影山が相談を持ちかけたのは及川だった。及川は「嫌だね! バーカバーカ!」と小学生並みのリアクションを取りつつも、冷静に真実をつきつける。

「勘違いするな 攻撃の主導権を握っているのはお前じゃなくチビちゃんだ」
「それを理解できないならお前は独裁の王様に逆戻りだね」

 これが変人速攻の飛躍につながるわけだが、それ以後、影山が及川に相談を持ち掛けることはない。ライバルチームの主将なわけだから当然のことかもしれないが、精神面で及川から卒業していったことを表しているのではないだろうか。

 影山の土台の一部を作ったのは間違いなく及川だ。だが、より強い相手と戦うことで身につけていく自信、そして自分の実力だけではなくチームとしても強くなり、また進化を遂げる。進化を続けるうち、いつしか影山にとって及川は「怖いモン」から「もっと戦いたい相手」となったのではないだろうか。

 及川のバレーボール人生においても影山は「凹ましたい相手」であり、重要な存在だ。「凹ましたい」というのは、憎いというわけではない。“俺が”凹ましてやるから強くいろよ、という本音も垣間見える。

 春高予選から何度戦いを重ねたのだろうか、2人はオリンピックという最高の舞台で再び同じコートに立つ。及川が影山を直接讃える日は来るのだろうか。影山にとっては、日向と同じだけ、いやそれ以上に長く戦い続けなければならない相手……それが及川なのかもしれない。

(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))

■書籍情報
『ハイキュー!!』(ジャンプ・コミックス)既刊44巻
著者:古舘春一
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/haikyu.html

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