『アオアシ』にサッカーファンが熱狂する理由とは? どこまでも“リアル”な作風に迫る
本作品の主人公は葦人であるが、彼と同等に濃く描かれるのが監督である福田達也だ。自らが率いるチームで世界を相手に勝つことを目標としており、そのためには育成が大事だと考えている。圧倒的なカリスマ性によって選手から尊敬を集める彼の指導は示唆に富み、柔軟だ。全てを語りすぎず、時には行き過ぎる葦人を引き止める。彼の指導の中でも一際目をひくのはティーチングとコーチングの使い分けだ。
ティーチングとは選手に答えを教えて導くこと、コーチングとは選手に答えを考えさせて導くことだと作中で福田は語る。全てを教えるだけでは選手は育たないという考えのもとで選手たちは能力を伸ばしていく。
このような指導者側の描かれ方も今までのサッカー漫画とは異なり、注目を集める要因になっている。今までには描かれなかったサッカーの側面がこれだけ描かれているのは、原案協力にスポーツライターの飯塚健司氏が参加していることも理由に挙げられるだろう。
サッカー日本代表の活躍、海外リーグでの日本人選手の躍動、『GIANT KILLING』に代表される現代サッカー漫画のヒット、これらによって読者のリテラシーが向上しているからこそ描ける部分を濃密に描いているのが『アオアシ』だ。作者がサッカーに詳しい読者を信じてくれているからこそ、読者も心からのめり込める。もしもあなたがサッカーへの一家言を持っているのなら、一度は本作品に触れて欲しい。
■嵯峨駿介
23歳でBass Shop Geek IN Boxを立ち上げ。楽器関連の他にグルメ、家電など幅広い分野でライターとして活躍中。Twitter:@SAxGA
■書籍情報
『アオアシ』(ビッグコミックス)※22巻が10月30日に発売
著者:小林有吾
出版社:小学館
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