『ドカベン』は野球界における“予言の書”か? 漫画のプレイが現実になった瞬間

高校生で160キロ

 『大甲子園』で、青田高校の中西球道が山田太郎に対し、163キロのボールを投げ込んだ。(『大甲子園』23巻)なお山田はこの球をライトラッキーゾーンにホームランしている。当時高校生で160キロを投げる投手は「ありえない」と思われていた。

 ところが2012年、花巻東高校の大谷翔平投手が夢の160キロを投げ、「160キロを投げる高校球児」が現実になる。さらに2019年には、大船渡高校の佐々木郎希投手が、紅白戦ながら中西球道にならぶ163キロを記録。県大会でも、160キロを投げている。漫画に時代が追いついたのだ。

1番ピッチャーで先頭打者ホームラン

 『大甲子園』の明訓高校対青田高校戦。前日の試合が延長18回引き分け再試合になったことから、エースの里中智に代わり岩鬼正美が1番ピッチャーで出場する。

 悪球しか打てない岩鬼は、捕手のミットを見て、その位置にバットを合わせるよう画策。するとミットを見すぎていたため、顔めがけてボールが来ることになり、咄嗟にバットを出す。コツンと当たっただけだったが、打球はレフトスタンドめがけて飛んでいき、プレイボールホームランとなった。(『大甲子園』23巻)

 「1番ピッチャーが先頭打者ホームラン」はそもそもピッチャーが1番に入ることが珍しく、再現不可能と思われていたが、これを実現させたのが北海道日本ハムファイターズの大谷翔平選手だ。

 2016年7月3日の福岡ソフトバンクホークス対北海道日本ハムファイターズ戦で1番ピッチャーに起用された大谷選手は、初球をライトスタンドに叩き込むホームラン。これは長いプロ野球の歴史でも史上初の出来事だった。そして、このホームランのあと「これまで1番ピッチャーで先頭打者ホームランを打ったのは岩鬼だけ」とメディアに取り上げられることに。

 大谷選手は「投手で160キロ」に続き、「漫画の話」を現実にしてみせた。岩鬼が避けたバットに当たったホームランだったのに対し、大谷選手はしっかり振り抜いてのホームラン。漫画を凌駕したと感じた人も多かった。

次々に現実となる水島ワールド

 連載されていた頃、「現実には起こり得ないだろう」とされたことが、次々と現実になっている『ドカベン』と『大甲子園』。水島氏の先見の明には、驚くばかりだ。

■書籍情報
『ドカベン』既刊48巻
水島新司 著
出版社:秋田書店

『大甲子園』既刊17巻
水島新司 著
出版社:秋田書店

関連記事