『鬼滅の刃』不死川玄弥、壮絶な戦いの果てに兄に伝えたメッセージ 不器用な少年の成長物語
不器用な少年が伝えたかったこと
とまあ、そういうわけで、本作はある意味では不死川玄弥という不器用な少年の成長を描いた物語でもあるのだが、本編のクライマックスのひとつといっていい「無限城」での戦いにおいて、ほかの剣士たち同様、彼もまた漢(おとこ)を見せる。
勝負を挑む相手は、黒死牟。「上弦の壱」であるこの鬼は、ラスボスである無惨を除けば最強の敵だといっていい。この難敵中の難敵に、鬼殺隊は玄弥のほか、「霞柱」の時透無一郎、「岩柱」の悲鳴嶼行冥、そして彼の兄――「風柱」の不死川実弥の4人で立ち向かっていく――。
この戦いの結末を、ここで書くつもりはない。だが、壮絶な死闘の果てに、玄弥の想いはじゅうぶん兄に伝わった、ということだけは書いておこう。そう、鬼を倒すために鬼を喰うしかなかった不器用な少年は、最後の最後で、大好きな「兄ちゃん」に「ありがとう」のひと言がいえたのだ。
「一番弱い人が 一番可能性を持ってるんだよ」。これは、かつて炭治郎が自らの経験をもとに玄弥にいった言葉だが、それを信じて3人の柱とともに奮闘した彼の熱き生き様は、間違いなく、鬼殺隊が平和な「未来」を切り開くための原動力のひとつになったといっていいだろう。
■島田一志
1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。@kazzshi69
■書籍情報
『鬼滅の刃(13)』
吾峠呼世晴 著
価格:本体440円+税
出版社:集英社
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