田中みな実、写真集『Sincerely yours…』が女性に支持された理由 “自分が好きな自分”でいることの美しさ

 昨年12月に発売された田中みな実の1st写真集『Sincerely yours…』(宝島社)は、とにかく強い情熱を感じる、生命力を帯びた写真集だ。かつては「嫌いな女性アナウンサーランキング」の常連だったにも関わらず、写真集は発売から1カ月で発行部数60万部を突破し、購買層の8割が女性であるという異例のヒットを見せている。肌を大胆に見せた写真が多いにも関わらず、同性の心を動かし続けているのは、美に対するストイックな姿勢と人間味溢れるナチュラルな生き方が、その姿に表れているからだろう。

本気が写る、素肌と体

 30代にして初めて出す写真集。中途半端なものにはしたくない、という完璧主義がゆえの強い意志が全ページに溢れていて、どのカットをとってもこだわり抜かれた瞬間であると感じられる。撮られたままの素肌は、まるでその場の温度感までもが伝わるほどに生々しく、笑ったときに口の両側にできるシワは、これまでの彼女の人生の軌跡を表すかのように美しく刻まれている。

 スッピンをそのまま披露しているのも凄い。自然な色合いの唇、いまにも閉じてしまいそうな瞼。完全無防備な寝起き姿は美しくも親近感があり、彼女もまた私たちと同じように日々あらゆる営みをこなし、眠りに就き、新しい朝を迎えているのだと実感できる。今や多くの女性が美容法を真似たがるほど憧れの存在となっている彼女だが、美を誇示するというより、むしろ「自分が好きな自分でいることが、美しさだよ」と言っているような気がする。自他への優しさがあるからこそ、見ていて笑顔になれるし、共感する女性が後をたたないのだろう。

 さらに本気を感じるのが、ほぼセミヌードとも言っても良いほどの脱ぎっぷりだ。触れたくなるような肉感を残しつつ引き締められた体は、どの角度から見ても美しく、健康的な色気を醸し出している。シャツを着たままプールに入るシーンでは、濡れたシャツがぴったりと体に張り付き、西日が照らす中でしなやかなボディラインを浮かび上がらせる。このシーンのラストでは、シャツを脱ぎ捨て、白い紐パンツ一枚になり、華奢ながらも凛とした背中を見せる。その姿は、小さな体には収まりきらないほど生命の炎が燃えたぎっているようで、非常に情熱的だ。写真集では魅力的な瞬間がたくさん切り取られているが、筆者はこのシーンにこそ揺るがない本気を感じた。ここから彼女の人生を動かす音が聞こえてくるような気さえしたほどだ。

未完成の笑顔と全力の挑戦による美しさ

 撮影地のスペイン・バルセロナには、未完成建築として有名なサクラダファミリアがある。まだ完成していないにも関わらず、世界文化遺産に登録されている稀有な存在だ。写真集内のインタビューでは、自身を完璧主義だと言いながらも、バルセロナの景色を前に「未完成の魅力」を初めて感じたと語っている。生きている以上、全ての人が未完成だ。できることは、限られた時間の中でどれだけ全力を出せるか。それは田中みな実という一人の女性の生き方として、写真集に収められた数々の姿が象徴していることだとも思う。

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