鞘師里保、13歳の写真集『さやしりほ』に見る原石の輝きーー元 モーニング娘。絶対的エースの少女時代を振り返る

 これまで数多くの「ハロー!プロジェクト」(以下ハロプロ)の写真集を出版してきたワニブックスより、今年4月からハロプロメンバーの既存写真集の電子版が続々とリリースされている。

小田さくら『さくらのきせつ』

 第1弾はモーニング娘。’20の小田さくらの新刊写真集『SAKURA COLOR』の発売に合わせて、これまでに刊行していた写真集『さくら模様』、『Sakura Breeze』、『さくらのきせつ』の3タイトルが電子版でリリースされた。それを皮切りに、コロナ禍で卒業公演が延期となったJuice=Juiceの宮本佳林『佳林』や、アンジュルムの船木結の1st写真集『結 MUSUBU』などの過去作品が電子化された。

 ライブイベントの開催が難しい現在、ファンが自宅で楽しめるコンテンツとして電子書籍はニーズがあり、またアイドル運営側としても、興行収入が見込めない現状において、過去の財産は重要なコンテンツとなっている。

鞘師里保がモーニング娘。に与えた影響

 そこで今回は、数あるハロプロの写真集の中でもベストにあげる人が多い、2011年8月27日に出版された鞘師里保(以下、鞘師)の1stソロ写真集『さやしりほ』に注目したい。

 鞘師はモーニング娘。9期生で、2011年から2015年にかけて新世代エースとしてグループを牽引し、17歳の若さで卒業した救世主だった。

 ももいろクローバーが"ももいろクローバーZ"に改名し、AKB48が「ヘビーローテーション」をリリースした、アイドル戦国時代真っ只中の2011年に、2006年の光井愛佳加入以来4年ぶりとなる新メンバーとして9期4人が加入した。

 その中でも鞘師の登場が革新的だったのは、これまでのモーニング娘。は成長過程を楽しむのが一つの醍醐味だったが、鞘師はPerfumeなどを輩出した名門「アクターズスクール広島」ですでにダンスを学んでいたことだ。加入当初からリーダーの高橋愛や新垣里沙に最初から張り合える圧巻のダンスを披露し、パフォーマンス面で即戦力となった。

 現在に続くEDM路線になったのも、鞘師のキレのあるダンスがあってこそだと言えるだろう。2012年、田中れいなとWセンターを務め、EDMサウンドとフォーメーションダンスを取り入れて新機軸を打ち出した、通算で50枚目のシングル曲「One・Two・Three」は大ヒットを記録し、10人体制となった新生モーニング娘。を人々に強く印象付けた。

 鞘師の加入により、世代交代と新たな路線を確立し、"パフォーマンスが優れたアイドルグループ"としてモー娘。は再ブレイクを果たした。そして、9期以降のメンバーのパフォーマンスが向上したのを見届け、「自分の中で満足できる5年間だった。私のできることはやったと言い切りたい」(『モーニング娘。'15 鞘師里保卒業記念ムービー「君がいてくれて、よかった。」 Special ver.』より)と、17歳で電撃卒業する。

 そんな鞘師が2011年、13歳の時に出版した1stソロ写真集が『さやしりほ』だ。セーラー服のスカートを翻した躍動感のあるポージングと、明るい笑顔が印象的な表紙。ページをめくると、ごく普通の中学生の女の子とプロのエンタテイナーとしての顔が混在した、大人と子供の境界線を感じさせる表情にまず心を奪われる。

 沖縄の明るい日差しの中、水色の制服が眩しい。鞘師は街中を走ったり、自転車に乗ったりと無邪気な姿を見せる。純真ではつらつとしているだけでなく、大人への成長過程にしか出せない魅力があふれている。東京パートでは、大好きだった幼馴染と再会するような嬉しさを感じさせるとともに、その視線には女性としての色香も芽吹きつつある。笑顔のカットが続く中、ふと傘をさして無表情でこちらを見る一枚には、しばらく会わないうちに自分の知らない彼女がそこにいたかのような、甘くほろ苦い感傷を思い起こさせる。

 鞘師はステージに立つと、年齢を感じさせないクールなダンスを見せるが、普段はおっとりしていて、自然体の姿との間にはギャップもある。そこが大きな魅力にもなっている彼女の、普段着の眩しい輝きの原点が、この一冊に閉じ込められている。モーニング娘。の歴史を振り返る上でも、『さやしりほ』はチェックしておきたい一冊といえるだろう。

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