すべての生命はデジタル情報で制御されている? いのちの秘密を探る“デジオーム”とは
わかっていないということは、これは一種のミステリーだ。だからこそ、その解明の筋道はドラマティックである。本書は、その解説対象をさらに深め、マイクロRNAや新種のRNAの発見、生成されるタンパクの新たな捉え方、その代謝物(メタボローム)、それらを統合的に解釈する「マルチオミックス解析」にまで触れていく。
こうした知見は最先端ではあるが、まだ結論には達してなく、中間報告でもある。
本書の末尾も、
というわけで、この本は途中打ち切りの連載漫画よろしく、こんな言葉で終わるしかない。「俺たちの戦いはまだ始まったばかりだ」(P217)
という言葉で締められる。
冒険譚は、たどり着いた場所の景色よりも、探検の過程を詳細に語ってくれたほうが面白い。だからこそ本書は門外漢ほど楽しめる読書体験となるのではないだろうか。
■出洲待央
ライター、編集者。雑誌、書籍、WEBなど媒体を問わず、様々な記事制作やインタビューなどに関わる。
■書籍情報
『生命はデジタルでできているー情報から見た新しい生命像ー』
田口善弘 著
価格:本体1,000円+税
出版社:講談社ブルーバックス
公式サイト