ペットと過ごす最期の時間、あなたは仕事を休んでも良いーーカレー沢薫が伝える、大切な家族との別れ方

 ペットの体調が悪かったり、最期が近いときに仕事を休みづらいというのはペットを飼う上で切り離せない社会問題でもある。最終的に休むか休まないかは本人が決めることだが、大切な家族を失くした気持ちに向き合う時間も必要であると、私は思う。第13戒『きみの大事さが伝わらないのは悲しいことです』でも、ペットを失くした悲しみを理解してもらえなかった男性の苦しみが描かれる。

〈猫が亡くなった日会社を休もうとしたら 猫が死んだくらいで何言ってんだって怒鳴られたんだ〉

〈僕が泣いても たかが猫のことで 男のくせにって 笑われたり責められたりするだけだった〉

〈僕は猫を亡くしたのが辛かったんじゃなくてその悲しみを軽視されたのが 猫までバカにされたみたいで辛かったんだ〉

 自分の大切な家族を他人が家族とみなしてくれない悲しさ。違う種類の悲しみを一度に背負わされた飼い主の心情を思うと、ぶつけようのない怒りがこみ上げてくる。「ペットが亡くなったくらいで仕事を休むなんて」という発言が立派なハラスメントになるという認識が、ひとりでも多くの人に広まってほしいと心から願う。

 では、そもそも飼わなければよかったのかというと、決してそうではない。第1戒で飼い犬を失くした女性が、最終戒にてお迎えしたペットショップを訪れる。

〈去年…ここで買った犬死んじゃって…〉

〈しばらくマジ凹みしてたんだけど 思い返してもやっぱ犬のいる人生最高だったし〉

〈だからもっかい最高になりにきたわ! ついでに犬も最高にすっから良い犬紹介オナシャス!〉

 ペットと過ごす毎日はかけがえのないものだ。思い返してみて楽しかった、と飼い主が感じてくれたなら先に虹の橋を渡っていったペットたちもきっと本望だろう。だから、飼わなければよかったなんて思わないでほしい。〈マジ凹み〉するくらい大切に思っていたあなたの気持ちは、きっと彼らにも伝わっている。

■ふじこ
10年近く営業事務として働いた会社をつい最近退職。仕事を探しながらライター業を細々と始める。小説、ノンフィクション、サブカル本を中心に月に十数冊の本を読む。お笑いと映画も好き。Twitter:@245pro

■書籍情報
『きみにかわれるまえに』(ニチブンコミックス)
著者:カレー沢薫
出版社:日本文芸社
価格:本体740円+税
https://www.nihonbungeisha.co.jp/book/b510269.html

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