エルミーン「僕にとってのロジャーはマイケル」 Fujii Kazeが開いた扉、『ONE PIECE』から学んだ“継承”という意識

 イギリス出身のシンガーソングライター エルミーン。2021年、シングル「Golden」がルイ・ヴィトンのショーに起用されたことで注目を集め、その後もシングルやEPを精力的にリリース。2024年にはスティーヴィー・ワンダーのサポートアクトを務め、翌年にはイギリスの音楽賞『ブリット・アワード』のライジングスター部門にノミネートされるなど、R&B/ソウルシーンの新星として世界的な注目を集めている。そして日本においては、Fujii Kaze(藤井 風)とのコラボ曲「Comets + Gold」が大きな話題となったことは記憶に新しいだろう。

 リアルサウンドでは、日本初ステージとなる『SUMMER SONIC 2026』出演のため来日していたエルミーンに、インタビューを行う貴重な機会を得た。日本のマンガやアニメに大きな影響を受けていることを随所で語っているエルミーン。実際に訪れた日本は彼にどう映っているのか、Fujii Kazeとのコラボ曲の反響やお気に入りのアニメソング、楽曲制作のモチベーションまで、終始明るく朗らかに語ってくれた。(伊藤聡志)

「こんなの聴いたことない、なんだこれは!」――日本のアニソンから受けた衝撃

――エルミーンさんは『ONE PIECE』(集英社/フジテレビ系)をはじめ、日本のマンガやアニメがお好きですよね。やはり日本は特別な場所ですか?

エルミーン:まず確信しているのは、自分の思考回路や音楽との向き合い方において、『ONE PIECE』の影響がすごく大きいということです。世界の捉え方そのものが、『ONE PIECE』を土台にできています(笑)。自分にとっては、ミュージシャンになって音楽を作り始めた頃が“イーストブルー”で、アメリカでの活動が“グランドライン”。そして、その先にはさらに“新世界”が広がっている……そんなイメージなんです。僕はもともと音楽一家に育ったわけではないので、まったく未知の新たな世界に飛び込むことになりました。この特殊な世界を自分なりに理解し、消化していく過程で、『ONE PIECE』の世界観に重ね合わせて考えることで、自然に受け入れられたんです。

――ミュージシャンとして活動するなかで、麦わらの一味のように仲間もどんどん増えていきましたか?

エルミーン:もちろん増えました。(ロロノア・)ゾロもサンジも白ひげも、自分の味方になってくれる海賊のみんながいます。ちなみに僕にとっての(ゴール・D・)ロジャーは、マイケル・ジャクソンですね(笑)。

――とてもわかりやすい喩えですね(笑)。今回の来日で、特に気に入った場所はありましたか?

エルミーン:実は、今年に入ってからもう3回来ているんですよ。とにかく日本が大好きなんです。東京はやることが無限にある街なので、自転車で毎回違うエリアを探検しています。今回は中野ブロードウェイに行って、デジヴァイス(『デジタルモンスター』シリーズに登場するアイテムを模した玩具)を見つけました。

――何度も来日するなかで、日本のイメージはどう変化していますか?

エルミーン:まず、ずっとイメージしていた場所に実際に足を運んで、そこでいろいろな人と会って、自分がそのなかの一部として存在しているということが嬉しくて仕方がなかったです。東京では、散歩したり、寝たり、まるで普通に暮らしているように過ごすだけで楽しかったです。以前来日したときには新幹線で広島へ行きましたが、東京とはまた全然違う魅力がありました。次は北海道や仙台にも行ってみたいですし、もっと日本のいろいろな側面を見て、あらゆる魅力を味わって、もう一生通い続けられるくらい日本を好きでいたいと思っています。

――エルミーンさんが好きな日本のアニメソングはなんですか?

エルミーン:『ONE PIECE』のオープニングテーマの「ココロのちず」(BOYSTYLE)ですね。♪〈大丈夫! さぁ 前に進もう〜〉――子どもの頃にあのアニメのオープニング映像で、カクが街に飛び込んだシーンを観た瞬間に、「人間ってこれだ!」とわかった気がして、今もその時の記憶が刻まれています。

――いわゆるアニソンは、エルミーンさんの音楽とはジャンルが異なるものが多いですが、そのなかでも自分の音楽に対する影響を受けた部分はありますか?

エルミーン:アニソンはメロディがとても良いんですよね。特に、『鋼の錬金術師』(TBS系)のオープニング主題歌「メリッサ」(ポルノグラフィティ)がとにかく大好きなんです。「こんなの聴いたことない、なんだこれは!」と衝撃を受けました。

――アニメやアニソンを通して日本の音楽に触れてきたエルミーンさんですが、今度はご自身が『SUMMER SONIC 2026』で、日本のステージに立つことになります。今はどんなお気持ちですか?(取材は8月中旬)

エルミーン:本当に最高の気分です。この2カ月間ずっとツアーでライブを重ねてきたので、もう準備は万全。自分のやるべきこともわかっているし、それを上手くやれる自信もついています。不安はまったくなくて、あとはもうやるだけですね。

――『SUMMER SONIC 2026』では、エルミーンさんの音楽を初めて聴く人も多いと思います。やはりワンマンとは違う意識がありますか?

エルミーン:意識は違うと思います。セットリストも変えて、できるだけ聴いた人の印象に残る、爪痕を残せる曲を選ぶつもりです。持ち時間が短いと、やはりゆったりした曲をじっくり聴かせるというのは難しいので、普段とはアプローチも変えます。自分の刀をしっかり磨いて研ぎ澄まして、効率よくスパッと切るようなライブをするつもりです。

――まるでゾロのようですね(笑)。『SUMMER SONIC 2026』の出演者で気になるアーティストはいますか?

エルミーン:スティーヴ・レイシーのステージを観るのがとても楽しみです。それから、Adoも気になっています。彼女のことを初めて知って調べてみたら、まるでアニメの世界から出てきたような人ですよね。どんな人なのか、すごく興味があります。何かアニメの主題歌を歌っていたりしますか?

――Adoは映画『ONE PIECE FILM RED』の劇中歌や主題歌を歌っていますね。

エルミーン:ということは、彼女がウタ? わあ! 素晴らしいですね。ぜひ観てみたいと思います!

関連記事