松本潤、26年半の嵐の物語の先で迎えた42歳の誕生日 新境地拓き続ける俳優活動、無二の演出家として歩く道
この一年の松本潤を、どう言い表せばいいのだろう。俳優として、演出家として、そしてアイドルとして、それぞれの場所で全力を尽くし続けたこの365日は、彼のキャリアのなかでも特別な密度を持った時間だったはずだ。8月30日、そんな一年を経た彼が42歳を迎えた。
昨夏、7年ぶりとなる日曜劇場主演を務めた『19番目のカルテ』(TBS系)が放送された。18の専門分野に分けられた日本の医療において、すべての患者を“総合的に”診る総合診療医を演じたこの作品は、松本にとってキャリア30年目にして初の医師役だった。情に流されながらも、鋭い眼差しで患者の本質を見抜く――。その役どころは、どこか松本自身の芝居への姿勢と重なって見えた。
役者としての松本潤を語るうえで欠かせないのが、役を“抜く”という彼独自の美学だ(※1)。作品が終われば、演じた役柄が持つ人物としての思考も動き方も、自分の体のなかから丁寧に整理して外に出す。プライベートには持ち込まない。そうやって自分と役の間あいだにある種の線を引くことで、次の役と自分自身に真摯に向き合うための余白を作り続けてきた。『19番目のカルテ』でキャリア初の医師を演じた時に彼が見せたのは、単なる新しい職業の模倣ではなく、患者の言葉の裏にある孤独や恐怖を丁寧に拾い上げる、ひとりの人間としての誠実さだった。視聴者からも批評家からも「新境地」と称されたのは、決して大げさな評価ではなかった。
そして、迎えた2026年。嵐が動き出した。
今年3月から5カ所15公演をまわるドームツアー『ARASHI LIVE TOUR 2026「WE ARE ARASHI」」をスタートさせた。このツアーは、2020年末、コロナ禍で直接会えないまま活動を休止せざるを得なかったあの時の“約束”と“忘れ物”を、5年越しに回収しに行くための時間でもあった。松本は、そのすべての公演の演出を担った。これまでそうだったように、何も変わらず――。2024年には個人事務所「MJC Inc.」を立ち上げ、新しいステージへの第一歩を踏み出しながら、その裏では嵐の“最後の姿”をどう届けるかを一手に背負っていたのだ。
嵐が活動を終了した5月31日、東京ドーム。ラストライブの最終公演で、5人は30曲以上を3時間かけて歌い上げ、26年半の歴史に幕を下ろした。最後に歌われた新曲「Five」は、5人が5人であることへの静かな、しかしたしかな誇りを宿していた。会場を埋め尽くした観客と、世界中の生配信を映す画面の前に座っていたファンたちが共有したあの夜の空気は、簡単に言葉にできるものではない。ラストライブ直前に「一世一代の大勝負を楽しみたい」(※2)とInstagramに綴っていた松本もまた、演出という重圧を背負いながら、パフォーマーとして、嵐のメンバーとして、そのステージを全力で駆け抜けた。
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並行して今年春に放送された『ちるらん 新撰組鎮魂歌』(TBS系/U-NEXT)では、幕末のカリスマ”とも呼ばれた会津藩主・松平容保を演じ、時代の人物にまた息を吹き込んだ。松平容保という役は、松本が持つ静かな威厳と内側に燃えるものを同時に体現するという強みを最大限に引き出す役どころだった。
個人事務所「MJC Inc.」の企業理念には「エンターテインメントを通じて日本、そして世界をより良い未来へ導く」(※3)という言葉が掲げられている。嵐として過ごした時間のなかで培ったすべてを糧に、俳優として、演出家として、エンターテイナーとして、これまでの型には収まらない動き方で彼は世界を見据えている。その視線の先に何があるのかは、まだ誰にもわからない。しかし、この一年を見ていれば、彼が立つべき場所はどこにでもあるのだということだけは、たしかにわかる。
42歳の誕生日を、松本は嵐という26年半の物語が終わった夏の先で迎えた。嵐としての自分を全力で燃やし尽くしたのちの道に立っている男が、次に何を見せてくれるのか――。それを想像するだけで胸が高鳴る。松本潤の新たな物語は、まだ始まったばかりだ。
※1:https://www.crank-in.net/interview/170803/3
※2:https://www.instagram.com/p/DY7ILuXGIaH/
※3:https://mjc.inc/


























