「中華料理屋の酢豚が食べたい」で注目の琳子とは? 創作の原点、葛藤の日々、そして目指す理想像を語る

 2022年に弾き語りでの活動をスタートし、翌年には“十代才能発掘プロジェクト”の『十代白書2023』で決勝に進出。さらに2024年11月にリリースした「中華料理屋の酢豚が食べたい」がバイラルヒットを記録するなど、注目を集めているシンガーソングライター・琳子。

 キャッチーなフレーズとポップなサウンドの中に、思わずハッとさせられる“斜めの視点”から生まれた独自の言葉選びを落とし込む彼女の楽曲は、一度聴くと耳に残り、クセになる魅力を持っている。

 リアルサウンドでは、そんな琳子にインタビューを実施。楽曲制作で大切にしていることや自身の強みについてはもちろん、音楽を始めた背景、生い立ち、上京後の現在、そして活動を続ける中で抱える葛藤や理想のアーティスト像まで、赤裸々に語ってもらった。(編集部)

ポップな楽曲に潜む“斜めの視点”――琳子が取り繕わずに描く心の機微

――昨年は「中華料理屋の酢豚が食べたい」のSNS総再生回数が8億回を突破したほか、「中華料理屋の酢豚が食べたい (Sped Up Ver.)」が『MUSIC AWARDS JAPAN 2026』の最優秀バイラル楽曲賞のエントリー曲にも選出されるなど、飛躍の1年だったように思います。

琳子:ここまで話題になるとは想像してなくて、昨年4月にMVを公開してから1年間は3000回再生ほどだったんですよ。そこで、どうすれば知ってもらえるんだろうと考えていたら、ふと振り付けが思い浮かんで。家で撮影した「中華料理屋の酢豚が食べたい」のダンス動画に「#踊ってみた」のハッシュタグをつけて投稿したら、思いのほかバーっと広まりました。ただ、こんなに注目されるようになったのは予想外でしたね。

琳子 / 中華料理屋の酢豚が食べたい【Music Video】

――この曲はどのようにして作られたんですか?

琳子:タイトルのまんまなんですけど、ある日ふと「中華料理屋の酢豚が食べたいな」と思って、それを携帯にメモしたんですね。しばらく放置していたんですけど「これを曲にしたら面白いんじゃないかな」と思って、恋愛に絡めて書いたのが制作の経緯でした。

――ひらめきから始まったんですね。

琳子:はい。私は歌詞のワードとメロディが同時に浮かぶケースが多くて、この曲もそうでしたね。そこからギターを弾き語りしながら、イメージを広げていきました。

――この曲が多くの人を惹きつける要因はどこにあると思いますか?

琳子:ほかの要素も絡めてはいるんですけど、ベースは実体験を書いた曲なんですよ。自分が本当に思ったことを歌詞に込めたのが、皆さんに共感してもらえたポイントかなと思います。

――琳子さんの中でご自身の強みはどこでしょう?

琳子:それは最近よく考えていて。まだ模索してる段階ではあるんですけど、私は見た目がポップというか、何も考えてなさそうというか、アホそうに思われるんですね(笑)。

――いやいや! どんどん悪く言ってますよ。

琳子:はははは。ひょうきんに見られがちなんですけど、内面はそうではなくて。自分が書く曲には切ない要素を入れたいと思っているんです。つらいときに聴くのが私にとっての音楽だから、自分と同じような人に曲が届いてほしいですね。

琳子

――「きみが死んでゆうれいになったら」や「ねっくれすが錆びる前に」も一見ポップだけど、実は悲しい要素も入っていますよね。

琳子:わかっていただけて嬉しいです! 悲しさって人間誰しもあると思うし、一時期はそんな自分を隠そうと思っていた時期があったんです。ネガティブな発言をするのがよくない風潮もあったと思うから、明るく見せていこうと考えたこともあったんですが、やっぱり取り繕うのは違うかなって。自分本来の感性が、特に「ねっくれすが錆びる前に」には表れていると思います。

――切ない要素も印象的ですけど、冒頭の〈付き合いたて 間もない頃に 放った言葉は「位置情報交換しよ」ってあれ本当に戸惑ったし気持ち悪かった〉のフレーズは強烈ですよね。

琳子:はははは、確かにそうですね!

琳子 / ねっくれすが錆びる前に【Music Video】

――「きみが死んでゆうれいになったら」では、「盛り塩で幽霊がいなくなるなら、盛り砂糖で亡くなった君は帰ってこれるかな」という発想が面白くて。切ないんだけど、ちゃんとコミカルさもあるのが琳子さんの魅力かなと。

琳子:歌詞を書くときは、SNSで話題になった“風呂キャン”というワードを絡めた「風呂キャンらぷそでぃ~」や、男女の関係を飲み物に例えた「ホットミルク」とか、そういう事柄に絡めた曲を作りたいんです。私のルーツはクリープハイプとaikoさんなんですけど、どちらのアーティストも一つのワードや事象からストーリーを展開させていく曲を書かれるんですよね。そこに惹かれたから、自分が作詞するときにも大事にしてますね。

琳子 / きみが死んでゆうれいになったら【Music Video】

――琳子さんは平面よりも奥行きのある歌詞を書かれる印象があって。例えば、おしゃれなカフェでお茶をしているカップル風の2人がいたとき、傍から見れば「仲良さそう」で終わるけれど、彼女の心の中では彼氏に対して「前はこの店に来たがらなかったのに。何かあった?」と疑心暗鬼になっているかもしれない。そういう絶妙な心の機微を描く力が長けているように思います。

琳子:ああ、それはありますね! 私自身、人からどう見られているかを気にしちゃうんです。同じように「こういう人はこう思ってるんやろうな」と心の中を探りたくなる。それが曲にも繋がっているのかなと思います。

――そうした人の感情を一歩引いた場所から観察するような”斜めの視点”を感じるんですけど、ご自身ではどう思います?

琳子:そうかもしれないです。それが自分では変なのかなと思うこともあるけど、楽曲の個性になっている気がしますね(笑)。今、言われてハッとしました。

――琳子さんって見た目はキャッチーだし、ステージに出たときは「可愛いラブソングを歌うのかな」と思うんだけど、いざ曲を聴いたら「あ、そんな意外な角度のことを歌うんだ」と驚く。このギャップがストロングポイントに思います。

琳子:本当ですか!? それを気にしていた時期があったんですよ。「この子、見た目と全然違う」と感じられるのって、良いことなのかなと悩んでいたので、その意見をいただけてよかったです……うん(目に涙を浮かべながら)。

――どうされました?

琳子:今年の4月末に、大阪から上京してきて自分の方向性に迷っていたんですよね。今は感受性が高まっているのもあって、込み上げてきちゃいました。でも、これは嬉しい涙なんです。昔から嬉しいと涙が出ることが多くて。徐々にアーティストとして自分の意志が固まってきてるタイミングやからこそ、ちょっと感情が溢れちゃいました。

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