桑田佳祐インタビュー「全国ツアーは恩返し」 自らの音楽の原体験とツアーへの思いを語る

 古希を迎え、これまでにも増して精力的な活動を展開している桑田佳祐。6月24日には初の完全書き下ろしによるアニメ主題歌を担当したソロシングル『人誑し / ひとたらし』をリリースし、各種音楽ランキングの首位を席巻。7月2日からNetflixで配信開始したドラマ『ガス人間』では、作品のキーソングとしてサザンオールスターズの「いとしのエリー」が起用され、1979年の曲にして各種ストリーミングのソングチャートの上位に急上昇するなど、48年を超えるキャリアでなお、音楽シーンの最前線を賑わせている。

 そんな桑田は、『人誑し / ひとたらし』を携えた約3年半ぶりとなるソロツアー『桑田佳祐 夏祭りツアー 2026 supported by カンロ』を7月8日の石川公演からスタートさせた。シングル収録の表題曲や「AKANE On My Mind~饅頭こわい」、「南谷ミュージック・シティー」からは様々な洋邦ポップスのエッセンスが感じられ、それらの楽曲から今回のツアーはどんなものになるのだろうと思いを巡らせている方も多いはず。そんななか、そのヒントになるかもしれない桑田佳祐の重要なインタビューが存在した。今年3月11日にDate fmで放送された『Date fm Pass On The Message 〜桑田佳祐スペシャル〜』(MC 井上崇)だ。今回リアルサウンドでは、その未放送部分も含め編集したインタビューを掲載する。(編集部)

「NEW 70’S」とサザンオールスターズの原動力

――遅ればせながら、2月26日、古希のお誕生日おめでとうございます。「NEW 70’S」というテーマを掲げられ、今年はそこから新作、そしてツアーと精力的にソロで活動されていますね。

桑田佳祐(以下、桑田):もう、おめでたくもなんともないという感じですけども(笑)。まさか自分が古希とはねえ。去年はサザンでお世話になりましたし、今年はソロで頑張ろうと。何かしないと弱っていくばっかりな気がして、とにかくぶち上げて。まずは気持ちからね。

――デビューから48年。第一線で走り続けることは、並大抵の精神力ではできないと思います。桑田さんの支えや原動力は何なのでしょうか?

桑田:やっぱりサザンの仲間がいますから、落ち込んだときに話したり、お互いに励まし合ってきたことが一番よかったと思います。それと、振り返るとあんまり48年分のことをつぶさには覚えてないんですよ。忘れることで気楽になれた部分もあったかもしれないし、運もよかった。そして当然、ファンの方々とスタッフのおかげで続けてこられたなと思っています。

――メンバー、ファン、スタッフも含めた人との繋がりですね。

桑田:他力本願でここまできたと思うんです。最初から自分が何者であるかとか、何を成すために音楽をやっているのかとか、ポリシーみたいなものがなかった。逆に空っぽの容器だから、付け焼き刃的に何でも飲み込んでみたり、何でも入れてみたり、ということができたんだと思う。周りの力やアイデア、ファンの皆さんの表情や声を伺っているうちに、「まあ何とかなるか」みたいなね。そういう環境に置いていただいたおかげで、今があるんだと思います。

桑田佳祐の音楽の原体験

――「忘れることで気楽になれた」というお話もありましたが、昔のことがフラッシュバックすることはありますか?

桑田:あります。本当にこの歳になっても、いまだに高校生ぐらいの時のことを突然思い出したりね。歯を磨いている時に「あちゃー」なんて思うことがよくあるんですよ(笑)。デビュー当時を思い出して、「よく偉そうにあんなこと言ったな」とか、「取材であんなことよく嘯いたな」とかね。

――ちょっと恥ずかしい思い出がフラッシュバックすると(笑)。過去のことについて伺ったのは、「NEW 70’S」というテーマが、サザンがデビューした70年代を想起させる言葉でもあると思いまして。その時代に吸収したものが、桑田さんのいまを作り上げているといっても過言ではないのではと。

桑田:もちろんそうですね。70年代は一番青春期だから。サザンオールスターズのデビューが1978年。1970年っていうと中学3年生で、音楽だったり、甘酸っぱい恋愛だったり、そういうものから一番刺激を受けている時代ですよね。

――「音楽のルーツ」と考えるとどうですか。

桑田:自分の音楽のルーツだろうと思うのはそれよりもう少し前の話で。僕は神奈川の茅ヶ崎というところの出身なんですけど、実家の向かいに漁師さんが経営されている旅館があって、大学生が合宿に来るんですね。5〜6歳の頃、そんな大学生に遊んでもらっていて。男女でワイワイ楽しそうにしていて、幼心にうらやましいなと思っていたんです。そこで彼らが必ずかけていたのが、トランジスタラジオ。朝からうちにも音楽が聴こえてくるんですよ。よく覚えているのは、The Beatlesの「プリーズ・プリーズ・ミー」とか、「抱きしめたい」とか。

 あとは、近くの海沿いに「カバナ」というスナックみたいなお店があって、家族と一緒にそこに行くと、ジュークボックスから音楽が流れているんですね。それがニール・セダカのようなアメリカンポップスだった。そういうものが原体験で、今のようにストリーミングもない時代に、道を隔てたトランジスタラジオから、あるいはスナックで誰かがかけたジュークボックスから聴こえてくる、「街鳴り」の距離感を今も忘れることができないんですよ。

 雑音とか、人の声に混じってポップミュージックが聴こえてくるというのがすごく自然なことだった。海に行けば、海水浴場のスピーカーからザ・ピーナッツさんや弘田三枝子さんが流れていて、家に帰ってテレビをつければ、『シャボン玉ホリデー』でクレージーキャッツが歌っている。そういうものが原体験であり、今でも僕の中の基準になっているんじゃないかなと思います。

――洋楽のポップスと日本のポップスが入り混じって、生活のなかで自然と聴こえてくる。そんな環境が、桑田さんの音楽の幅を作っているということでしょうか。

桑田:生活のなかで鳴っていた音楽がポップスじゃなかったら、もしかすると違う方向性になっていたかもしれないですね。今は「どういうものが流行っているんだろう?」と、ストリーミングで自分から聴きにいくでしょう。でも、昔は街鳴りやラジオしかなかった。僕は茅ヶ崎に住んでいてAFNという米軍のラジオ放送が聴こえてきたり、自然と洋楽に触れられる環境だったのがアドバンテージだったのかなと。ラジオから聴こえてきた「全米トップ40」なんかもひとつの原体験であり、宝物です。1971年にNHKで『ヤング・ミュージック・ショー』という番組が始まって、Deep Purpleとか、Emerson, Lake & PalmerやCreamみたいなリアルタイムの洋楽を紹介していて、たまらなかったなぁ。それから「ヤング720」(TBS /ABC)ね。朝7時20分から生放送だったんですけど、来日中のウォーカー・ブラザーズが生演奏をするんです。朝、口にトーストをくわえて学校の支度をしながら観ていたのを覚えていますね。

どんな時代でも影響力のあるものは不滅――「人誑し / ひとたらし」

――そんな原体験を持つ桑田さんも、いまはストリーミングや配信などデジタルでも音楽をチェックされるのでしょうか。

桑田:聴いてみるし、参考にもしますよ。デジタルという意味では去年、サザンのレコーディングでAIを使ったんですね。「ごめんね母さん」という曲で、“何か足りないな”と思ってセリフを入れようかと思ったんですけど、僕がセリフをやっても月並みだなと。そこで「最近AIって聞くけど、男が喋ったり女が喋ったりできるの?」みたいなことをディレクターに言ったら、「やれます」って。僕のAI初体験で、そうやって現代のものと共存していくのも面白いと思う。ただ、無限にある情報や音色を選ぶのは人間の感覚だと思っていますね。

――日々目まぐるしくテクノロジーが発展していて、音楽を届けるツールも変わっています。

桑田:僕はあまり意識していなくて。ただ今は今の雰囲気を噛み砕きながら、曲を作っている感覚はありますね。今回はアニメとのコラボがあったりするんですが、これも若いスタッフが「今のアニメというのはこうなってる」とか「アニメ主題歌のヒット曲はこうだ」とか、そういう話をしてくれたんです。僕も知らないことが本当に多くて、「果たして僕がそこにのっかっても大丈夫かな」とも思うんですけど、「大丈夫です」と背中を押してくれる。そういう身近なところのコミュニケーションから今の雰囲気を感じ取りながら曲を作っているんです。

――そうして生まれたのが、6月24日にリリースになったアニメ『あかね噺』の主題歌「人誑し / ひとたらし」ですね。イントロからスリリングな展開が印象的です。

桑田:イントロは、ザ・ジャガーズの「君に会いたい」とか、グループサウンズのやさぐれた感じというか、不安定なイメージだったり、60〜70年代のブリティッシュロックのモチーフだったら現代に持ち込んでも合うんじゃないかという直感があったんですよね。昔のものだけど、今に通ずる素材を寄せ集める感覚というか。この前も若いMVのディレクターと話していて、その方も現代のものもあればゴダールの作品なんかをイメージにアイデアを持ってきてくれるんですよ。時代を超えて尖っているものに反応しているんだなと感じました。どんな時代でも影響力のあるものは不滅なんだろうなと思いますね。

桑田佳祐 – 人誑し / ひとたらし [Official Music Video]

「ライブで皆さんにお会いすることが、僕のロマン」

――3年半ぶりとなるソロツアーも発表されました。石川を皮切りに宮城がファイナルになります。被災地を思う桑田さんの意志が伝わってきました。

桑田:やっぱり震災や災害があったということを忘れないでいることが大切なんじゃないかなと思うんです。その一方でわれわれエンターテインメントをやるものたちは“気晴らし産業部隊”ですから、辛いことを束の間忘れてもらったり、楽しいことを感じてもらったりできればいいなと思います。48年前にデビューしてから全国のイベンターさんやファンの皆様に育てていただいた。全国ツアーはその恩返しというか、そういう方達にご挨拶しにいくという思いもあります。僕はもともとライブというものがあまり好きじゃない方なんですけど(笑)、去年もサザンでツアーをやって、ファンの方々が集まって、出会って、楽しんでいただけて、「また会おうね」と言ってもらうことがわれわれの役目なんじゃないかなと思うようになりました。だから今は“ライブをやりたいな”っていう気持ちになっているんですよね。世代を超えたいろんな方々にお会いしたいなと。特に同世代の60代、70代の方々がライブに来てくださってね、グッズのTシャツを着ていただいたり、それで明るい表情をされているのを見させていただけるというのは非常にありがたいことですよ。一方で、ライブをやっている時はヅラを被ったり、自分は無茶苦茶ですけどね(笑)。

――9月に、宮城公演(ツアー本公演ファイナル)の翌日に『東北未来芸術花火2026』という音楽花火のイベントが開催されます。今年で5回目となるのですが、震災から15年の節目ということもあり、ずっと東北に寄り添い続けてくれている桑田さんの楽曲だけで花火を打ち上げる特別プログラムでお送りすることを計画しています。

桑田:僕の曲を使いたいとおっしゃっていただけるのは、本当にありがたい限りです。今回イベントを企画してくださったみなさんもそうですが、僕の周りのスタッフも常に被災地への思いをもっていて、ビジネスだけではない活動の道筋を作ってくれるんです。

――最後にリスナーへのメッセージをお願いします。

桑田:70歳になりましたけど、夢というか浪漫(ロマン)は常に持っていたい。あ、あと愛もね(笑)。今はとにかくライブをやることがモチベーションであり、みなさんにお会いすることが僕の生き甲斐です。みなさんも愛と浪漫を持って免疫力をおとさないように過ごしてください!

■リリース情報
『人誑し / ひとたらし』
6月24日(水)リリース
※アナログ盤:7月8日(水)リリース
特設サイト:https://southernallstars.jp/feature/kuwata2026

■公演情報
『桑田佳祐 夏祭りツアー 2026 supported by カンロ』
<日程・会場>
2026年
7月8日(水)開場17:30開演18:30
7月9日(木)開場17:30開演18:30
石川県産業展示館4号館

7月14日(火)開場17:30開演18:30
7月15日(水)開場17:30開演18:30
あなぶきアリーナ香川

7月21日(火)開場17:30開演18:30
7月22日(水)開場17:30開演18:30
広島グリーンアリーナ

7月29日(水)開場17:30開演18:30
7月31日(金)開場17:30開演18:30
8月1日(土)開場16:00開演17:00
TOYOTA ARENA TOKYO

8月7日(金)開場17:00開演18:00
8月8日(土)開場16:00開演17:00
三重県営サンアリーナ

8月13日(木)開場17:30開演18:30
8月14日(金)開場17:30開演18:30
グランメッセ熊本

8月19日(水)開場17:30開演18:30
8月20日(木)開場17:30開演18:30
GLION ARENA KOBE

8月27日(木)開場17:30開演18:30
8月28日(金)開場17:30開演18:30
北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ

9月2日(水)開場17:00開演18:30
9月3日(木)開場17:00開演18:30
Kアリーナ横浜

9月9日(水)開場17:30開演18:30
9月11日(金)開場17:30開演18:30
9月12日(土)開場15:30開演16:30
宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ

追加公演

12月16日(水)
12月17日(木)
愛知・クロコくんホール(日本ガイシホール)

12月22日(火)
12月23日(水)
大阪・大阪城ホール

12月28日(月)
12月30日(水)
12月31日(木)
神奈川・横浜アリーナ

※追加公演およびチケット受付の詳細は2026年秋頃に発表予定

特設サイト:https://southernallstars.jp/feature/kuwata2026live

■関連リンク
サザンオールスターズ オフィシャルサイト:https://southernallstars.jp
サザンオールスターズ公式 YouTube channel:https://www.youtube.com/@SouthernAllStarsch
桑田佳祐公式YouTube channel:https://www.youtube.com/@KUWATAKEISUKEch
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