Ms.OOJAの歌声はなぜ“届く”のか デビュー15周年の到達点、技術と共に培われた歌心の凄み
この原稿を書くために過去のファイルを調べ直したところ、2011年リリース、Ms.OOJAのセカンドシングル『Life』のレビューがあった。たぶん自分が彼女について書いた最初の文章で、「その魅力の源はなんと言っても歌声の素晴しさ」「繊細な表現力と凛とした力強さを加えた、稀に見る「届く声」の持ち主」とある。なるほど。
その後も何度かレビューを書き、何回かライブを見ているが、2022年、『流しのOOJA 2』を出した直後のライブレポートによると、「ライブでの歌唱力はただただ圧巻」「強烈なパワーと繊細な技巧、説得力と包容力を兼ね備えた上にとても伸びやかで自然体」とある。なるほど。自分で言うのも何だが、その通りだと思う。「届く声」にわざわざカッコを付けている通り、Ms.OOJAの声は届く。その印象は、デビュー15周年を迎えた今に至るまで全く変わらない。
Ms.OOJAが15年で磨き上げたもの
その、記念すべき15周年の年にリリースするのがカバーアルバム、しかも初の「演歌カバー」なのも実にMs.OOJAらしい。そもそもデビューシングル「It’s OK」のカップリングで沢田知可子「会いたい」をカバーしているのを皮切りに、『Woman -Love Song Covers-』(2012年)から、コンスタントにカバーアルバムを作り続けて9作目。オリジナルとほぼ同数をリリースしているのだから、彼女にとってカバーは余技でも息抜きでも何でもない。自らの表現に絶対に欠かせないものとして、魂込めて作り続けていることがよくわかる。
4月にリリースされたばかりの『Ms.ENKA ~OOJAの演歌~』を、あらためて聴いてみよう。美空ひばり「愛燦燦」から始まり、ちあきなおみ「冬隣」で終わる全12曲は、1975年の都はるみ「北の宿から」が最も古く、大半が80年代の楽曲、しかもどの曲もかなり大胆なアレンジが施され、演歌のイメージをくつがえすようなチャレンジングな仕上がり。原曲を知る人には新鮮な驚きを、新たに触れる人にはMs.OOJAならではのオリジナルな味付けを、どちらにしても楽しめるようになっている。
たとえば、ジャズのスタンダードですと言っても通じるような、凝ったピアノのコード進行で生まれ変わった「愛燦燦」の伸びやかな聴き心地。八代亜紀「雨の慕情」の、雨音のサンプリングとファンキーにうねるベースライン。島倉千代子「人生いろいろ」の、繊細なギター·カッティングと間奏の情熱的サックスブロウ。森進一「冬のリヴィエラ」は、作曲の大瀧詠一に敬意を表したのだろう、ナイアガラサウンドっぽいカスタネットを隠し味に、ジャジーなポップスとしての完成度が高い。
オリジナルは佳山明生、日野美歌バージョンでも知られる「氷雨」もジャジーなピアノのコードが新鮮で、二番から入って来るムーディーなストリングスが聴きもの。香西かおり「無言坂」は、R&Bっぽいトラックにアコースティックギター、玉置浩二による色気あるメロディをしっとりと歌うボーカルがいい。梅沢富美男「夢芝居」はヒップホップを感じるシンプルなトラックに、エレクトリックピアノとストリングスを添えた、広がりある音像がとても魅力的だ。
吉幾三「雪國」は、アルバムの中で最も演歌調な仕上がりで、迫力あるバンドサウンドに乗せてのびのびと自然な歌が聴ける。桂銀淑「ベサメ・ムーチョ」は、原曲のラテン歌謡/演歌をベースに、トランペットを配して華やかに。そして「北の宿から」はイントロだけではこの曲だとわからない、ジャズの装飾を加えたコード進行で驚かせ、聴き手を引き込む手腕が鮮やか。アルバムの最後を飾る「冬隣」は、シンプルな打ち込みトラック、間奏のサックス、歌詞の世界観、ちあきなおみの歌声ともどこか通じ合うようなMs.OOJAの歌唱、淡々とした中に深い悲しみの余韻が広がる、個人的にはこのアルバムのベストトラックだ。
不思議なことに、全曲通して、主役であるMs.OOJAの歌には思い入れや気負いといったものがほとんど感じ取れない。演歌的なコブシも回さないし、歌のうまさを誇示することもない。演歌にまとわりつく湿っぽい抒情を拭い去って、感情にとらわれず、語り部のように歌うからこそ、かえって歌の物語がじんわりと心に沁みる。その代表がたとえば「冬隣」であり、「北の宿から」だ。
演歌と銘打っているものの、これまでのカバーアルバムとスタンスは同じ。前述のライブレポートの中には、「どんな時代のどんなジャンルも歌いこなす、Ms.OOJAの歌のうまさは自分のためではなく、歌の言葉を伝えるためのうまさだ」とも書いてある。なるほど。自分で言うのも何だが、その通りだと思う。Ms.OOJAの15年は、それを磨き続けた時間だった。そして彼女はこれからも、その道を究め続けるだろう。
アルバムリリースに伴い、全国のショッピングモールを巡る『Ms.ENKA ~OOJAの演歌~をあなたの街に歌いに行きますツアー!』はすでにスタートしていて、7月18日の大阪まで全20カ所を予定している。さらに6月7日には東京・明治座で一夜限りのリリース記念ライブを開催し、そして10月18日にはデビュー15周年を祝して、『Ms.OOJA 15th Anniversary Live「Ms.OOOOOJA! ~あたらしい景色をみにいこう~」』も決まった。結局のところ、彼女が歌えば全てはMs.OOJAの歌になる。あたらしいMs.OOJAの歌を聴きにいこう。
■Ms.OOJA 15周年特設サイト
https://msooja.jp/page/15th/
■リリース情報
『Ms.ENKA~OOJA の演歌~』
2026年4月22日(水)リリース
購入リンク:https://msooja.lnk.to/MSENKA_CD
<通常盤>
価格:3,520円(税込)
品番:UMCK-1826(CD Only)
<CD>(曲順未定)※通常盤・UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤共通
・愛燦燦 / 美空ひばり(1986)
・雨の慕情 / 八代亜紀(1980)
・北の宿から / 都はるみ(1975)
・氷雨 / 日野美歌(1982)
・人生いろいろ / 島倉千代子(1987)
・冬隣 / ちあきなおみ(1988)
・冬のリヴィエラ / 森進一(1982)
・べサメ・ムーチョ / 桂銀淑(1940)
・無言坂 / 香西かおり(1993)
・雪國 / 吉幾三(1986)
・夢芝居 / 梅沢富美男(1982)
<UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤>
価格:13,200円(税込)
品番:PDCS-194
2CD+Blu-ray+GOODS
仕様:見開きLPサイズジャケット仕様
※商品は数量限定。
UNIVERSAL MUSIC STORE 限定盤 Disc-2 ライブ CD
2025.8.8(fri)Billboard Live Summer Tour 2025 @Billboard Live YOKOHAMA
1. 夏をあきらめて
2. 恋人も濡れる街角
3. Last Night
4. Purple Haze
5. 優しい雨
6. まだ知らないストーリー
7. Ti Amo
8. 最後の雨
9. 雨の慕情
10. 30
11. 40
12. Be...
13. 最終回
UNIVERSAL MUSIC STORE 限定盤 Disc-3 Blu-ray
2025.6.22(sun)流しのOOJA 総集編 TOUR Final @明治座公演
1.異邦人
2.ルビーの指輪
3.ワインレッドの心
4.恋人も濡れる街角
5.真夜中のドア
6.プラスティック・ラブ
7.みずいろの雨
8.勝手にしやがれ
9.六本木純情派
10.飾りじゃないのよ涙は
11.フライディ・チャイナタウン
12.Woman
13.恋におちて
14.つぐない
15.駅
16.木枯らしに抱かれて
17.メモリーグラス
18.ダンシング・オールナイト
19.青春の影
20.恋
21.瑠璃色の地球
22.さよならの向う側
<UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤 GOODS>
・Ms.OOJA オリジナルアクリルスタンド
・Ms.ENKA オリジナルバンダナ
■関連リンク
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