hitomi×Nikoん、世代を超えた音楽的共鳴 “1994年”から繋がった異色のコラボを徹底総括【対談+ライブレポート】
「Nikoんで次にやってみたいことを取り入れるいいチャンス」(マナミオーガキ)
――ちなみに音楽の話をした時に、hitomiさんとNikoんのふたりで共通して好きな音楽があったりしましたか?
hitomi:自分が聴いてた中でいくと、わりとギターの歪み具合にRadioheadとかスマパン(The Smashing Pumpkins)とかを感じてて。そっち寄りの音楽かなって思っていました。晴れてるというよりはちょっとダークというか、曇り空が似合う感覚。1枚目(『public melodies』)が特にそうかなと思うんですけど。
マナミオーガキ:そうですね。『public melodies』を作る時にRadioheadとThe Smileはめちゃくちゃ参考に聴いてました。
hitomi:ただ、私は「たとえば日本の音楽だとミスチル(Mr.Children)とかを聴くけど」ってオオスカくんに言ったら、彼も『どろろ』の主題歌の「フェイク」を聴いてたというような話をしてて。Nikoんは洋楽の感じがすごくするけど、本人はそんなに聴いてたわけじゃないと言っていたんですよね。日本の音楽から影響を受けていると言ってて意外でした。
――Nikoんが作曲した「Tokey-Dokey」について、hitomiさんはどんな感想を持ちましたか?
hitomi:初めにNikoんの曲を聴いた時はやっぱり難しい印象があったんですけど、「Tokey-Dokey」はそれまでに聴いていたNikoんの楽曲よりもかなりポップだったから、「素敵! ぜひ歌いたい!」という感じでした。
――マナミさんは制作当時に考えていたことで覚えていることはありますか。
マナミオーガキ:楽曲提供の話が現実的になってきたところで、hitomiさんの曲をいろいろ聴いたんですけど、Nikoんで次にやってみたいことを取り入れるいいチャンスだと思いました。自分がNikoん以前にやってきたもっとポップスっぽいもの。2ndアルバム(『fragile Report』)でそれをやりきれたかと言われたら、あんまりそういう感じではなかったので、次はNikoんの土俵にポップス的な要素を100%持ってきたいと思ってて。そこでhitomiさんに楽曲提供をするというのはかなりいいタイミングでした。結果的に自分のチャレンジとも重なる話になったなと思います。
――ライナーノーツには楽曲提供の話がくる前からデモを作っていたと書かれていますね。
マナミオーガキ:そうですね。楽曲提供をすることは特に考えずに作っていたデモが大元です。なので、もともとの考えずに作っていたところは、次にやりたいポップス的な成分がかなり強い素材だったと思います。
――そのポップス的な成分というのは?
マナミオーガキ:ちょっと言葉にしづらいですけど、いい意味でめちゃくちゃダサいデモだったんですよ(笑)。シュールというか、かわいらしさがあるというか。楽曲の冒頭にあるカセットテープの音みたいなところは、デモの最初にあった部分です。最終的な形よりもっと昔のアイドルっぽいオケで、チープなシンセが入っているような感じでした。
――なるほど。
マナミオーガキ:そこから実際に提供する曲を作っていく中で、hitomiさんが歌うことを考えてオケ感のバランスをオオスカと話し合ったり、アレンジも大胆に変えて詰めていきました。
hitomi:オオスカくんも「hitomi姉さんに寄せたんだ」って言ってましたね。なんかオケをもうちょっとホップにしたと。
マナミオーガキ:そうですね。Nikoんの楽曲だと試すのもハードル高いアプローチを結構取り入れてます。バッキングもそうだし、Nikoんだったらこれできないかも、みたいに言いながら録ってました。
hitomi、「Tokey-Dokey」に落とし込んだ“ずっと変わらないテーマ”
――「Tokey-Dokey」はNikoんもライブで歌っていますが、両者で歌詞は随分違いますね。
hitomi:「Tokey-Dokey」というタイトルが決まっていて、ディレクターからは、タイトルは変えずに歌詞を書いてほしいと言われました。それで「Tokey-Dokey……時々? 時々どうなんだ……?」みたいなところから始まって、それで「ふと自分は何を思っているのか」ってところを考えて。せっかくだから人間同士の感情のやり取りというか、今の時代の人間関係ってなんかわかったふりしてわかってないよね、みたいなことを書きたいというように繋げていきましたね。
――社会への鬱憤みたいなものも感じました。
hitomi:そうですね。やっぱりこうやってSNS時代に生きていると、わかったふりしてわかってねえじゃん、みたいなことが結構あると思うんですよ。すぐニュースになって人を貶めて終わるみたいな。なんていうかな、人間関係もSNSで毒されてきちゃっている部分を感じる中で、それでもやっぱりちゃんと愛したいとか信じたいとか、人と繋がりたいみたいなことを根底に置いている。「あんたのことちゃんと知りたいんだよね」って、そういうことを書きたかったんです。
――SNSとの向き合い方や感じ方って、世代によって違うところもあるのかもしれないですよね。
hitomi:うん、そうですね。でも、やっぱり今ひどいなって感じは受けちゃいますね。短絡的というか、情緒、思いやり、なんかそういう深いものがどんどん消されていってしまってるから、私のような親の目線とか大人の目線で見るとちょっと心配になる。でも、Nikoんのふたりはそうじゃなかったから。こういう若者がいてくれてよかったって思えるふたりで、だからこそいい音楽を作ってると思うんですけど。
マナミオーガキ:嬉しい。
hitomi:でも、難しいなって思います。自分も日々人との付き合い方を考えるんですよね。「こう言ったことがこういうふうに伝わってるのか」とか、気持ちのズレを感じることも多いし、それが昔以上に強く感じやすいのは、いろんなことが簡単にアクセスされちゃうからなのかなとも思います。
――90年代や2000年代の楽曲を聴いても、hitomiさんの歌詞には一貫して愛という言葉が出てきます。ここにはhitomiさんなりの変わらないテーマがあるんですか?
hitomi:そうですね。やっぱりどうやって本当の意味で人と繋がるのかとか、人を愛していくのかっていう、そのテーマはずっと変わらないかもしれないです。日頃から「こういうのは本当イヤだな」とか、「これはすごくホッとする出来事だな」とか、そういうことを結構キャッチしてるんですけど。特に子育てをしていると、やっぱり子供たちが今危ういなって思っちゃうので。だから昔なんかより今の方が敏感になってるかもしれないです。ここ最近のニュースを見ると、他人事じゃないことが増えている気がします。それこそ闇バイトとかもそうだけど、誰でも加害者になり得る時代なのかなとか、そういうことを考えると昔とは感覚が違いますね。