hitomi×Nikoん、世代を超えた音楽的共鳴 “1994年”から繋がった異色のコラボを徹底総括【対談+ライブレポート】
hitomiにNikoんが提供した楽曲「Tokey-Dokey」が5月20日にリリースされた。かたや1994年にデビューしたベテランシンガーで、かたや1994年生まれのベーシスト(マナミオーガキ)を擁するバンド。運命に導かれるように同じレーベルに所属した両者は意気投合する中で距離を縮め、今年3月の対バンツアー『hitomiとNikoん / LIVE TOUR 2026』開催と、今回の「Tokey-Dokey」リリースに至った。世代は離れているが、音楽に真正面から向き合う姿勢は同じ――そんなマインドで心を通わせた両者による対談をお届け。合わせて、今年3月18日に開催された対バンツアーのファイナル、新代田FEVER公演の模様もレポートで振り返る。(編集部)
【ライブレポート:『hitomiとNikoん / LIVE TOUR 2026』ファイナル】
hitomiとNikoんによる対バンツアーが3月18日にファイナル公演を迎えた。
何故この2組が? と言いたい気持ちはわかる。おそらくこの日足を運んだ人でさえ、ほとんどがそう思っていたはずだ。サウンド的にもシーンの立ち位置的にも、接点のなかったはずの両者である。しかし「だからこそ面白い」というのが音楽の魅力であり、対バンの醍醐味なのだ。何より今のNikoんにはそういうのもアリにしちゃう勢いがある。片や1990年代から2000年代にかけて、多数のヒット曲と共にJ-POPシーンを駆け抜けてきたシンガー。片や結成から3年、尋常ではないペースで全国のライブハウスを駆け巡る気鋭のロックバンド(ちなみにhitomiがCDデビューを果たしたのが、マナミオーガキ(Vo/Ba)の生まれ年=1994年とのこと)。そんな誰も交わることを想像していなかった「異文化交流的」(hitomiのライブ中のMCより)で、「不可解極まりないツーマン」(終演後のNikoんのXポストより/※1)が愛知、大阪、東京の3カ所で行われた。そのファイナル、新代田FEVER公演の模様をレポートする。
共にmaximum10に所属するレーベルメイトだが、繋がりが生まれたのが2月に発表された楽曲提供である。「Tokey-Dokey」と題した新曲で、今やドラマタイアップにも抜擢されるなど羽を広げている。無論、それに紐づけたツアーがこの企画である。「提供の話をもらって制作をしていたものの、プロデューサー的な立場が気持ち悪いというか。それなら一緒にツアーもやりましょう」(オオスカ/Vo/Gt)と提案したという。言葉通りむず痒い気持ちがあったのかもしれないし、「顔の見えない仕事はやりづらい」という内心があったのかもしれない。昨年の「九州シリーズ」や「大阪シリーズ」と題した現地滞在型のツアー然り、各地のカッコいいバンドと対バンする47都道府県ツアーもそう。Nikoんはリスナーにもミュージシャンにも、自分の足で会いにいくことを信条にしているように思う。ともあれhitomiの方もNikoんの音楽に刺激を受けたようで、そのプランに快く乗ったというのが大まかな経緯である。
まずステージに現れたのがNikoん。ツアー、ツアー、ツアー……このバンドの状況を端的に言えばこういうことになる。この日のMCでも「3つのツアーを掛け持ちしている」と言っていたが、最新アルバム『fragile Report』の購入者は無料で入場できるアウトストアツアーで47都道府県を回った直後に、同アルバムのリリースツアーにも出ており、その本数たるやスケジュールを見るだけで身震いがするほどである。
このライブの3日後にはO-EASTでのリリースツアーファイナル・ワンマンを控えていたこともあり、Nikoんはムキムキに仕上がっている。とにかく充実を感じさせる演奏、音からも自信が漲っているのだ。1曲目はこの度の縁を作った「Tokey-Dokey」。爽やかだが鋭さを感じさせるオルタナティブロックで、まさしく『fragile Report』以降のポップナンバーという趣である。続く「step by step」は迫力満点のベースが気持ちよく、その勢いのままヒステリックな音色のギターがドーパミンを放出させるダンスミュージック「さまpake」へ。ポストパンク風味の「smile」まで、鉄壁のアンサンブルで腰をグイグイと揺らしてくる。
マナミオーガキがメインボーカルを担う『fragile Report』の制作、及びそのツアーは彼女の資質を開花させただけではない。Nikoんの真価をも発揮させたと言えるだろう。楽曲に幅が生まれたのはもちろん、ライブでは彼女の力強いボーカルがフロアの熱を上げていく。音楽的にも存在感の面でもオオスカが前に出ていた印象の昨年までとは異なり、今はふたりが両輪となって大きな円を作っているのだ。
「大阪でやったら最前の人がびっくりしていたけど、びっくりしないでください」(オオスカ)と前置きしてから「とぅ〜ばっど」。身構える隙も与えず轟くギター! 俺はフロアの後ろの方にいたけどびっくりした。脳天カチ割れるかと思うくらいノイジーなサウンドが挑発的に鳴り響く。原曲よりもサイケデリックな雰囲気を感じさせるハードなロックナンバーで、マナミオーガキのボーカルはサウンドに引け取らないくらい猛々しい。フロアから一際歓声が上がったのも当然だろう、新作の中でもとりわけライブで化けた1曲だと思う。
一転、爽快ポップな「(^。^)// ハイ」で景色が変わる。続く「public melodies」は水の中にいるようなエコーをかけているのか、不思議な響きのギターが印象的である。何より間奏のアンサンブルが美しい。激しいのに整然とした印象を与える演奏で、マスロックやエモからの影響が強く残る初期の楽曲ならではと言ったところだろう。最後は勢いよく「グバマイ!!」を歌って終演。hitomiのステージへとバトンを繋いだ。
「こんばんは〜」とリラックスした雰囲気でhitomiが登場。颯爽としているというか、当然のことながら、Nikoんの空気に引っ張られないオーラがある。音が鳴る前からキャリアの片鱗を垣間見た気分だ。
1曲目は代表曲の「SAMURAI DRIVE」。短いステージということもあり、新曲を除けばすべてが代表曲という出し惜しみのないセットリストである。ディスコ風味のポップナンバー「CANDY GIRL」では早速フロアから大きな声が上がり、エモーショナルなラブソング「キミにKISS」でhitomiのボーカルにもエンジンがかかってきたように思う。2本のギターが描くメロディのよさはもちろんだが、安定感のあるベースがこの曲の魅力を底上げしている。
それにしてものっけからバキバキに歪んだサウンドでご挨拶したNikoんとは打って変わり、どの曲も出音が優しい。全曲を通してまろやかというか、曲調よりも音圧にこそ両者の出自や畑の違いが出ているように思う。このツアーを通して双方刺激を受けたと語っていたが、この後のMCで話された、「(Nikoんとツアーをやったことで)自分のアンプのボリュームも上がった気がする」(FZ)というエピソードこそ、まさに両者のサウンドの性格を表しているように思う。
「by myself」を終えるとマイペースなMCを挟んで「Stand by…」。年明けにリリースされた新曲で、軽快なドラミングが爽やかな風を運んでくるような楽曲である。hitomiの抜けの良いハイトーンもばっちりで、疾走感のあるサウンドがフロアを吹き抜けていく。そしてなんと言っても「LOVE 2000」だ。ギターリフだけで高揚感を抱かせる言わずと知れたヒット曲。舞うように歌うhitomiの姿が軽快なアンサンブルとのシナジーを生んでおり、開放感のあるメロディはこの企画自体の成功を感じさせるようである。
最後はダメ押しで「Tokey-Dokey」。Nikoんの後にhitomiの曲として聴くのが新鮮で、ガーリーで華のあるボーカルはこの曲のカラフルさを引き立てる。パンキッシュでスピード感のある演奏も、彼女のセットリストにおける新味になっていたように思う。アンコールの「MARIA」まで磐石、後にも先にもないかもしれないツアーをきっちり締めくった。
大阪の打ち上げでは“姉さんたち”からの「飲めば?」という無言の圧を感じたと笑ったNikoんだが、hitomi曰く「そこに獺祭があっただけ」。そんな打ち上げの席でのhitomiとバンドメンバーについては、「みんな自分が話したいことを話していた」(オオスカ)、「かわいい。ミニドラみたい」(マナミオーガキ)とのこと……。
そんなツアーと制作を共にしてタフに仕上がった「Tokey-Dokey」については、次ページからの対談で紐解いていく。
(※1)https://x.com/Niko_n_band/status/2034265090963501225