稲垣吾郎&草彅剛&香取慎吾は、なぜ“異次元の挑戦”を続けられるのか? NAKAMAへの信頼と楽しむ心

 稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾による新作映画『バナ穴 BANA_ANA』(正式表記はアンダーバーは穴の絵文字)が、6月27日から全国順次公開。6月10日に本予告映像が公開されると、90秒バージョンがYouTubeの映画急上昇チャートで9位にランクイン(6月12日時点)するなど注目を集めている。

 “わからないムービー”と銘打った本作は、稲垣、草彅、香取が実名の役柄を演じているなど、リアルとフィクションが行き来し、現実と虚構の境界線が曖昧になっていく不条理エンターテインメント。「わからない」とポカンとするもよし、「グッとくる」と何かを感じとるもよし。けれど、次第に「あなたはどう思った?」と誰かと言葉を交わしたくなる。そうして意見を話し合うことで、完成する作品とも言えそうだ。

 興味深いのは、その届け方までもが従来の映画公開の枠から少しはみ出ているところだ。まずは観てもらわないと始まらない。そんな作品の特性もあってか、公開初日の6月27日に行われる舞台挨拶イベントとあわせて、映画本編もABEMA、U-NEXTで生配信されることが発表されたのだ。イベントと映画本編を生配信するというのは、かなり大胆な試み。しかし、その大胆さこそが「彼らならでは」とも言える。

 普通に考えれば、配信で観られるなら劇場動員に影響するのではないか、という見方もあるだろう。しかし、それができるのは“NAKAMA”と呼ばれるファンとの信頼があるからこそ。彼らのファンは、単に作品を受け取るだけの観客ではなく、文字通り彼らとともにその歩みを広げていく“仲間”なのだ。

 3人が2017年に新しい地図を広げ始めた直後の『72時間ホンネテレビ』(ABEMA)も、象徴的なチャレンジだった。それまで、いわば“テレビの中の人”だった彼らが、番組内でSNSのアカウントを作り、72時間にわたってリアルタイムで視聴者とつながり続ける。その試みはNAKAMAの盛り上げもあって大きな反響を呼び、番組は『第55回ギャラクシー賞』テレビ部門 フロンティア賞を受賞したほどだ。

 その後も『7.2 新しい別の窓』、『ななにー 地下ABEMA』へと形を変えながら、3人はインターネットという場で発信を続けてきた。今では、SNSで話題の人物やテーマを掘り下げるなど、ネットカルチャーを外側から眺めるのではなく、自分たちの番組の中へ取り込み、紹介する側としても存在感を放っている。その歩みを支えているのも、彼らと一緒にインターネットでの応援の仕方を開拓していったNAKAMAからのリアクションだ。

 そうしたインターネットでの挑戦と並行して、もうひとつ象徴的な動きとなったのが映画のプロジェクトだ。2018年に公開された映画『クソ野郎と美しき世界』は、稲垣と草彅と香取が出演する4本の短編からなるオムニバス映画で、園子温、太田光(爆笑問題)、児玉裕一、そして山内ケンジの4人がメガホンをとった。2週間限定での公開だったが、目標として掲げた15万人という観客動員数を大きく上回ったことで、すぐさま第2弾の制作が決定した。そこからおよそ8年、多くの人がその行方を気にかけ、待ち望んできたのだ。

 ともすれば、これほど長い時間が経ってしまうと、そのまま立ち消えてしまうことも珍しくない。だが、そうならなかったのは、3人を求める周囲の声と熱量が途切れなかったからだろう。「いつまでも待てる」と思わせる信頼と、「いつか」を信じて待ち続けたくなる魅力。その両方を保ち続けてきたからこそ、第2弾は実現し、さらに多くの人へ届けるための新たな手段にも踏み出せたのだ。急ぐときは大胆に、待つときはゆるやかに。そんな独特の距離感が、新しい地図をここまで広げてきた。

 そして、今回の試みもまた、新しい何かにつながっていくのだろう。劇場で観る人、配信で観る人、舞台挨拶を見届ける人。それぞれの入口から作品に触れ、感想を交わし合うことで、『バナ穴 BANA_ANA』という映画はさらに広がっていく。

 この映画の穴の先に何が待っているのか。これが答えだ、というものなどない。むしろ、どうなるのかわからないことを、一緒に楽しもうではないかと誘われているようでもある。6月27日の公開以降、この映画をめぐってどんな言葉が交わされ、どんな景色が広がっていくのか。その“わからなさ”まで含めて楽しみにしたい。

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