嵐、5人が5人のまま下ろした幕 全33曲――究極のエンタメで届けた特大の感謝 “国民的アイドル”の美しい終着点

 美しいアイドルの終わりを見た。グループとしての活動を終了した、嵐のラストライブについてである。

 5月31日に東京ドームで開催された『ARASHI LIVE TOUR 2026「We are ARASHI」』。今年3月に北海道から始まったドームツアー全15公演のファイナルであり、1999年にハワイで華々しくスタートした“Voyage”=“航海”の終着点。2020年12月31日に活動休止という決断をくだしながら、5人が再び嵐としての舵を取ったのは、コロナ禍で直接届けられなかった感謝とパフォーマンスをコンサートという場で伝えるため。嵐としての活動終了を発表した1年前の2025年5月から、メンバーは個々での活動はあれど、音楽番組やバラエティなどへの嵐としてのメディア出演は一切なかった。この1年間で5人が届け続けたのは、ファンクラブ会員に向けた多くのコンテンツ。そして、オンライン配信を伝える地上波でのCMのみ。ファンにとっての、嵐にとっての、そして5人にとっての幕引きに向けた1年間だったことがコンサートを通じて伝わってくる。

 嵐が作り出す、夢の空間。3時間半に及ぶコンサートで歌われたのは、全33曲。400曲以上のレパートリーを持つ嵐にとって厳選されたセットリストであることは言うまでもないが、誰もが歌える、“ご唱和”できる楽曲の数々にあらためて嵐が国民的アイドルと称されるその所以を見た気がした。テレビと嵐というのは、密接な関係がある。確固たる地位を築くに至ったブレイクの最大のきっかけと言われる「Love so sweet」を筆頭に、そこにはファン一人ひとりが交わったタイミングがある。ドラマ主題歌に、数え切れないほどのバラエティ番組、音楽番組への出演。時代は移り、SNS全盛と言われる今の時代に嵐ほどの国民的アイドルが現れるのだろうか、と考えるほどに、特にセットリスト後半は燦然たる軌跡を残してきたことを物語る怒涛のシングル曲の畳みかけだ。ラストの「A・RA・SHI」「感謝カンゲキ雨嵐」「Happiness」は、その最たる例だろう。

 ファン一人ひとりに、曲との思い出、思い浮かべる景色がある。筆者にとっても思い入れのある曲は多くあるが、特に『a Day in Our Life』は初めて買った嵐のワンコインCDとして強く思い出に焼きついている。当時アイドルとしては一線を画したミクスチャーサウンドに、櫻井翔の卓越した鋭いラップ。ライブでは櫻井がマイクを預け、ファンがコールを交えながら進んでいくスタイルが定番であり、同時に大野智の伸びやかなボーカルは今も衰えはしていない。何より、この5年近くのブランクを経て、ボーカル、パフォーマンス、ビジュアルとすべてにおいて、アイドルとして仕上げてきたことに感服の至りだ。「P・A・R・A・D・O・X」に加えて、「Monster」から「truth」の流れ。水飛沫が舞い、いくつもの火柱が立つド派手な特効。巨大なムービングステージに、王冠型のバルーンといった演出にも度肝を抜かれた。究極のエンターテインメント、総合芸術。筆者は配信にて視聴したが「MC字幕・歌詞字幕あり」という配信環境も、松本潤のプロデュースが透けて見えた気がした。

 今回のセットリストには、5人が2曲ずつ選曲した「Members’ selection」というメンバーそれぞれの思いとともにプレイリストとして事前に公開されていた楽曲が組み込まれていた。松本が選んだのは「ハダシの未来」「Oh Yeah!」といったライブとともに成長してきた楽曲、二宮和也は「P・A・R・A・D・O・X」に、今回ライブ初披露となったブルーノ・マーズ制作の「Whenever You Call」といった世界に照準を合わせていた活動休止前の2曲を届けた。相葉雅紀は「僕が僕のすべて」「Yes? No?」という“イントロ”に惹きつけられる楽曲を、大野は自身が振り付けを担当した「サヨナラのあとで」「つなぐ」を今の嵐として表現。櫻井は一体感溢れるパーティーチューン「CARNIVAL NIGHT part2」と「スケッチ」を選曲している。特に結成5周年の際に櫻井と二宮が作詞を担当するなど、メンバーそれぞれがクリエイティブを担った「スケッチ」では、焚き火を囲んだ5人が当時を懐古するような温かな雰囲気を放っていた。言うなれば、先述したシングル曲は万人向けに、メンバー選曲はファンクラブ会員のコア向けとも捉えられるだろう。

 「Love so sweet」の〈こんな好きな人に 出逢う季節二度とない〉というフレーズが特別な意味合いを持つラストコンサートという特殊な環境下において、筆者の涙を誘ったのは「マイガール」だった。〈ありがとうの想いを伝えたいよ そっと君のもとへ/遠く離れてしまっても 思い出に満ちた未来へ〉というサビの歌詞が、嵐とファンの関係性を表しているようにも思える。


 「やるか」「やらないか」という選択を前に、5人は前者を選んだ。このまま後者でいるほうがきっと楽だっただろう。それでもあのときの忘れ物を取りに行くため、5人は1年をかけてゆっくりと嵐を再び作り上げていった。5人にしか出せない空気感とリズム。嵐 is Back! ここは地位や名誉など関係ない、全員が幸せになる夢の世界だ。

 だからこそ、5人が5人のまま、嵐に幕を下ろす。笑顔で楽しく終わりを迎えられることは幸せなことだ。番組が、グループが、予期せぬ終わりを強いられることも少なくない。それでも、嵐は国民的アイドルという称号を背負いながら、有終の美を飾ろうとしている。葛藤や寂しさを抱えながらも、26年半の特大の感謝を込めて、「We are ARASHI」と胸を張り、5人はゴールテープを切ったのだ。


 コンサートのラストソングは「Five」。嵐にとっての最新曲だ。〈忘れないでいよう〉という最後の歌詞が伝えているように、嵐は一人ひとりの心に生き続ける。この先、新たな嵐のファンも生まれ、音楽は歌い継がれていくことだろう。バックダンサーとしてステージに立ったジュニアメンバーにとっては、一生忘れられない経験になったはずだ。同時に、筆者が5人の姿勢から感じたのは、終わることでまた新たな未来が始まるということ。大野智、櫻井翔、相葉雅紀、二宮和也、松本潤の5人が描く騒がしい未来が向こうできっと待ってるから。

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