歌声分析 Vol.15:大泉洋 生身の人間性が滲む歌声 確かな歌唱力と説得力、“語り”に近い無二の質感に迫る

「ふわり」「みんなのYEAH!!!」……言葉の芯とピッチを保つ実力

 「ビーチドリーマー」(2009年)は、爽やかなアレンジが映えるシティポップ文脈のミディアムアップチューン。作詞曲を手掛けたのは大泉本人だ。注目してほしいのは、サビに登場する〈ビーチ ビーチビーチビーチ ドリーマー〉というフレーズ。“ビーチ”という、歌いにくい言葉である“い”の母音をこれだけ続けたことにも驚くが、大泉はどの母音も喉を閉じることなく、朗々とロングトーンを鳴らしている。また、一般的に声は縦に響いていくパターンが多いが、発した場所から放射状に広がっていくような響き方をしているのも、ボーカリスト・大泉ならではの個性である。

 「ふわり」(2024年)は、GLAY・TAKUROが作詞曲を担当。大泉の声質とキー設定が最も自然に噛み合った1曲と言えるかもしれない。譜割りがシンプルなこの曲で、大泉は中高域を非常に伸びやかに発している。無理に高音を張り上げず、余裕を持って声を前方へ流していくため、言葉、息、メロディが自然に繋がる。特に印象的なのは、終盤の転調でのピッチの安定感だ。正確な音をとり、綺麗に転調している。そして、ロングトーンを伸ばした後「ランランラン」と続くパートでは、言葉より“音”そのものが前面に出る。言葉が終わった後でも、音の質量と音程の芯を保ち続けており、ここに大泉の発声の実力が垣間見られる。

大泉 洋「ふわり」Lyric Video

 玉置浩二が作曲を手掛けた「陽炎」(2026年)は、スパニッシュなギター、憂いあるメロディなど、メランコリックな1曲だ。イントロから楽曲の世界観が強く滲むこの曲で、大泉は冒頭の「Oh Oh Oh Oh」から、音のエッジを立てて発音し、ボーカリストとしての存在感を印象付けている。一方で、Aメロの歌い出しからは、言葉のエッジの立たせ方に強弱をつけ、言葉の響きをメロディに沿って変えているのだ。玉置のドラマティックなメロディと、大泉の人間臭い声がぶつかることで独特の哀愁が滲み、そこに曲の説得力が生まれている。

大泉 洋「陽炎」 Music Video

 最後は、5月27日にデジタルリリースされた「みんなのYEAH!!!」。作詞曲をスキマスイッチが手掛けた、ブライトなアップチューンだ。安定した中低音域で歌い出す大泉は、〈優しく慎重に 時には全力で Oh〉というフレーズで〈優しく〉の“しく”、〈慎重に〉の“ちょうに”で、トーンの中で音程を変化させている。これまでの大泉のボーカルアプローチにはあまり見られなかったパターンだが、ここで大泉は、トーンの長さ、ピッチの到達点を同一に揃えることで、この曲の持つリズム感をしっかり踏襲した歌い方を提示してみせた。

 大泉洋は、曲に対して、いつも全力で向き合っている。だからこそ、時に不完全であっても、そこを自身の持ち味として変換できるのだろう。彼は確かな歌唱力を持っているが、それがただ“上手い歌”として記憶されるのではなく、“大泉洋が紡いだ言葉”として心に刻まれるのだ。ここに、無二の説得力が生まれる。俳優があえて演じていない感情、生身の人間性が大泉洋の歌にはいつも存在している。

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