Ms.OOJA、美しい日本語を際立たせる歌い手としての技量 『Ms.ENKA』のボーカル表現を徹底解説
デビュー15周年という節目にリリースされたMs.OOJAの『Ms.ENKA〜OOJAの演歌』。本作は、これまで彼女が積み重ねてきた“歌の扱い方”が、演歌という明確な様式に触れたときにどう変換されるのかーーそのプロセスを提示している作品である。
Ms.OOJAが表現する“演歌特有”の言葉の美しさ
演歌は日本特有の侘び寂び、言葉の響きの美しさをどのように表現するのかが歌手の腕の見せ所である。それを踏まえた上で輝くのが、Ms.OOJAが歌といつも正面から向き合ってきたボーカリストとしての歴史だ。R&Bを軸にしながらも、日本語をどう響かせるか、その精度を、実践の中で高め続けてきた。彼女はデビュー前から、名曲のカバーをライフワークとしてきた。これまでも『WOMAN -Love Song Covers-』シリーズ、『流しのOOJA -VINTAGE SONG COVERS-』シリーズなどの三部作、『Ms.OOJAの、いちばん泣けるドリカム』など、多角的な解釈でカバー作品をリリースしてきた。この一連の作品に共通するのは、Ms.OOJAが、原曲をなぞるのではなく、言葉とメロディを自分の歌として引き受け直すことで、楽曲の中に立ち上がるキャラクターを鮮やかに変換している。そんな彼女が歌うことで、演歌という枠組みにとらわれず、演歌特有の言葉の美しさが表現されている。
『Ms.ENKA』において、まず興味深いのは、Ms.OOJAが“演歌”という様式を自分の中で分解し、自分の表現に置き換えているのが、歌唱から明確に読み取れる点だ。そこを本作の収録曲を追いながら紐解いていきたい。
「愛燦燦」は、言葉を細かく切り分けるように配置していくことで、ひとつひとつの言葉に重みを与えている。音を伸ばす部分でも明確にメロディをなぞり、演歌的なこぶしを、段階的に音を変える手法に変換している。レゲエのリズムを取り入れた斬新なアレンジの「雨の慕情」では、じつに丁寧なボーカルワークを見せていることに加え、1曲を通して声の密度と湿度を一定に保つことで、情念を事実として受け入れた姿が立ち上がっている。原曲が持っていた物語をひとつ推し進めている印象だ。
ジャジーなテイストの中に、演歌の定型的なブレイクが入る「人生いろいろ」では、語尾をあまり伸ばさず早めに切り上げ、その軽快さで語り部のような表現を見せるが、最後のフレーズ〈咲き乱れるの〉で、一音ずつ異なる発声と声音を使い分け、ニュアンスの多彩さを印象付けている。
「冬のリヴィエラ」は、リリース当時からポップス歌謡と呼ばれていた1曲。この曲では、Ms.OOJAの持ち味でもある艶のある歌声、滑らかなつなぎを堪能することができるが、注目してほしいのは、サビの母音のロングトーンで倍音が聴こえ、その倍音が単なる厚みではなく楽曲を開放する方向に作用していることだ。地声からファルセットへの自然な移行も、Ms.OOJAがブラックミュージックをルーツの軸に持っていることがわかる。
繊細なピアノとストリングスから始まる「氷雨」では、少し粘りを帯びた音を後ろに引くような発音で、湿度の高さを明確にしている。この曲の特徴はサビの〈帰りたくない〉で、王道のセオリーとは異なる独特の長さのトーンが連続するところだが、Ms.OOJAは、この部分を破綻なく成立させている。しかし、均一化されたトーンが、アドリブのようなピアノの演奏と絡むと、ジャズのセッションを聴いているような感覚になる。このセッション感も、Ms.OOJAのキャリアに紐づいている重要なファクターだ。
繊細なギターのアルペジオ、ピアノの旋律、そして低音を出さないミニマムなリズムと、オルタナティブR&Bに通ずるトラックで聴かせる「無言坂」は、Aメロ後半、〈一つずつ〉から〈すれ違う 二人〉にかけて何度か現れる「つ」の発音に注目したい。「つ」は母音が「う」でこもる形の音なので、発音しても前に出にくい。Ms.OOJAは、子音の立ち上がりを早め、言葉の輪郭を明確にし、前に放っている。ここに言葉にこだわってきた彼女のルーツが滲む。
「夢芝居」で際立つのは、声に混じるブレスの量のコントロールだ。特に母音に顕著だが、息を多く含んでも言葉の輪郭が崩れない。しっかり発音した後で母音を溶かすように処理しているのがわかる。ザ・演歌とも呼べる原曲のイントロの旋律をそのまま残した「雪國」では、語尾の処理に特徴を見出すことができる。語尾を流すようにして、次の音につなげている。このMs.OOJAのアプローチで、楽曲全体に滑らかなグルーヴが生まれている。
本作の中でも異彩を放っているのが「ベサメムーチョ」だ。この曲でMs.OOJAは、喉の襞に少しひっかかりを作り、若干濁りが混じった声で響かせている。シルクを情念の拳で握った、その皺が歌声になったかのようだ。
ピアノの繊細な和音の中で、そのコード感とは別軸でMs.OOJAが歌い始めるのが「北の宿から」。この曲では、原曲でのこぶしの部分をストレートなトーンとクレッシェンドに変換し、透明感を残す声を聴かせている。またサビの〈未練でしょう〉の弱音である「ん」を、「う」と「ん」の中間のような発音で、じつに綺麗に発しているあたりには、改めて彼女のボーカリストとしての才能を感じた。
スイートソウルを彷彿とさせるイントロをMs.OOJAの中低音域が引き受ける「冬隣」。演歌と昭和歌謡の中間に位置する1曲に、Ms.OOJAが積み重ねてきた技術をゆっくりと露出させていく。メロディと歌詞に合わせて選択された声音、わずかなピッチの揺らぎ、言葉と言葉のつなぎの滑らかさ、ロングトーンの切り上げのバリエーション、ブレスの精密なコントロール……そのすべてが、楽曲を自分の歌として引き受けるための判断だ。
Ms.OOJAは、分解、再解釈、そして取捨選択に、非常に長けたボーカリストであることがわかる。リスペクトという情熱、歌に対する探究心、そして音楽を楽しむという好奇心。そのすべてが詰まっているのが、本作である。
『Ms.ENKA』は、Ms.OOJAが自分の歌の在り方を更新したカバーアルバムだ。
■Ms.OOJA 15周年特設サイト
https://msooja.jp/page/15th/
■リリース情報
『Ms.ENKA~OOJA の演歌~』
2026年4月22日(水)リリース
購入リンク:https://msooja.lnk.to/MSENKA_CD
<通常盤>
価格:3,520円(税込)
品番:UMCK-1826(CD Only)
<CD>(曲順未定)※通常盤・UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤共通
・愛燦燦 / 美空ひばり(1986)
・雨の慕情 / 八代亜紀(1980)
・北の宿から / 都はるみ(1975)
・氷雨 / 日野美歌(1982)
・人生いろいろ / 島倉千代子(1987)
・冬隣 / ちあきなおみ(1988)
・冬のリヴィエラ / 森進一(1982)
・べサメ・ムーチョ / 桂銀淑(1940)
・無言坂 / 香西かおり(1993)
・雪國 / 吉幾三(1986)
・夢芝居 / 梅沢富美男(1982)
<UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤>
価格:13,200円(税込)
品番:PDCS-194
2CD+Blu-ray+GOODS
仕様:見開きLPサイズジャケット仕様
※商品は数量限定。
UNIVERSAL MUSIC STORE 限定盤 Disc-2 ライブ CD
2025.8.8(fri)Billboard Live Summer Tour 2025 @Billboard Live YOKOHAMA
1. 夏をあきらめて
2. 恋人も濡れる街角
3. Last Night
4. Purple Haze
5. 優しい雨
6. まだ知らないストーリー
7. Ti Amo
8. 最後の雨
9. 雨の慕情
10. 30
11. 40
12. Be...
13. 最終回
UNIVERSAL MUSIC STORE 限定盤 Disc-3 Blu-ray
2025.6.22(sun)流しのOOJA 総集編 TOUR Final @明治座公演
1.異邦人
2.ルビーの指輪
3.ワインレッドの心
4.恋人も濡れる街角
5.真夜中のドア
6.プラスティック・ラブ
7.みずいろの雨
8.勝手にしやがれ
9.六本木純情派
10.飾りじゃないのよ涙は
11.フライディ・チャイナタウン
12.Woman
13.恋におちて
14.つぐない
15.駅
16.木枯らしに抱かれて
17.メモリーグラス
18.ダンシング・オールナイト
19.青春の影
20.恋
21.瑠璃色の地球
22.さよならの向う側
<UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤 GOODS>
・Ms.OOJA オリジナルアクリルスタンド
・Ms.ENKA オリジナルバンダナ
■ライブ情報
『Ms.OOJA 明治座公演2026』
会場:東京明治座
日時:2026年6月7日(日)
開場:17:00/開演:18:00
『Ms.OOJA OFFICIAL FANCLUB EVENT ~おじゃファミ会 vol.5~』
<全曲リクエストライブ>
来場の方々からMs.OOJAがステージ上で抽選をして、当選された方がMs.OOJAに歌って欲しい曲を(Ms.OOJA名義でリリースしている曲に限る。)リクエスト頂き、その場で歌う。おじゃファミ会Liveだけの特別企画です。
2025年12月7日(日) 愛知・THE BOTTOM LINE
2025年12/14日(日)神奈川・横浜赤レンガホール(横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール)
w/エアトリ presents 毎日がクリスマス 2025
2026年1月11日(日)北海道・ジャスマックプラザ ザナドゥ
2026年1月24日(日)福岡・ROOMS
2026年1月25日(日)大阪・UMEDA CLUB QUATTRO
詳細:https://msooja.jp
■関連リンク
Ms.OOJA オフィシャルHP https://msooja.jp
Ms.OOJA オフィシャルYouTube Channel https://www.youtube.com/user/MsOOJAChannel
Ms.OOJA オフィシャル X @msooja https://x.com/msooja
Ms.OOJA オフィシャルInstagram @msoojafaith https://www.instagram.com/msoojafaith/
Ms.OOJA オフィシャルLINE @msooja