サンボマスター、名曲連打で“全員優勝”! 25周年にしてキャリアハイ更新――泣いて笑って叫んだ自身最大規模ワンマン

「よく、サンボマスターの原点はライブハウスです、なんて言いますけど、サンボマスターの原点は、ライブハウスにも行けず、リハーサルスタジオにもまともに入れず、東京都豊島区要町にあったアパートでね、『今日なんのCD買って来たの?』なんつって集まってたのが、サンボマスターの原点なんですね。そこにね、俺たちだけじゃなくて、いろんな人が出たり入ったり。僕の家は、鍵を紛失してからずっと開けっ放しでしたから。なんか今日は、こんなにたくさんの人が、そこに訪ねて来てくれた気持ちになりました。僕のところに寄ってくれて、ありがとうございます」
アンコールのMCで近藤洋一(ベースとコーラス)が言ったこの言葉が、この日のすべてを表しているように感じた。同じステージの上に立っている山口隆(唄とギター)にとっても、そうだったようで、それを受けて彼はこう言った。
「俺はさ、もともと、コンちゃんが言った、あそこにずっといたいんだよね。あんな日がずっと続けばいいなって……だから、コンちゃん、いいこと言ったね。なんでライブってこんなに居心地いいのかな、なんでこんなに自分を本気で出せるのかな、と思ったら、そういうことなんだね。みんな要町に来てたんだね……そう思ってたよ」

『サンボマスター2025年結成25周年全員優勝記念事業「全員優勝VICTORY25」』と銘打って行ってきたさまざまな活動の中の三度目のツアー、『全員優勝パレードツアー〜全員優勝決定シリーズ〜』のファイナル、4月29日のKアリーナ横浜公演。……の、はずだったが、ご存知のとおり、山口の左手指の骨折で延期になった沖縄と神戸の振替公演が残っており、ゆえにこのレポもあまりネタバレできないのだが、それはともかく。
まず、もう、圧巻だった。ホール内のアリーナ部分、ロアースタンド、ミドルスタンド、アッパースタンド、つまり1階〜4階分がすべてオーディエンスでびっしり埋まったKアリーナ横浜の光景が。この日の動員数は約16,000人だったそうだ。過去のサンボマスターのワンマンで最大である。

2006年6月18日の初の日比谷野音。2007年9月1日の両国国技館。2017年12月3日の初の日本武道館。2023年11月19日の横浜アリーナ。現在のこの「25周年の活動」のことを発表した日である、2024年10月25日の二度目の日本武道館。という、関東圏の、サンボマスターにとって節目となる大規模会場でのワンマンは、すべて観てきたが、そのどれよりもすごかった。Kアリーナの、言わば“人数がそのままパワーになっている空気感”が。

3人がステージに出る前に、歴代の彼らの写真を画面に映しつつ、その歩みをナレーションで紹介する、というオープニング演出があったが、その中の「彼らのピークは今。今が全盛期で、今が常に最新」という言葉どおりだった。2024年10月25日の二度目の日本武道館の時、そのツアーが全カ所ソールドアウトしたことを受けて、僕はライブレポで「サンボマスターのキャリアハイは今だ」と書いたが、嘘になってしまった。彼らは今日ここで、それをさらに更新したので。
でも、人の多さなら、これ以上の人数の前に立つサンボマスター、何度も観たことあるよな。野外の巨大フェスのメインステージとか。じゃあ、この“人数がそのままパワー感”は、前とは何が違うんだろう。お客さんみんながサンボマスターだけを観に来ているんだから、そりゃあフェスの時とは違うだろうけど……などと、この光景に圧倒されつつ考えながら、3時間以上にわたるライブを観ていたので、最後の最後に出た近藤のこの言葉で、何かとても、腑に落ちた気がしたのだった。
「今は社会と隔絶してるっていう意識があったけど、でもここで鳴ってることはものすごいヒップなことだっていう思いはすごかったなあ」(※1)
のちに山口が、当時を振り返ってそう語った、結成前の、要町のアパートでの時代。その「ものすごいヒップなこと」が、25年かけて16,000人規模になった。社会と隔絶してる人たちの部屋に16,000人が集まった。つまりそれはもう、新しい社会になった、ということなのだと思う。



3人で高田馬場のGATEWAY(リハーサルスタジオ)で音を出した時(曲ですらない爆音だったという)、「最高だぜ!」となったあの夜の自分に、27年経つとおまえは、16,000人のみんなの前で……と、自分に伝えたい──という言い方で、木内泰史(ドラムスとコーラス)はその“新しい社会”を、今ここで形作っているオーディエンスに、感謝を伝えた。「最高の夜です。みんなで喜んで、泣いて、笑って、叫んで、踊って。みんなありがとう。30年も40年も、みんなで最高の景色を見に行きませんか? 今日のことを俺は絶対忘れないよ!」。

「全員優勝」コールを16,000人と繰り広げたあと、山口の雄叫びから曲に入り、後半では山口抜き(=オーディエンスだけ)の圧倒的なボリュームの「愛と平和!」コールが響いた、「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」。「君はいたほうがいいよ」というメッセージを、声で、言葉で、メロディで、ギターとベースとドラムで、つまり全身全霊でオーディエンスと共有した「Future is Yours」。後半のここぞというタイミングでぶちかまされ、この日何度も興奮のピークに達してきたオーディエンスをさらにヒートさせた「できっこないを やらなくちゃ」。おなじみになった画面の巨大手拍子に合わせて、大きなハンドクラップでKアリーナが埋まった「花束」──。
そんなふうに、名曲、ヒット曲、代表曲の連打で、歓喜や興奮や感涙が絶え間なく続いていったこの日のライブの中にあって、特に重要なキーになっていたのは、前回の大規模会場ライブ、2024年10月25日の二度目の日本武道館の時にはまだ存在しなかった、新しい曲たちだった。その日本武道館の時も、「稲妻」や「自分自身」や「Future is Yours」といった(当時においては)新しい曲たちが、大事な役割を果たしていたのと同じように。

今のところの最新曲である「またあえるかな」は、ステージ後方の画面に、福島県内の59市町村で撮影された、あのMVが大映しになる中で演奏され、歌われた。「俺たちはおまえの呪いを解きに来たんだ、おまえの呪いが解けたら、俺の呪いも解いてくれ(大意)」というMCから入った「とまどうほどに照らしてくれ」も、全編が小山ゆうじろうが描き下ろしたマンガでできている、あのMVと共に届けられた。〈いくさをとめてよ ラブマン〉で始まる、二番目に新しい曲「We Need Love & Peace」では、山口がギターのフレーズを奏で、歌ってから、「We Need Love & Peace!」と叫び、曲に入った。

どの曲も、これまでのサンボマスターの曲と同じように、普遍的なメッセージを歌っているが、どの曲も、これまでのサンボマスターの曲にはなかった手つきでメロディが書かれ、アレンジが施され、演奏され、歌われている、それがライブという場になるとより際立ってこちらに届く──そういう感じがした。この25周年のプロジェクトの途中で、次のサンボマスターがもう始まっている、ということなのだと思う。
この2年がかりのプロジェクトが(あと2本の振替公演で)終わったあとも、各地のフェス・イベントへの出演や、7〜8月のツアー『ロックンロール デスティネーション in とうほく「from ふくしま for ふくしま」』など、サンボマスターは、歩みを止めずに動き続けていく。

※1:『サンボマスターは世界を変える』(2006年/ロッキング・オン刊)より


























