香取慎吾&出川哲朗、共通する「テレビに育てられた」という想い 『しんごの芽』で目指すカンペでは生まれない面白さ

「僕、テレビに育ててもらったんで。テレビがより良いものになるために、ここで生まれた企画がほかの番組で使われたら本望です」

 香取慎吾がMCを務めるレギュラー番組『しんごの芽』(読売テレビ)から、企画のタネがひとつ、芽を出した。番組が始まって約3カ月。くるま(令和ロマン)、小峠英二(バイきんぐ)、カズレーザー(メイプル超合金)をマンスリーMCに迎えながら、さまざまなテレビ企画のタネを検証し、その可能性を探ってきた。

 なかでも、短い時間ながらもほっこりとさせられた「抱きしめる」という企画が、朝の新番組『テッパン朝ライブ じゅーっと!』(読売テレビ)のレギュラーミニ企画として採用されたのだ。その報せに「すごーい!」と大喜びした香取。だが、「すごいけど、バカなの!?  企画取られちゃってんじゃん!」とツッコんだのは、4月のマンスリーMCを務めた出川哲朗だ。そんな出川に対して香取が語ったのが、冒頭の言葉だった。

 香取と出川は、この1カ月を通じて「テレビに育てられた」という趣旨の言葉を何回も発してきた。そして同時に、そのテレビが“オワコン”、“オールドメディア”と言われている現状への危機感と違和感。自分たちを育ててくれたテレビは「全然終わってない!」「テレビが大好き」――そんなふたりの貪欲な熱意が、『しんごの芽』という番組のチャレンジ感を高めているように見えた。

 こうした「テレビをより良くしたい」という姿勢は、番組の制作スタイルにも表れている。TVerで配信されている未公開動画によると、この番組はスタッフが出演者に向けて台詞や進行の指示を伝える“カンペ”がほとんどない。香取もつい最近気づいた様子で、出川に伝えると「あ、本当だ。珍しいね、今の番組で。素晴らしい!」と拍手してみせる。

 そのリアクションに香取が「素晴らしいことですか?」と問いかけると、出川は「本来こうだと思いますよ。最近、もうカンペ出すぎて、MCの方がカンペ読んでるだけの番組がたまにあるから。それ、どうなんだろうなって。『じゃ、誰でもいいじゃん』とか思っちゃうし。自分の言葉でしゃべりたいと思ってしまうから」と思いの丈を語った。

 たしかに、確実に及第点を狙うためにはカンペは有効な手段なのだろう。本番で頭が真っ白になってしまう人に対しては、そのサポートは心強いもの。しかし、バラエティは誰かが狙った展開をそのとおりやることだけが正解ではない。とっさに出たものに、誰もが予想しなかった心の動きが宿ることもある。

 この日『しんごの芽』のセットが本拠地の大阪から、香取と出川の出身地である横浜まで移動されたのも、ふたりをより開放的にするための下地だった。神奈川の県民ホールでライブをしたあと、夜中にメンバーだけで山下公園に繰り出したこと。ジャンケンで負けたら踊る罰ゲームをしたこと。そこで、草彅剛がひとりバク転をしていた……というヤンチャ盛りだったSMAPのエピソードは、目の前に広がる横浜のシチュエーションがあったからこそ引き出されたものだろう。

 VTRでは香取と出川にとって旧友のキャイ〜ンが登場したことも、さらに本音を吐露しやすい場を作っていった。加えて、1998年1月放送の『香取慎吾の特上!天声慎吾』(日本テレビ系)の懐かしい映像が流れると、「本気だからこそ出てくる」表情、フレーズがあったと語る。視聴者としても、何が見られるかわからない。そして、出演者としても自分から何が出てくるかわからない。そんな“わからない”を楽しめるテレビを、香取は再び自らの冠番組を通じて届けたいと思っているのではないか。

 一方で、カンペなしに、その“わからない”に挑むということは、落第点に終わる可能性も大いにある。「しゃべり続ける」という企画のタネに挑んだ4月18日放送回は、出川が「オールカットで」と頼み込んだ問題回。外からセットまでの50メートルをしゃべり続けたのだが、これがハプニングも笑いも“なにも起こらない”リポートとなってしまった。

 「うまくいく企画だけを放送すればいいってことでもない。これはダメだってことをちゃんと言わないと。『やっぱりテレビはおもしろくなくなった』って言われますよ」と断固としてオンエアを譲らない香取。「言われるでしょ。だから、これをオンエアしないほうがいい」と食い下がる出川に、香取が「隠蔽だ! ダメですよ、そんなの!」とつめよる。すると、「この回丸ごと隠蔽したほうがいい」とパワーワードが飛び出し、思わず香取も破顔。これこそ、カンペでは決して生まれないフレーズだ。

 「肝が座ってるのか、本物のバカなのか」。そう出川が表現したように、エンターテインメントにおいて大事なのは、この突き抜けた覚悟なのだろう。『しんごの芽』という番組から蒔かれるタネは、これからのテレビを面白くしようとする人たちの勇気そのものと言えるのかもしれない。

 同じ時代にテレビで育った“戦友”と呼べる出川から、5月のマンスリーMC(5月9日放送回から)は新世代を代表するやす子へとバトンタッチされる。この新たなタッグがカンペなしで、どんなトークを見せてくれるのか。「やっぱりテレビは面白い」――そう言われる未来が、ここから芽吹いていくのかもしれない。

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