櫻坂46、“再生”からの5年間を肯定するステージ 初のMUFGスタジアム(国立競技場)に刻んだ熱狂と決意表明

 ライブ中盤には、武元唯衣が振り付けを担当した大掛かりなダンストラックも用意。ここでは2チームに分かれたメンバーが鏡合わせのダンスを披露したり、椅子や扉、手持ち照明を用いたダンスなど、一人ひとりの個性にスポットを当てた演出もフィーチャーされており、終盤には藤吉と山﨑天に前方へと導かれた武元がソロダンスを見せる場面も用意。卒業発表直前に行った筆者とのインタビューで、彼女は2025年末の『13th Single BACKS LIVE!!』で自身のセンター曲「油を注せ!」間奏パートの振り付けを担当したことについて、「私もいつかそういうこと(ダンスの振り付け)はやってみたかった」と自身の夢が叶ったことを公言していたが(※1)、5周年という節目、かつMUFGスタジアムというグループ史上最大規模の公演で長尺かつ大掛かりな振り付けを任されたことは、卒業を控えた武元へスタッフからのはなむけだったのかもしれない。こういう実績を残したことは、間違いなく後輩たちへの刺激にも繋がることだろう。


 前日の公演でグループの副キャプテンに就任したことが告げられた山﨑が、いつも以上に希望に満ち溢れた表情と歌声を届ける「五月雨よ」、村井優の表現力の奥深さが十分に味わえる「Unhappy birthday構文」、昨年末の『13th Single BACKS LIVE!!』を機に一皮剥けた感のある谷口愛季が不適な笑みを浮かべる「I will be」、この曲から櫻坂46の快進撃が始まったと言っても過言ではない「Start over!」など、ライブ後半では人気曲を畳み掛けた後半戦、武元唯衣へのはなむけを思わせる演出もるように連発。ここまでやり尽くされると、一体クライマックスにどんな曲を用意するのだろうと心配になったが、本編ラストに控えていたのはグループの“はじまりのうた”である「Nobody's fault」だった。まだ櫻坂46が何者でもない、何色にも染まっていなかった頃に与えられたこの曲を、当時を思わせる白い衣装を着た二期生から四期生までが勢揃いする中、センターの森田を中心に凛とした表情で、美しさと逞しさを併せ持つパフォーマンスを届けていく。原曲からより壮大さが増したアレンジが加わったこともあり、そのスケールの大きさはMUFGスタジアムという会場にもぴったりであると同時に、戦うこと、前進することを諦めなかった今の彼女たちが歌うことで説得力も段違いであることが伝わる。正直、この曲でこんなに胸を打たれる日が来るなんて、欅坂46のラストライブのエンディングでサプライズ披露されたときには想像もできなかった。

 アンコールのMCで、森田は「この国立が決まったときから、今のメンバー全員で『Nobody's fault』をできたらいいなと思っていました。5年前、どういうグループになっていくかわからないタイミングに、(破壊と再生の)2つの道があったと思うんです。一度壊してしまうこともできたけど、今日この景色を見た時に、初めて“再生”を選んでよかったなと思いました」と涙ながらに語ったが、1stシングルのセンターにはじまり、2ndシングル「BAN」や7thシングル「承認欲求」、11thシングル「UDAGAWA GENERATION」など多数の楽曲で矢面に立ってきた彼女にとって、最初の選択が本当に正しかったのか……“櫻坂46ファースト”で活動と向き合ってきたこの5年間は、自問自答の連続だったのだろう。でも、今目の前にいるBuddiesが彼女の選択を肯定している。森田はここで初めて、ずっと背負ってきた重荷を少しだけ下ろすことができたのかもしれない。

 だからこそ、最後の最後に披露された「櫻坂の詩」はいつも以上に沁みるものがあったし、今までで一番温かな気持ちになることができた。曲中、キャプテンの松田は「櫻坂46は夢をひとつに選びません。私は欲張りでいたいと思っています。メンバーの夢とBuddiesの夢を叶えられるグループでありたいです。そして、Buddiesに『櫻坂46と出会えてよかった』と思ってもらいたいです。たくさんのアイドルがいる中で、私たち櫻坂46に出会ってくれて、そして好きになってくれたことを奇跡だと思っています。皆さんと出会えたから、しっかりとその責任を果たしたいと思っています。櫻坂46を応援していることを誇りに思ってもらえるように、絶対に皆さんを幸せにします。6年目の櫻坂46もどうぞよろしくお願いします!」と力強く宣言したが、そんな彼女の言葉に耳を傾けながら、優しい視線を向けるメンバーたちの姿が今でも目に焼き付いている。

 ライブのエンディングには、6月10日にグループ初の両A面となる15thシングル『Lonesome rabbit / What's “KAZOKU”?』のリリースや7月から始まる6都市12公演にわたる全国アリーナツアーの開催、11月14日、15日に千葉・ZOZOマリンスタジアムでの『6th YEAR ANNIVERSARY LIVE』開催、2027年に初のアジアツアー実施という驚きの情報も解禁された。これはゴールじゃない……最後にそうダメ押しして終えるあたりも、実に櫻坂46らしい。

 約3時間という長丁場の記念碑的公演は、櫻坂46の5年間の総決算というだけでなく、この先も道なき道を進み続けながら明るい未来へと繋いでいくという決意表明の場でもあった。5年前には誰も想像できなかった未来を築き上げた彼女たちは、ここからも変化を恐れることなく、我々の想像を絶する輝かしい日々を刻んでいくことだろう。さらなるワクワクとドキドキに期待しながら、次のアクションを待ちたい。

※1:『日経エンタテインメント!櫻坂46スペシャル2026』(日経BP)

セットリスト
00. Overture
01. The growing up train
02. 承認欲求
03. 自業自得
04. コンビナート 〜 ドローン旋回中
05. キスが苦い
06. ドライフルーツ
07. 青空が見えるまで
08. 桜月
09. マモリビト
10. 光源
11. 静寂の暴力
12. Addiction
13. なぜ 恋をして来なかったんだろう?
14. 何歳の頃に戻りたいのか?
15. マンホールの蓋の上
16. 五月雨よ
17. Unhappy birthday構文
18. 摩擦係数
19. I will be
20. BAN
21. Start over!
22. Nobody's fault

アンコール
EN1. Alter ego 〜 夏の近道 〜 それが愛なのね
EN2. 櫻坂の詩

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