『超いきものがかりフェス』Day2:“繋がり”が生んだ感動 ゆず、鈴木雅之、TOMOO……世代を越えた仲間と奏でた20周年の喜び

 最後のゲストアーティスト・ゆずは、北川悠仁と岩沢厚治の盤石のハーモニーで、会場をあっという間に引き込んだ。ゆずは、いきものがかりのルーツとも言えるアーティストだ。いきものがかりはゆずに憧れて路上ライブを始め、「夏色」などの楽曲をよくカバーしていた。そんな彼らが見せたのは、後輩への愛を込めた全力ステージング。かつて音楽番組でいきものがかりと一緒に歌った「サヨナラバス」、吉岡がソロアルバム『うたいろ』でカバーした「少年」、『いきものがかり meets』収録のゆず版「YELL」などを盛り込んだセットリストを披露した。北川がいきものがかりに「そんなに遠くないところでいつも見てた。よーく頑張った!」と語り掛け、「いつも腰が低い2人だけど、今日は胸を張ってほしい。自分たちを讃えてほしい。言葉じゃなくてこの曲で、君たちの20年を讃えたいと思います」と言葉を添えて「虹」を届けた場面も感動的だった。そして「夏色」では北川が、吉岡のタンバリンを鳴らしながら会場を駆け回った。なんて粋な先輩だろう。袖で観ていたであろう吉岡と水野は、堪らない気持ちになったのではないだろうか。ラストは「栄光の架橋」で大合唱を起こし、いきものがかりへバトンを繋いだ。

ゆず(写真=白重聡一郎)

 いきものがかりの音楽に影響を受けながらここまでやってきたとまっすぐに語る後輩。労いの言葉をかけてくれたり、大きな背中を見せてくれたりする先輩。流れゆく時代をともに駆け抜けた同期。そしていきものがかりが仲間に囲まれ、祝われる様子を温かく見守るファン。様々な人の想いを受け止めながら、吉岡と水野は2日間を締めくくるステージに臨んだ。

 1曲目は「コイスルオトメ」。1番は吉岡の歌と水野の鍵盤の二重奏、2番以降はバンドとともにロックに鳴らすアレンジで、思いの丈を楽曲に乗せた。特別な場面ばかりだった2日間も終盤に差し掛かり、水野と吉岡は「信じられないことがたくさん起きてて」「何? 何だったの!?」とまだ言葉にしきれない様子。そして“信じられないこと”はまだ尽きない。初日に続き、この日のいきものがかりのステージでもゲストとの夢の共演があった。

いきものがかり(写真=谷本将典)

 まずは、TOMOOを迎えて「茜色の約束」をコラボ。目を合わせ、時に笑みをこぼしながら歌声を重ねる吉岡とTOMOOの姿が微笑ましく、2人の声は心地よく溶け合っていた。続いて、鈴木雅之と「帰りたくなったよ」をコラボ。鈴木の芳醇な歌声によって楽曲がロマンティックに生まれ変わる様は鮮烈で、アウトロでは鈴木にエスコートされるかのように、吉岡も楽器の音にスキャットを絡ませた。ゲストに刺激されてボーカリストとしてまた新たな表情を見せる吉岡の姿と、驚きと嬉しさが入り混じったような表情で隣に立つ水野の姿が目に焼きついた。

 2人は「すごかったね……」「こんな日がくるんだね……」と余韻に浸りながらも、「気まぐれロマンティック」「ブルーバード」といったカラフルなポップナンバーで観客を笑顔にさせていく。吉岡がアリーナに降りて、最前列の観客とハイタッチをしながら歌った「キミがいる」は幸福感でいっぱいだ。夢のようでいて、確かな20年があったからこその景色――それをそのまま歌にするように、吉岡は「Ah 夢みたいで 夢じゃないよ みんながいる」と歌詞を変えて届けた。

 「じょいふる」の演奏中に客席通路を通り、アリーナ後方に設けられたセンターステージへ移動した吉岡と水野。熱気溢れる観客に囲まれた2人は、ファンに言葉を投げかけるタイミングが被っても構わず、お互いの発言に笑いながら、完全に振り切ったテンションでこの瞬間を謳歌した。最終的に、吉岡が早口で1から20までをカウントして、楽曲を締めくくるが、自分でやったことに対して「意味わかんない(笑)」と笑う吉岡。その様子を見て、「改めて思ったんだけど、あなた、楽しい人だね」と水野。「あなたも、〈ぴぷぺぽ ぱぴぷぺ〉って歌詞、真顔で提出して、面白い人だね」と吉岡。

吉岡聖恵(いきものがかり/写真=谷本将典)

 「カンペと全然違うこと喋ってる(笑)。でも、いいんだよ」と、MCでは思い出を振り返った。水野とオリジナルメンバーの山下穂尊が「吉岡さんを誘うのはどうだろう?」と話していたら、ちょうど吉岡からメールが来て驚いたというバスの中での出来事。3月15日0時0分、メジャーデビューの瞬間をスタッフと紙コップで乾杯して迎えたこと。水野は「いろんな出会いと別れがあって、いろんな方々に支えられて、そんなに簡単に辿り着けるここではなかったと思っています。本当にありがとうございます」とこれまでの道のりを愛おしみながら、感謝を伝える。吉岡は「20年のその先に行くので、みなさん、ついてきてくれますか? これからもよろしくお願いします。今日は本当に、どうもありがとう」と未来を見据えて言葉を贈る。そして、リリース以来ライブで歌い続けてきた代表曲「ありがとう」へと繋げた。

 時代を彩るヒット曲を立て続けに世に放ち、瞬く間にJ-POPシーンを駆け上がっていったいきものがかり。猛スピードで駆け抜けた最初の10年では、3人で始めた青春物語が“みんなのいきものがかり”へと形を変えていく中で、自分たちを見失いそうになることもあった。次の10年では、放牧(活動休止)、独立、コロナ禍、3人から2人へ……と様々な変化があった。そしてどんな時も変わらず、リスナーと直接顔を合わせられるライブの場は、彼らにとって喜びの手触りを感じられる場所であり続けた。それは20年経った今も変わらない。吉岡は、時には胸に手を当てながら、時には手のひらで観客を指しながら、感謝の気持ちを一人ひとりに手渡すように「ありがとう」を歌う。水野は、目が合った観客にぺこりとお辞儀したり、言葉を交わしたりしながらコミュニケーションをとっている。そのどれもが、彼らにとっては特別なことではない。20年間、いろいろなライブで、ずっとそうしてきたのだと思うと、胸に迫るものがあった。

水野良樹(いきものがかり/写真=谷本将典)

 本編ラストに選ばれたのは「タユムコトナキナガレノナカデ」だった。メジャー1stアルバム『桜咲く街物語』の収録曲で、山下が作詞作曲を手掛けたバラード。吉岡のみならず、水野も歌詞を口ずさみながらギターを鳴らしていた。メジャーデビュー当時の心境とも重なるこの曲を、2人は今、1万人の前で歌っている。20年の様々な瞬間で〈行け〉と世界に放った歌は、様々な人の元へ届き、芽吹き、それぞれの場所で花を咲かせた。このフェスに集ったゲストたちも、客席を埋めるファンたちも、その花のひとつだ。たゆまぬ時の流れの中で、歌い続けてきたからこそ見えた景色がいきものがかりの20周年を温かく彩っていた。

 ゲストアーティストとともに記念撮影を行ったアンコール。共演者を送り出し、2人だけになると、水野が「20年ありがとう」と手を差し出し、吉岡が「こちらこそ」と応じて握手を交わした。そこで何かのスイッチが入ったのか、「お前は歌手だから歌う時は泣くなって、拾ってくれたレコード会社の社長が言ってたんです……」と言いながらも涙する吉岡。最後は「路上ライブしましょう」と水野が切りだし、デビュー曲「SAKURA」を2人で届けたのだった。

 いきものがかりは4月18日より、47都道府県をまわるツアー『いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2026-2027 超全国あんぎゃー!! 〜47都道府県ぐるっと日本一周しまSHOW!!〜』に出発する。全国のファンに歌を届ける日々が、また始まっていく。

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