KOTORI「俺たちの音楽ロードは間違ってなかった」 360度熱狂に包まれた“伝説のステージ”に刻むsmall indies tableとの10年

 10年間所属していたsmall indies tableを今月いっぱいで卒業するため、レーベル主宰の鈴木健太郎氏との思い出のステージを再現した――それがKOTORIが3月18日に神奈川・CLUB CITTA'にて開催したワンマンライブ『KOTORI & small indies table pre. “RIOT”』だ。その心の内を、横山優也(Vo/Gt)はアンコールまで明かさなかったが、当日の0時に〈小さな机から今飛び立つ時/RIOT〉と歌う新曲「RIOT」を配信リリースしていたこともあり、集まった観客にはその想いが自然と伝わっていた。さらにセットリストのほとんどが2023年リリースの『Good Luck』までの楽曲で構成されていたこともあり、終始エモーショナルで、いつも以上に愛に満ちたライブとなった。

 ライブのサブタイトルには『360° STAGE ONEMAN SHOW』とつけられており、実際に会場に入ると、フロア内にステージが設置されていた。そもそもタイトルの「RIOT」とは、幕張メッセで行われた『REDLINE ALL THE BEST 2019』および『REDLINE ALL THE FINAL』にてKOTORIが、360度を観客に囲まれた「RIOT STAGE」に出演したことに由来していることは一目瞭然だった。『REDLINE』の「RIOT STAGE」はいずれもすさまじい熱狂に包まれ、伝説のステージとなった。それをワンマンライブでやってしまおうというのが今回の『KOTORI & small indies table pre. “RIOT”』だ。

 フロアには、small indies tableのロゴが入ったKOTORIのTシャツを着ている人もいれば、仕事帰りであろうスーツ姿の人も。通常、ステージとなっているエリアは「STAGE VIEW SEAT」として、指定席かつ飲み放題の座席が用意され、酒を片手に開演を待つ人も。それぞれが、フロアに用意された伝説が生まれるであろうステージを、じっと見つめていた。

 2階席から階段を降りてくる形でステージに登場したKOTORI。横山がこの日のステージについて「このステージは別名『伝説のステージ』『助け合いステージ』。嫌われるより、仲間を作って帰ろう」と説明していると、途中から鳴り始めた上坂仁志(Gt/Cho)によるギターのアルペジオはシームレスに「RED」のイントロへと移り大歓声が上がる。そして曲が始まると、「今日は全部歌えるやつしかいないよね?」との横山の声に呼応するように、さっそく大きな歌声が広がった。この大きな歌声、「大合唱」と称してしまいたくなるが、KOTORIのライブで起きるシンガロングは、声を合わせているわけではない。一人ひとりが、KOTORIの楽曲を自分の人生や感情と重ね合わせて、自分の歌として歌っている。それが重なり、会場いっぱいに一人ひとりの感情が溢れ出すのだ。それは大きなうねりとなり、1曲目にしてすでにクライマックスのような感動が生まれた。

横山優也(Vo/Gt)
上坂仁志(Gt/Cho)

 「俺たちの思い出の曲を」との前置きから始まった「19歳」は、KOTORIがsmall indies tableに所属するきっかけになった楽曲。もちろん、全箇所で多くの歌声が上がる。さらに〈僕らの時代だ〉と歌う「1995」、〈離れていても歌を歌って/また会えたなら酒を交わそう/それだけでいいから〉とKOTORIというバンドを紹介するような一節が印象的な「unity」と、2ndアルバムまでの楽曲を間髪入れずに続けていく。全曲、イントロで歓声が上がり、シンガロングで曲が進む。フロアの照明も明るくなり、照らされたフロアにははち切れんばかりの笑顔があふれていた。

佐藤知己(Ba)

 横山は「今日めちゃめちゃ曲やるから、ペース配分しっかりして……って自分に言い聞かせてる」と言っていたが、ステージもフロアもペース配分なんてできるはずもなく。「昔の曲ばっかりやります。だからみんなマジ歌って」と横山が宣言してから〈東京にやってきました〉と歌い始めた「ラッキーストライク」では、多くの声が重なった。さらに。2本のギターのアンサンブルが心地よい「ドラマ」、歌い出しで悲鳴のような歓声が上がった「涙があふれそう」、出会いと別れの季節を歌った「春一番」「シャンプー」と、名曲たちが次々と放たれていく。どの曲が来てもドラマチックな歌詞とグッドメロディに胸を打たれてしまう。

 彼らは「センターステージでいい曲もやってみたい」と思っていたという。ということで、中盤には“いい曲”のブロックが。ドラムのカウントからギター2本と佐藤知己(Ba)のベースのアンサンブルが柔らかに立ち昇っていく。「トーキョーナイトダイブ」だ。先ほどまでダイバーが続出していたフロアにダイバーは発生せず、観客は小気味よいサウンドに身を預けじっとステージを見つめる。横山が今東京に住んでいる人の目線で綴った「東京」では上坂の紡ぐアルペジオと佐藤の支えるビートが寂寞を映し出し、横山は優しい歌声で自身が過ごしてきた日々を形作っていった。

 「僕の中では、今日は一旦最終回だと思っている」と告げてから始まったブロックで、彼らのエモーションが爆発。最終回に必要な曲として選曲された「I'll Never Walk Alone」では、“一旦の最終回”の会場に〈ありがとうはまだ言えない/だって今はまだ長い道の途中〉〈僕はまた前に進めるだろう〉との想いが響く。「REVIVAL」では上坂がギターを高く掲げ、横山はぐるりとステージおよびフロアを見渡し、佐藤はそんな横山を温かく見つめている。そして〈君はもう一人でどこまでも行ける〉と歌う「羽」が、最終回のフィナーレを感動的に彩った。

 ここまで歌ったところで横山は「俺たちの音楽ロードは間違ってなかったな。この景色を見て改めて確信しました」と声を弾ませる。そして「ここからはだんだんエンドロールが流れ出していきます。俺らの音楽とともに生活してくれてるみんなも主人公だと思っているので、エンドロールにみんなの名前も絶対に入れるから。そんなみんなのエンドロールにも俺たちがいればいいな。主題歌は俺たち、主演は君。サウンドトラックもやる」と頼もしく笑うと、自身やKOTORIについて歌っていたセットリストは、“みんなの歌”へとシフトチェンジ。「4号線」「高鳴る胸に鐘をならせ」「ジャズマスター」がエンドロールを彩っていく。もちろん全曲全フレーズにシンガロングが重なる。「素晴らしい世界」では、ステージ上空に設置されたカメラに向かってピースサインをしたり、クラウドサーフでSTAGE VIEW SEATまで進んだりと、むしろ横山が歌わなかったくらいだ。その代わり、観客それぞれが“自分の歌”だと言わんばかりに声を枯らして歌っていた。

 コロナ禍の2020年にsmall indies tableが制作したコンピレーションアルバム『FAM』収録曲「We Are The Future」の前には、横山が「今日はかなり理想に近い景色が見られています。バンドやっててよかったなと。みんなのことを思い浮かべて曲を作ってよかったなと思います」と、この日の熱狂にあたたかな眼差しを向ける。そして「自分で作っておきながら、自分で救われた」という同曲が始まると、真っ暗だったフロアが少しずつ照らされ、目の前に広がった横山の理想の景色に〈We are the music./We are the future.〉という歌声がどこまでも響いていた。

 「Masterpiece」「Dive into your Dreams」「光」を駆け抜けたあと、「本編終わります。アンコールやります」の一言でアンコールへ。メンバーはステージに立っているが、フロアからはきちんと「ワンモー」の声が上がる。こんなところでも、これまで培ってきたフロアとステージの信頼関係を感じてしまった。ここで、ようやく横山は、small indies tableを3月いっぱいで卒業することを説明。同時に『"12" Tour』という12周年ツアーを開催することも発表した。「両国国技館で『RIOT』というイベントをやりたい。満員にして鈴木さんに見せたい」と、今後も羽ばたくことを約束すると、鈴木氏をステージの後ろに招き、このステージで演奏したかったという鈴木氏へのラブソング「RIOT」をたくましく演奏した。その後、「さよなら」「遠き山に陽は落ちて」「Good Luck」「kaze」と、これでもかと別れの曲を続け、エモーショナルでありながら前向きに、最終回を締めくくった。

 small indies tableからの卒業というトピカルな点に注目がいきがちだが、本編の最後、「光」の演奏前に横山はこう言っていた。

「自分たちが思っている以上に僕らは誰かにとって必要な存在になっていると、この景色を見たら言わざるをえません。でも大丈夫。任せてもらって。場所がわからなくなったら俺たちがいるから。そこをめがけてそれぞれ日々の生活、頑張って。ライブハウスには光があるんで」

 なんと頼もしい言葉だろうか。だけど、この言葉を疑わずにいられる、ライブハウスで確かにきらめく光を見せてもらった2時間だった。「主演:私」「主題歌:KOTORI」――この人生は、どこにいても光るKOTORIがいるから大丈夫だ。

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