ミーマイナー「何度人生をやり直しても、このバンドをやる」 失ったものを“光”に変えた終わりと始まりの夜
東京・Spotify O-WESTは、開演前から期待と熱気に包まれていた。2026年3月4日、新世代ロックバンド・ミーマイナーが『2nd ONEMAN LIVE 「終わりと始まり」』を開催。チケットは即完売し、超満員のフロアには、物語の続きをともに歩もうとするオーディエンスのまなざしが輝いていた。
バンド名は、“自分のマイナーな弱い部分”を、単音では成り立たないコードのようにかき鳴らすという意味を込めて“ミー(ME)マイナー(m)”と命名。この夜、ライブ終盤には大きなサプライズが待っていた。ミーマイナーが2026年5月13日に、ソニー・ミュージックレーベルズのgr8!recordsよりメジャーデビューすることを発表したのだ。さらに、オリジナルメンバーの美咲(Vo/Gt)とさすけ(Ba)に加え、これまでサポートメンバーとしてライブを支えてきたわたさん(Gt)と葵(Dr)が正式メンバーとして加入し、4人体制で新たなスタートを切ることが明かされた。
ライブ中に印象的だったのが、12歳から音楽を志し、ミーマイナー結成まで不遇の時代を歩んできた美咲の「10年間売れなかった」という言葉だ。その重みのある一言は、この夜のすべてを象徴していた。過去に区切りをつけ、新たな未来へ踏み出す。その瞬間を刻み込む、まさに『終わりと始まり』を告げるライブとなったのである。
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平等に流れる時間、「人生を預かっている」という自覚
バンド結成からわずか2カ月後の2024年11月9日。Eggsのオーディションを勝ち抜き、東京・Spotify O-EASTで開催された『ツタロックDIG LIVE Vol.16』のオープニングアクトとして出演した際にも披露したナンバー「オンリーロンリータウン」から、二度目のワンマンライブは幕を開けた。ミーマイナーにとって大切な一曲だ。颯爽とステージに登場した美咲は、えんじ色のジャージに赤いギターという印象的なスタイル。オープニングから会場のテンションを一気に引き上げていく。
「私の最高の仲間を紹介していいですか? よろしくどうぞ!」
勢いそのままに「オーバーサイズ」へ。荒々しくもポップロックなバンドサウンドがフロアを揺らしていく。続けて披露したのは1st EP『愛の自販機』収録曲「ガムシロップ」。背景のスクリーンには手書きの歌詞が映し出され、楽曲のパーソナルな物語がより鮮明に浮かび上がる。
「2nd ONEMAN LIVE『終わりと始まり』へお越しの皆さん、ミーマイナーです! ソールドアウト公演、ありがとうございます。動員ってバンドにとって大事で。みんなの存在がミーマイナーの一部になっています。みんな平等に流れる時間、人生を預かっているという自覚を持って最後まで素敵な1日にします。さっき聴いてもらった『ガムシロップ』という曲は、ミーマイナーを結成する前から路上で歌っていた曲なんです。多くの人に聴いてもらえなかった曲なんです。……それが、今みんなが体を揺らしながら聴いてくれる曲になって嬉しいです。でも、当時から私はまったく変わっていないんです。今の私がその時と違うのは、仲間がいるということです!」。
そして美咲はシャウトする、「たしかにここはステージと呼ばれる場所かもしれない、そちら側は客席と呼ばれる場所かもしれない。でも、今日の主役は、お前たち一人ひとりだ!」
最大級にオーディエンスを盛り上げながら、人気曲「レモンガール」へ。美咲のハイトーンボーカルが会場を煌びやかに突き抜けていく。さすけのベースが腹の底に響き、フロアの熱量はさらに高まっていった。
「ひさしぶりの曲を聴いてください!」と紹介した「ごみ」は、ミディアムテンポで静かに感情を重ねていくナンバー。続くオリジナル恋愛リアリティショー『隣の恋は青く見える -Chapter TOKYO-』(ABEMA)挿入歌「愛の排水口」では、漂うようなメロディの中に切ない感情が滲んでいく。
「私は曲を書くときに大切にしていることがあって、それは“個人的であること”」
「O-WEST、楽しんでますか? 嬉しいなあ、本当に。今日、3月4日のワンマンは去年の9月に発表したので半年ぐらいあったんですけど、本当に3月4日って存在してるのかなって……。めっちゃ長くなかった? (客席の反応を窺いながら)おい、誰かなんか言え(笑)」
会場を笑わせながらメンバー紹介へ。ステージには鍵盤が運び込まれ、人生の悲喜交々を告白しながらピアノアレンジによる「純文学」を披露。鉛筆の濃さや執筆風景を人生になぞらえた歌詞世界が、会場に切なくもあたたかな余韻を残す。続く「夏時雨」では繊細な旋律が響きわたり、ライブはミディアムなパートへと移行していく。
「ここからはアコースティックでお届けします。私は曲を書く時に大切にしていることがあって、それは“個人的であること”です。私が歌を歌う理由は、自分みたいな子に出会うこと。そのために歌っています。新曲を書いてきました!」
そう語って披露されたのは「拝啓、私たち」。手紙のような歌詞を紡ぐように、美咲は涙をこらえきれず声を震わせた。
「個人的な話をしてもいいですか? ……私は10年間、夢を叶えられなかった。私は何者にもなれないんだって。自分の過去が嫌いでした。でも、本当は夢が叶わなかったことよりも、仲間がいなくなってしまったことの方が何倍も辛くて。それを言葉にしてしまうと耐えられない気がするから、目を背けて生きてきました。でも、ありのままを曲にして歌って、それをいいねって言ってくれる仲間たちがこんなにもたくさんいて。10年間生きてきた意味があったんだって、みんなに言ってもらえている気がして。少しずつ、自分の失敗や後悔を認められるようになりました。すべてのことには終わりがくるとわかっているんですけど……何度人生をやり直しても、私はミーマイナーのボーカルをやる! 何度人生をやり直しても3人を見つけ出して、絶対にこのバンドのボーカルをやる! 絶対あなたに会いに行く。これからもよろしくお願いします!」
そう語り、涙を流しながら深く頭を下げてから「終わり」を歌い上げる。フロアでもらい泣きするオーディエンスの姿も多く見られた。
「私がひとりで活動していた時、その頃、さすけさんはボカロP(もの憂げ)として、また作曲家として活動していて。私はリスナーとしてこの曲を聴いていました。頭を下げて、この曲を歌わせてもらいました。みんなも、この曲で出会ってくれた人が多いんじゃないかな」
そこから披露されたポップアンセム「ささくれハート」では、間奏でメンバー同士が顔を見合わせ微笑み合う、あたたかな瞬間が愛らしかった。