レミオロメン「3月9日」「粉雪」が世代を越えて愛される理由 『1リットルの涙』から生まれた珠玉の名曲
3月6日に放送された『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)にレミオロメンが出演した。2012年の活動休止から約14年の時を経て昨年活動再開を発表し、3月4日にはシングルズベスト『SINGLES BEST+』をリリースしたばかりだ。『ミュージックステーション』では15年ぶりの新曲「さあはじめよう」に加え、代表曲のひとつ「3月9日」が披露された。ブランクを感じさせず、円熟味を加えた名演奏だった。
番組のオープニングで披露された「3月9日」は、今年1月にストリーミング再生回数1億回を突破したことが紹介され、多くの学生がさまざまな形でこの曲を歌う動画も併せて放送された。22年前の楽曲が時を越えてなお親しまれている、その特別さをあらためて実感した。
季節とともに思い出されるレミオロメンの名曲
2004年3月9日に3rdシングルとしてリリースされた「3月9日」だが、その知名度を飛躍的に上げたのは、ドラマ『1リットルの涙』(フジテレビ系)がきっかけだろう。劇中で合唱曲として使用されて以降、全国的に卒業シーズンの定番ナンバーとして愛されるようになった。“3月9日”という何気ない日付に大きな意味をもたらし、20年以上世代を超えて歌い継がれる春の名曲となった。
そして彼らには同じように季節に紐づいた冬の名曲もある。「粉雪」だ。こちらもドラマ『1リットルの涙』の挿入歌として話題となりロングヒット。翌年の「オリコン年間チャート」では2位(※1/オリコン調べ)、2009年の『第60回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)初出場のステージでも披露されたバンドの代表曲である。冬の名曲として国民的知名度を誇り、毎年雪が降り始める頃には脳裏にこの曲がよぎる人も多いはずだ。
季節が巡るたびに思い出されるこの2曲。レミオロメンの存在を休止期間も印象づけていたことは間違いない。では、なぜこれほどまでに広く受け入れられ、長く愛されるに至ったのだろうか。
「3月9日」「粉雪」が愛され続けている理由とは
ひとつにはサビで放たれるメロディのインパクトがあるだろう。「3月9日」は、シンプルなギターの音色を軸にのどかなAメロとBメロが二度繰り返され、楽曲の春めいたムードをじっくりと高めていく。そして待ち構えたサビではグッと声を張り、〈あなた〉への強い思慕を表現する。全編通して朴訥とした歌唱だからこそ、サビの切ないメロディが際立つ。合唱曲として作られたわけではないが、最後の「ラララ」含め、気品と凛々しさに満ちたメロディだ。
「粉雪」は、そのメリハリをさらに色濃くしていると言えるだろう。淡々と刻まれるリズムに乗せ、ロートーンで紡がれるAメロ、徐々にエモーショナルに移り変わるBメロ、そして満を持して放たれる〈粉雪〉の絶唱。切迫したこのメロディと、押し寄せる感傷をそのまま表現したかのような叫びにも似たこのサビは、一度聴いたら忘れようがない。
この2曲が普遍的な楽曲として、カラオケの定番ナンバーとして、合唱曲として愛されてきたことにも納得がいく。ただキャッチーなだけではない、思わず口ずさんでしまう歌詞とメロディそのものの強度があるのだ。音楽的なインパクトと季節の匂いを併せ持った稀有な作品である。
季節のムードを演出するサウンドの魅力
メロディだけでなく、そのサウンドも楽曲を季節と結びつけるのに重要な役割を果たす。「3月9日」の歌い出しから鳴る柔らかなギターワークは、まさに春の陽気のような温もりに満ちている。リズム隊が加わり、サビにかけて炸裂する素朴で無骨なグルーヴはロックバラードでありながらフォークソング的な情緒を楽曲に与える。ギター、ベース、ドラムという最低限の楽器数で季節のムードを見事に演出しているのだ。
「粉雪」は、ピアノとストリングスも加え、より精緻に冬の寒さを演出している。特に白眉なのはギターリフだ。全編に渡って粛々と奏でられるギターフレーズは、雪の降りしきる様を美しく表現しながら、音数が増えるに伴って楽曲の悲痛さを高めていく。アウトロに至るまで鳴り続け、聴き手をぽつんとした気分にさせてくる。劇的に構築されたサウンドが「粉雪」の物語性を高めている。
メロディに加え、歌詞に寄り添うように丁寧に作り込まれたサウンドの説得力が季節を強く結びつけ、レミオロメンというバンドとしての特異性へ繋がっているのだろう。J-POPど真ん中のヒット曲でありながら、派手に扱われるわけでなく、“季節の風物詩”のように暮らしに馴染んできたというユニークさ。豊かな日常性と大衆性が、この2曲のみならず多くの楽曲に刻まれている。
そして今日、3月9日からレミオロメンは再びライブ活動を始める。夏まで続く『レミオロメン Reunion Tour 2026』が開催され、新たな歴史が動き出す。どんな景色が待っているのか、楽しみに待ちたい。
※1:https://www.oricon.co.jp/news/40552/full/