UA、10年越しの結実『NEWME』が映す現在地 坂本龍一から託された光、息子・村上虹郎らと交わした魂の記録

「今お願いしないと後悔する」ーーUAと坂本龍一を繋ぎ続けた不思議な縁

――カッコいい、痛快な仕上がりになっていますね。そしてアルバムの最後は、坂本龍一さんからの提供曲「Twilight Before Sunrise」です。UAさんは昔、YMOに親しんでいたという話をしていた記憶があります。

UA:そうなんです。YMOは小学生の時から聴いていたので。

――UAと坂本さんはこの10何年かの間にさまざまな関わりがあったようですが、最初に何がきっかけで繋がったのですか?

UA:はじめは「ZERO LANDMINE」という曲でした(2001年/チャリティーユニット・N.M.L.名義のシングル曲)。地雷撲滅のためのキャンペーンソングで、海外で言えば「We Are the World」みたいな取り組みで、たくさんのボーカリストが参加して、一節ずつ歌っていく楽曲。そのレコーディングに参加してほしいという依頼があった時に、初めてお会いしました。

――その後、『NO NUKES 2017』での共演や、うないぐみ+坂本龍一名義の「弥勒世果報(みるくゆがふ) - undercooled」(2015年)という曲にUAさんとお子さんとの朗読が入っていたり。あとはMONDO GROSSOの「IN THIS WORLD feat. 坂本龍一 [Vocal:満島ひかり]」という彼がピアノを弾いた曲では、UAさんが作詞をしていましたね。

UA:そうなんですよ。『NO NUKES』の前に……アートディレクターの信藤三雄さんが、会社のパーティーに招待してくださって、そこで「坂本さんと共演してもらえないか」というお話をいただいて。クローズドのイベントだったんですが、坂本さんとピアノデュオをさせていただきました。それがきっかけで『NO NUKES』に至ったんです。うないぐみに関しては、エンジニアのZAKが坂本さんの作品をずっと手掛けられているので、おそらく彼の助言もあったんだと思う。私がカナダに行ってからの依頼で、子供たちとの声をレコーダーに吹き込んで、送らせていただきました。

うないぐみ+坂本龍一「弥勒世果報 (みるくゆがふ) - undercooled」

UA:それからもうひとつ。コゴナダという映画監督の『アフター・ヤン』という大好きな作品があって、その中に私の「水色」が演奏で使われているんですが、同じ映画に坂本さんの楽曲がテーマ曲として使われていたんです。そんなふうに、私も不思議なぐらい、坂本さんが自分の活動に登場してくるようになっていました。

 坂本さんとは、私が沖縄に移住してからもちょこちょことメールでやり取りをしています。環境問題にまつわる「メッセージ動画を送ってほしい」ということから発言させてもらったり、コメントを寄せたり。その時期は音楽というより、社会に対するメッセージのことで連絡を取り合っていましたね。

――坂本さんとは校歌も一緒に作られていますよね。徳島県にある神山まるごと高専という学校の校歌「KAMIYAMA」をUAさんが歌詞を書いて歌っていて、そのメロディを作ったのが坂本さん。これは彼が最晩年に作った曲だと言われてますね。今回の「Twilight Before Sunrise」に関しては、この校歌の話がくる前に、UAさんから坂本さんに依頼していたとか。

神山まるごと高専 校歌「KAMIYAMA」

UA:そうです。実は最初、その『NO NUKES』のピアノデュオの時、私から直接「ライブではなく、作品としてもご一緒したいです」と言ったら、「ぜひ」とおっしゃってくださったんですね。ただ、自分はその時カナダに移住して生活を整えていたので、そこから話を具体的に前に進めるきっかけを逃してしまって。それから時が経って、坂本さんが古希を迎えられる時に、坂本さんの曲の中から“私の10曲”を選ぶ企画をいただいたんです(※1)。それで、カナダの島暮らしの中で、背筋が伸びる思いで取り組みました。そこで、彼が若い頃の作品から順を追って聴き直して……1週間ぐらいでしょうかね。しばらく坂本さんの音楽に浸る日々があったんですが、すると、ただここに座ってるだけだというのに、行ったことのない遥かな場所を旅するような、奇跡的な世界を巡らせていただいたような思いになったんです。

 そこで「一度(曲を書いてくれるという)イエスをいただいていたのに、自分は何してたんだろう?」って。「今お願いしないと後悔することになるぞ!」と思いたち、改めてオファーさせていただいたんです。そしたら、「もちろんいいですよ」とおっしゃってくださって。この曲は、お願いした1カ月後に届きました。

――「Twilight Before Sunrise」は心に深く残る曲で。たしかに坂本さんの世界でありながら、それでいてUAさんの世界でもある。本当に素晴らしいです。

UA:ありがとうございます。私にとってもこの曲の制作期間は、あまりにも印象的で美しい時間だった。自分がいつも重要視している“見えない世界”とコンタクトする感覚で書いていたので……この曲に向き合う時間が終わることが寂しすぎて、泣いてしまいました。ただ、この曲は2022年にはいただいていたんですけど、その時の自分は『Are U Romantic?』を発表したところで、ポップ回帰がメインテーマにあったため、「この曲をどうやってポップに?」ということがかなりハードルの高いお題になって。荒木くんとは十数テイクもビートを作って、テストにテストを重ねて、慎重に進めました。

Twilight Before Sunrise

――それだけの曲になっていると思うし、坂本さんのメロディも美しい形になってよかったと思います。こうしてアルバムを聴くと、愛、その中での希望、そして前のEPからのロマンチシズムが大切に貫かれていて。聴いていてナチュラルに、そしてポジティブになれるんですよね。優しくもなれるし、あたたかい気持ちにもなります。

UA:それは自分が最も光栄に感じるお言葉ですね。なぜかというと、愛だとか優しさだとか、そういうものは理屈ではないじゃないですか。おそらく表現者全員がそのことにトライしてると思うんですけど、いくら言葉を並べられても理解できるものじゃない。でも、音楽が持つ表現はそこにおいてすごく強みであって。そういう言葉をいただけると成功できてるのかなと思えて、嬉しいです。

――UAさんはこの30年の間でいろんな作品を出してきましたが、あなたという人間の生き方、それに人生が、作品と一体になっていると感じるんですよ。そこがアーティストとして確固としたものになっている気がしますね。

UA:嬉しいですね。なんだか「やっとここまでこれたな」という感じです(笑)。

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