日向坂46、三作ぶりの選抜制が映すものとは? 『クリフハンガー』五期生 大野愛実のセンターがもたらす変化

小坂菜緒・正源司陽子・大野愛実が結ぶ現在と未来、フォーメーションを読む

 役割という点において、今回のフォーメーションの中でも象徴的なのが1列目だ。二期生 小坂菜緒、大野、四期生 正源司陽子という3人は、まさに日向坂46の現在と未来を一本の線で結ぶような並びになっている。センターの大野を、これまでグループの中心を担ってきた小坂がサイドから支えることで、新しいフォーメーションにも日向坂46らしい安定感が生まれている。一方、四期生の中心的存在である正源司を1列目に配置することで、世代交代が五期生だけの物語ではなく、複数の期が並走するプロセスであることも示している。二~五期生が同じ列に名を連ねることで、これまでの歩みとこれからの変化が自然と繋がって見えてくる構図だ。

日向坂46『Love yourself!』MUSIC VIDEO
日向坂46『君はハニーデュー』

 2列目には、二期生の松田好花、金村美玖、三期生の髙橋未来虹、四期生の藤嶌果歩、五期生 松尾桜といった各期のキープレイヤーが並ぶ。バラエティやラジオ、外部の番組でも存在感を発揮してきたメンバーが、中核として全体の安定感を担保する配置だ。そして3列目には、小西夏菜実、宮地すみれ、渡辺莉奈、山下葉留花、清水理央、高井俐香と、いわば次の波をつくるポテンシャルを秘めた四期生・五期生が集結する。ここを経験値の蓄積の場とすることで、数年先まで見据えた層の厚さを確保しようとしていることが伝わってくる。

日向坂46『お願いバッハ!』MUSIC VIDEO

 16thシングルのタイトル『クリフハンガー』は、物語の“続き”を気にさせる演出手法を指す言葉だ。物語の一番いいところで幕を閉じ、「次はどうなるのか」と視聴者や読者の関心を引きつけるための仕掛けであり、同時に、崖の縁に立っているような、先の展開が見通しきれない感覚も含んでいる。選抜制の再導入と五期生センターという大きな変化が重なったこのタイミングでこのタイトルが選ばれたことは、現在のグループの状況ともどこか響き合っている。そして、日向坂46は、一つの節目に差しかかっていることを踏まえた上で、ここからの変化を見届けてほしい局面として提示しているようにも映る。

 同シングルは、日向坂46が“ハッピーオーラ”のグループであり続けるために、あえて安定した路線から一歩踏み出した結果だと言える。三作ぶりの選抜制再導入は、メンバー一人ひとりに新たな課題と成長の機会をもたらし、五期生センターの抜擢は、グループが未来に向けて本格的に世代交代を進めようとしていることの表れだと考える。

 16thシングル期の日向坂46は、これまで大切に守ってきたものと、これから更新していくべきもののちょうど境目に立っている。その揺れ動く瞬間を、タイトル通り続きが気になる物語として見届けられるかどうか。『クリフハンガー』は、そんな問いを私たちファンにも静かに投げかけている気がする。

※1:https://www.hinatazaka46.com/s/official/diary/detail/55357
※2:https://www.thefirsttimes.jp/news/0000731438/

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