五十嵐ハルが届けた夢を諦めないことの大切さ チケット即完の記念すべき初ライブを観て

五十嵐ハル、初ライブレポ

 シンガーソングライターの五十嵐ハルが、11月13日、渋谷WWWで1st LIVE『NO TITLE』を開催した。

五十嵐ハル
五十嵐ハル

 元警察官という異色の経歴を持ち、作詞や作曲、編曲はもちろん、イラストやMVの制作などをマルチに手掛けるアーティストとして活動してきた五十嵐ハル。自身の経験をもとに創作される歌詞は心の声そのものを聴いているようで、チクリと胸を刺す痛みを残しながらも、そっと寄り添うような温かさを兼ね備えている。キャッチーなメロディーラインには一瞬で耳を奪う力があり、SNSという発信の場で多くのリスナーから支持を得てきたのも納得だ。

Grape Kiki
Grape Kiki

 あっという間にチケットが完売した、五十嵐ハルの記念すべき初ライブ。満員のオーディエンスがひしめく会場にまずゲストバンドとして登場したのは、五十嵐のサポートバンドのギタリストでもあるエンドウアンリ(ex. PELICAN FANCLUB)のプロジェクト、Grape Kiki。丁寧に物語を紡ぐようなパフォーマンスや轟音のダンスナンバーなど華のあるステージングでオーディエンスを魅了し、MCでは元警察官である五十嵐との出会いから対バンに至った経緯などをユーモアを交えて披露し会場を沸かせていた。

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 転換を終えたステージに五十嵐ハルが現れると、フロアから大歓声が沸き起こった。メインビジュアルとしても使われているハットにシャツというイラストと同じスタイルだが、照明の加減で表情までははっきりと見えない。サポートメンバーである石田勇喜(Ba)、村社未来(Dr)、モリシタヒビキ(Key)と軽く拳を突き合わせ、エンドウアンリ(Gt)とハグを交わしてライブがスタート。1曲目「AM2:00」からフロアはクラップや歓声で盛り上がり、五十嵐もマイクを持って前のめりに歌っている。「恋熱」ではギターを弾きながら、高まっていくオーディエンスのテンションを受け止めているようだ。「ノーネーム」もアップテンポでライブ感のある楽曲。バンドの勢いもどんどん増していった。

 最初のMCでは、「めちゃめちゃ近いですね(笑)」とリラックスした様子で話し始めた五十嵐。ここにいる半分以上の人が飛行機や新幹線で来てくれたことを知ると、目の前の景色を感慨深そうに見つめながら改めて感謝を伝えた。

 次のセクションは、イントロで「……おぉ~っ」と声が上がった「笑う癖」から。サビの展開がドラマチックな1曲だが、主人公の切なさややりきれなさ、ギリギリの感情などを歌い分ける五十嵐の繊細な表現力も印象的だった。次の「ブラックホール」では逆に、薄暗いステージを歩き回りながら奈落の底へと落ちていくような心情を体全体で表現。ボーカルというよりも、うつむき、背中を丸めた姿そのものから言葉がこぼれ落ちているようにも感じられる1曲だった。「恋花火」はバンドの音以外のSEも効果的に取り入れ、世界観を彩るような仕上がりに。音源やMVともまた違う、ライブならではの楽曲の表情が引き出された3曲を堪能した。

 次に披露されたのは、新曲「結晶」。根っこにあるのはここでもやはり言い出せなかったり頼りなかったりする主人公の切ない気持ちだが、施されたアレンジの妙でスケール感が格段にアップ。五十嵐ハルの冬の定番曲となって、大きなホールの公演で演奏されるイメージが湧くようなラブソングだ。この先も多くの人の心を掴んでいくであろう最新曲に続いて、五十嵐ハルという名を世に浸透させたきっかけの曲である「少しだけ」。歌声は音源よりも生々しく、剥き出しの感情が伝わってくる。後悔してもしきれない、だけどどうすることもできないという葛藤を抑え込むようにハットで表情を隠したエンディングもまた、ライブだからこそ味わえる魅力ポイントだった。

「終盤はちょっとブチ上げて行きたいんですけど、みなさんついてこれますか!」

 みんなの手拍子やコーラス、高く掲げた右手が曲を盛り上げ、一体感を作り上げた「めんどくさいのうた」。ぺむ名義で発表されたボカロ曲「スカーレットハート」は、バンドの分厚いサウンドによってゴリゴリのロックバージョンに。ステージとフロアがひとつに溶け合い、これが1stライブとは思えないような盛り上がりとなった。

 本編最後のMCでは、「音楽をやるために警察官を辞めるというと、みんなから笑われた。いつかでっかくなって見返してやろうと思っていたけど、なかなか芽が出ず、何のために生きているかもわからなくなった。でも今日この空間で、モヤモヤしていたものが消化できた」と五十嵐。そして「今夢がある人は頑張って欲しい。いろんな人がいろんなことを言ってくるけど、続けていればこんな最高の空間に出会えるかもしれない。人生はしんどいことばかりだし、何であいつばかり上手くいくんだ、認められてるんだって思うこともたくさんあると思うけど、せめてこの空間のこの瞬間だけは僕がみなさんのヒーローになれたら」と言葉を続け、最後の曲「センチメンタルヒーロー」を披露した。情けない心情やぶち当たっている現実を歌いながらも、そんな世の中でどうにかこうにか生きてきた。諦めたくない。そんな想いに共感したオーディエンスが叫ぶ「ヒーロー、ヒーロー!」の声は、間違いなく次なる展開への追い風となっていくはずだ。アンコールでは、応援してくれる全ての人への感謝を込め、「心音」を弾き語りで披露。近いうちに再会をと約束を交わし、笑顔でステージを後にした。

 終演後、新曲として披露した「結晶」が11月19日に配信リリースされることと、初のワンマンLIVE TOUR『Mr.Sentimental Vol.1』を3月5日に渋谷WWW X、3月13日に大阪JANUSで開催することがフライヤーで告知された。

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■オフィシャルスチールクレジット
しおみわかば
X:https://x.com/wakaph_
IG:https://www.instagram.com/wakaph_

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