UNFAIR RULE『ひびのかけら』に滲む柔らかな変化 3人で鳴らす“今”の音、ライブが生んだ新たな結束

 ライブハウスツアー『ずるい約束』を経て、確かな“グルーヴ”を手に入れたUNFAIR RULEが最新EP『ひびのかけら』をリリースした。ひとりではなく、3人で音楽を作る喜びの中で、彼らはいま確実に変化している。新たな挑戦と進化の裏にあった日々と3人になったUNFAIR RULEが今鳴らす音楽を、等身大の言葉で語ってもらった。(編集部)

区切りをつけて次のステージへ、3人で踏み出した新たな一歩

ーー3月から5月にかけてライブハウスを回るツアー『ずるい約束 -ONEMAN LIVE-』を行いました。お世話になっているライブハウスと、挑戦となるライブハウスを回るというコンセプトのツアーでしたが、いかがでしたか?

山本珠羽(以下、山本):自分としてはいい区切りになった感じがあります。これまで小箱のライブハウスに出演することが多かったんですけど、そこに一種の区切りを打たずに大きいライブハウスに挑戦するということが、どうしても私の気持ち的にできなくて。だから、新しいことに挑戦するためにも、今までやってきたこと、育ててもらってきた姿を全部見せられたかなと思います。

悠瑞奈:私はこのツアーから正式メンバーになりました。ツアーでは、ふたりがお世話になったライブハウスはもちろんですが、私の地元でもある福岡のライブハウスにも行けて。福岡のライブには家族や友達も観に来てくれて「これから私はこういう形で頑張っていきます!」という姿を見せられたので、私にとってもいい節目になったツアーでした。

杉田崇(以下、杉田):このツアーから3人になったということもあって、改めて全員のグルーヴがすごく上がるツアーだったなと思います。3人で同じ方向を向いていけている感じがあって、とにかく楽しいツアーでした。

UNFAIR RULE「言葉に恋する君が」Live from 2025.05.11 東京 Spotify O-WEST

ーーツアーのあとには夏フェスにもたくさん出演されましたが、今までとの違いなどは何か感じましたか?

山本:夏に似合う曲を書いたことがなかったなと思って、「ポニーテール」という曲をリリースしてから夏フェスに出たんです。UNFAIR RULEの違う一面が出るような、みんながわかりやすく楽しめる曲を書きたいと思っていて。実際みんな楽しそうにしてくれて良かったなと思いましたね。

悠瑞奈:私も「ポニーテール」は結構印象的かも。それまでのフェスは、“ライブハウスの私たちをフェス会場に持ってきた”という感じだったんですけど、「ポニーテール」ができてからは、“フェスのUNFAIR RULE”みたいなものも見せられたような気がします。

杉田:夏フェスは楽しいし学びも多いなと思うので、これからもたくさん出ていけるように頑張ります!

山本珠羽(Gt/Vo)
杉田崇(Dr)
悠瑞奈(Ba)

ーーライブ以外で印象的だったことや、嬉しかったことなどはありますか?

山本:合宿かも。っていうか、3人で長い時間一緒におったこと自体が楽しかった。

悠瑞奈:かわいい(笑)!

山本:(笑)。でも、やっぱり合宿は思い出深いですね。合宿に行く前にみんなで100均に行って、子供用のわけわからんサングラス買って。それをつけて一日中作曲して、夜はみんなでお酒を飲みながら歌を歌ったりして。楽しかったなあ。毎食、崇が作った焼きそばを食べたり。

ーーみんなで歌を歌ったというのは?

山本:しょうもないんですけど……部屋に3人で集まって、アンプに繋いでいないMIDIキーボードを私が弾く真似をして、「366日」(清水翔太feat.仲宗根泉(HY)バージョン)をみんなで歌って。で、唐突に「おやすみ〜」って言って終わるっていう。楽しかったですね(笑)。

ーー楽しそうですし、そういう良いグルーヴってライブや楽曲に反映されるでしょうから、とても素敵な夏を過ごせたんですね。

山本:はい、そうですね。

「ポニーテール」は“新しいことに挑戦する”という意思表示に

ーーでは、まずは先ほどのお話にも挙がった「ポニーテール」から聞かせてください。初めて季節を意識的に取り入れたということですが、夏ソングを作ろうと思ったのはどうしてですか?

山本:私があまりにも秋と冬が好きすぎて、それに似合う曲ばっかり作っていたんですよね。なので、1曲くらい味変したUNFAIR RULEも聴いてみたいなって自分も思ったし、そう思っている人もいるんじゃないかなと思って挑戦してみました。それこそ「ここで新しいことに挑戦します」っていう意思表示でもありました。

UNFAIR RULE「ポニーテール」Music Video

ーー制作はどのように進めていったのでしょうか?

悠瑞奈:曲自体は去年からあって。夏にリリースすることが決まってから、それこそフェスに似合う感じに編曲していったよね。

山本:うん。でもあまりにそういう雰囲気に寄せすぎて、今までのUNFAIR RULEがなくなるのも嫌だったから、Cメロみたいな今までのUNFAIR RULEっぽさも残しました。あとは、歌詞。私は夏が嫌いなんですけど、夏に好きな人と出会って、その人に好きになってもらいたいから「私も夏を好きになりたい」という気持ちが発端でこの曲を作り始めたんですけど、歌詞はポップになりすぎない、ということも意識しました。「夏に一緒にいられてハッピー!」みたいなものにはしたくなかった。

ーーあくまでも片思いの苦しさにフォーカスして。

山本:はい。

ーー「言葉に恋する君が」で転調を初めて取り入れていらっしゃいましたが、この曲にも転調が入りましたね。

杉田:確かに。すぐ入れた(笑)。

山本:なんか、転調しないと気持ち悪い感じがあって。

悠瑞奈:もともと転調後のキーで作っていたんですけど、全体のキーを下げることになって。そうすると、自然ともう一段階欲しくなるので、そこで転調を入れることになった気がします。「転調しよう」と思ったのではなくて自然と。しっくりくる感じがこれだったという感じです。

ーー演奏する上ではどのようなことを意識しましたか?

杉田:ドラムでも楽しさを出したいと思って、今まで使っていなかったビートを入れました。でもそのビートがめっちゃ難しくて。悠瑞奈ちゃんと一緒にスタジオで練習することが多いんですけど、ビートが走るとすぐに悠瑞奈ちゃんに「今の、わかった?」って言われるんです。

悠瑞奈:そんな言い方してないよ(笑)。

杉田:でもすごく勉強になったし、自分にとっても新しい一歩を踏み出せました。

悠瑞奈:この曲はリズムのキープがすごく重要な曲なので、基本的にはキープしつつ、情緒があふれるCメロでは広がりが出せるようにふわっとさせるというのは意識しました。

山本:ギターはアコギを入れてキラキラ感を出しています。あとは、ポップになるように耳に残るフレーズを考えました。ボーカルでは、2番の〈君のおかげで好きになれたものばかりだよ/でも誰に教えてもらったの?〉〈プレイリストに入っている曲/誰を想って失恋ソングを聴くの?〉っていうハテナが続くところのニュアンスは、強弱の具合をいろいろと試しました。弱く歌いすぎると呪いみたいになっちゃうから(笑)。結果、すごくいい塩梅で歌えたかなと思います。

悠瑞奈:あとキーを下げたことによって、歌に遊びがあるのも今までとはちょっと違うんじゃないかなと思います。〈君が取り消した一行〉とかいいよね。

山本:この曲のレコーディング、めっちゃ楽しかった!

ーーそれはキーを下げたことによって、いろいろと遊べたから?

山本:それもあります。あと、最近ボイトレに通い始めて、歌の表現の幅が広がったんです。だから、たとえばCメロは強調したいからバーって歌うけど、その間にもちょっと休符を入れるとか、いろいろ考えて歌えて楽しかったんです。

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