伊藤理々杏、相次ぐメンバー卒業との向き合い方 乃木坂46で経験した3度の波、アイドルとしての使命

 2025年9月4日、伊藤理々杏が乃木坂46に加入して9周年を迎えた。3期生として歩んできたこの9年間は、グループにとっても彼女自身にとっても大きな変化の連続。同期の卒業、アンダーライブでの経験、そして6期生の加入ーーさまざまな変化の中で、伊藤もまた“自分がどう在りたいか”を模索してきた。

 2025年夏には『真夏の全国ツアー2025』を完走し、秋にはアンダーライブにも出演。舞台など個人活動を通して成長を続けている。3期生としての立場、「乃木坂人生の中で3回くらい大きな波があった」と語る“卒業”との向き合い方、同期や後輩への眼差し、乃木坂46というグループへの確かな信頼――9周年を越え、10年目へと歩み出した現在の思いを、率直に語ってもらった。(編集部)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】

新しい風と、初心を思い出す時間ーー2025年の夏を振り返る

ーー7月から始まった『真夏の全国ツアー2025』が、9月に明治神宮野球場公演(9月4日〜7日)で終了。神宮での4DAYS公演は2年ぶりでしたが、手応えはいかがでしたか?

伊藤理々杏(以下、伊藤):去年の『真夏の全国ツアー2024』がドームツアーで東名阪の3カ所だけだったので、今年は久しぶりに福岡で公演ができたり、乃木坂46として初めて香川でライブをさせていただいたりと、いろんな場所に行けたことが嬉しかったです。特に、3期生以降のメンバーは静岡でのライブも初めてだったので、本当にたくさんの方に会いに行けた、そして出会うことができたツアーでしたし、その中で培ったパワーを神宮にしっかり繋げられたかなと思います。

ーー今年は6期生が加わって初めてのツアーでしたが、ライブから受ける感覚やステージに立っている時など、去年との違いはありましたか?

伊藤:同期もそうですし、後輩ちゃんたちも年々すごく逞しくなっていて、本当に背中が大きく見えるようになりました。特に4期生はひとつ下の後輩というよりも、先輩が全員卒業されてからは手を取り合って、一緒に歩いてきたような関係性なので、自分のほうが先輩ではありますけど今では頼っている部分がたくさんあります。5期生もみんなそれぞれの個性や持っている武器を活かして、自分の色を出しつつも「乃木坂46として、自分はどうやって行動したらいいんだろう」って考えて、グループのためにより動いてくれようとしているのかなって思うことも多いですし。そこに6期生という新しい風が加わって、私たち3期生も初心に返るというか、加入当時を思い出す機会が増えるので、すごく刺激になります。とにかくみんな一生懸命で素敵な子たちなので、一緒に活動できてすごく嬉しいです。

ーー実際、6期生はこの数カ月でガラッと変わりましたよね。

伊藤:いやあ、若い子って成長スピードが速いんだなって。乃木坂46に加入した頃の自分も、先輩たちからそう思われていたらいいなって思うんですけどね(笑)。うめ(梅澤美波)もよく言っているんですけど、瞬きしたらみんなあっという間に成長しているんですよ。でも、それは6期生のみんなの努力や真面目さがあるからだと思うんですよね。

ーーこのツアーを通じて、先輩たちの背中からたくさん刺激を受け取ったのかもしれませんね。

伊藤:自分の時もそうだったので、6期生も同じだといいなあ。

ーー昨年の全国ツアーでは9人いた3期生も、今年の夏は5人で過ごしましたね。

伊藤:去年と景色が違いすぎて、本当にびっくりしちゃいますよね。9人もいた頃が去年よりももっと前のように感じるくらい、ここ一年は時間の流れが速い。もちろん寂しいですけど、でも少なくなればなるほどより支え合おうと寄り添い合うので、もともと近かった同期の距離感がさらに近くなったような気がします。

ーー神宮公演を観ていて感じたんですが、3期生5人がふざけ合っているあの感じが、1期生が同じくらいの人数になった頃と重なるんです。

伊藤:わかります! 私もそう感じましたから。何年前だったかな、1期生さんが今の3期生と同じぐらいの人数だったときの夏のツアー(2022年/※1)のことをすごく覚えていて。キャンプファイヤーを囲んで1〜2期生さんが「ひと夏の長さより…」を歌っている中に、後輩がどんどん加わっていくという演出があったんですけど、最近その時の光景を思い出すんです。あの頃の1期生さんや2期生さんのように、今の自分たちはなれているのかなって考えちゃうんですよね。それこそ、10周年のバースデーライブ(※2)で卒業された先輩方が来てくださったときの空気感……1期生さんの「うわ〜、久しぶり〜」みたいなやりとりを見て、涙していた自分のことを思い出しますし、最近卒業した同期がライブを観に来てくれて再会すると、もしかしたら後輩たちはあの時の自分のような気持ちになったりしてるのかな、とか考えたりします。

ーーその1、2期生がいなくなってからのこの数年、乃木坂46には「勝負の1年」が続いている印象もあります。

伊藤:新しくなりながらも従来のイメージを維持していくことってすごく難しいですし、本当に日々チャレンジしていかなきゃいけないっていう責任感をグループ全体で感じている印象です。

ーーだからこそ、毎年神宮でのライブを観ると「ああ、やっぱり今の乃木坂46は大丈夫だ」と、答え合わせをするように安心するんです。

伊藤:そう言ってもらえるとホッとします(笑)。

ーー今年はツアーファイナルから約1カ月後に『39thSGアンダーライブ』(10月7日〜9日)もありましたね。特にここ最近のアンダーライブでは毎回新しい挑戦に挑んでいる印象があり、個人的には今回はセットリストや演出含め、過去数回の中で一番面白かったです。

伊藤:嬉しいです。今回に限らず、アンダーライブでは毎回個人をすごくフィーチャーしてくれて、全員に主役の時間をしっかりと作ってくださることが本当に嬉しくて。特に今回は39枚目なので“サンキュー(39)”ということで、自分が感謝を伝えたい人に向けて曲を選んで披露するコーナーがあったり、参加メンバー全員がセンターに立つが曲があったりと、セットリストやポジションを見るたびにチームの皆さんの愛を感じました。と同時に、その期待に応えようとするメンバーのひたむきさとか熱い想いがあるからこそ、本番でファンの皆さんからの声援を受けることでさらにひとつになっていいものを作れているのかなと思います。なので、そういうみんなを主役にしてくれる部分ですごく感謝をしていますし、今回はメンバーもいつもと少し違う顔ぶれでもあったので、新しい姿も見せられましたし。なにより、「不道徳な夏」というアンダー楽曲を夏のツアーを通じてみんなで育ててきたので、その成果を今回のアンダーライブを通じてお届けすることもできましたし、ライブ本編の最後にあの曲がきたときの爆発力はものすごいものがあったなと感じました。

ーーおっしゃるように、「不道徳な夏」はツアーで披露を重ねるにつれ、どんどん威力を増していきましたよね。

伊藤:スタッフさんも「アンダーライブに向けて、この曲を育てていこう」と言ってくださって、「もっとこうしたほうがいい」とか「こういう見せ方をしたほうがいいんじゃないか」とアドバイスもたくさんいただきましたし、メンバーからもいろんなアイデアが出てきたんです。そんな私たちの頑張りに、ファンの皆さんもしっかり応えてくださって、そのおかげであそこまで成長できたので、本当にいろんな皆さんに感謝しています。

ーー神宮で「不道徳な夏」のパフォーマンスを初めて観た瞬間から、「次のアンダーライブは絶対に面白いことになる」と思っていたんですよ。

伊藤:本当ですか。嬉しい。でも、今回は4期生のみんなが本当に頑張ってくれたおかげだと思うんです。みんなそれぞれ強さも繊細さも持っていて、とにかくひたむきで真面目でめちゃくちゃ一生懸命に頑張る子たちだから、みんなの姿を見ているだけで自分も頑張ろうって気持ちになれる。もちろん、そう感じさせてくれるのは同期もそうですし、唯一5期生から参加してくれた(奥田)いろはちゃんも一緒。みんなすごくあったかくて、それでいて熱さも持っている、すごいメンバーたちなんです。

ーー先ほどおっしゃった“サンキュー”ブロックでは、理々杏さんは2日目(10月8日)公演で「誰よりそばにいたい」をソロ歌唱しましたね。

伊藤:あの日の私、珍しく緊張していたんですよ。当日は私の誕生日だし、周りには自分たちの味方しかいないから、「いっぱい練習したから、あとは楽しむだけだ」と思っていたんですけど、出番が近付いてきたら体がどんどん震えてきて。「あれ、自分こんなに緊張してたんだ」ってびっくりしました。あと、バラードを歌うのが個人的にはすごい挑戦でもあって。普段はロックな感じとかアップテンポな曲を歌うことが多いので、自分はそっちのほうが得意だなと思っているので正直この曲を選ぶかどうか悩んだんですけど、でも苦手だからこそ挑戦したかった。やっぱり、新たに挑戦できることって年々少なくなっていくので、出来る時に挑戦しておこうと思って、自分への課題として歌いました。

ーーその曲から、理々杏さんと林瑠奈さんのWセンター曲「さざ波は戻らない」へと繋がっていく構成も、個人的にはグッとくるものがありました。

伊藤:ちょうど32枚目のアンダーライブの時に2曲とも披露していましたものね(※3)。今回は1日目の“サンキュー”ブロックで、るなぴ(林)が「音出ないギター」を選んで歌ってくれて。この曲も32枚目のアンダーライブで披露したんですけど、るなぴはあのアンダーライブがすごく記憶に残っていると言ってくれたんです。それは私も同じ気持ちだったので、その選曲理由含めて本当に嬉しくて。「誰よりそばにいたい」はあの時のアンダーライブの本編ラストの曲だったので、そのときのことも思い浮かべながら歌ったんですけど、次の曲が「さざ波は戻らない」っていうのが……心が揺さぶられましたし、あの綺麗な流れにはちょっとびっくりしました。

ーーもうひとつ印象的だったのが、最終日のみアンコールのラストに披露された「錆びたコンパス」。この曲の時に、理々杏さんが感極まっている気がしたのですが……。歌詞があのシチュエーションとともに響いたのか、夏のツアーからここまで走り切ったことに対しての達成感なのか、いろんな思いがあるのかなと思って観ていました。

伊藤:どうだろう……やっぱりいい曲だなとか、この一体感を出せるのがアンダーライブだなって、最後の最後に感じられて幸せだったんだと思います。

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