majiko×木下哲、衝撃の出会いから新作EP『GOLDEN JUNKIE』ができるまで 10年で共に磨き上げた楽曲制作のクオリティ
『GOLDEN JUNKIE』のテーマは「いかにライブで覚醒できるか」(majiko)
ーー10年経って、お互いに変化したところもあるのでは?
majiko:そうですね。さっきも言いましたけど、最初は怖かったというか、腹のなかで何を考えているかわかんないなと思ってたんですけど(笑)、いい人だということがわかって。笑顔でも目が笑ってないのは変わらないんだけど、これが素なんだとわかったので大丈夫です。
木下:よかった(笑)。majikoちゃんは……ちょっと親みたいな言い方だけど、ライブの運び方とかもすごくしっかりできるようになったよね。
majiko:皆さんに言われます(笑)。
木下:特にこの数年のライブは、「どこで覚えた?」と思うくらい、運び方が上手くて。心強いですよ。最初の頃はリハーサルのときにシクシク泣いたりしてたのに。
majiko:覚えてる(笑)。
木下:今年の中国のフェス(88rising主催の『Head in the Clouds Guangzhou 2025』)もすごかった。覚醒してたよね。
majiko:アウェイが嫌じゃないというか、むしろテンションが上がるんですよ。もちろん哲ちゃんをはじめとするバンドメンバーの皆さんが支えてくれてるから、安心して実力を発揮できるんですけどね。みなさんが作ってくれたお庭で“ワーッ!”って遊んでるというか。
木下:ありがとう。それにしてもすごかったよね、お客さんの熱狂ぶりが。
majiko:すごかった。バックヤードで初対面のアーティストに“最高!”みたいな感じでハグされたのも楽しかったです(笑)。
ーー楽曲制作に関してはどうですか?
木下:デモのクオリティが全然違いますね。レコーディングに参加してるミュージシャンともよく話すんですけど、まずピアノの作り方が上手い。majikoちゃんの曲はピアノのフレーズがフックになってることが多くて。ピアノを弾いてもらってる方が言うには、「デモの段階からしっかり構築されているから、アドリブで変えたりできない」と。
majiko:理論はわかってないんですけど、「この音はこっちにあったほうが気持ちいいな」みたいなことは少しずつやっていて。それを構築と言ってもらえるのなら、そうなのかも。
木下:最初はバンドサウンドが多かったんですよ。ホリエさんがプロデュースした『CLOUD 7』(2017年)まではギターメインで作ってたよね?
majiko:そうですね。『CLOUD 7』に入ってる「ノクチルカの夜」はピアノで作ったんですけど、そのときに「ピアノっていいな」と思って。そこからちょっと広がったのかなと。『AUBE』の1曲目「声」もそう。haruka nakamuraさんに弾いていただいたんですけど、ピアノの可能性をすごく感じて。
木下:「パラノイア」で初めてブラスを使ったけど、最初からある程度出来てたよね。
majiko:哲ちゃんのお力もたくさんお借りしました。
木下:……そうだった(笑)。自分もブラスをアレンジするのがほぼ初めてで、いろいろ調べながら手探りでやってた気がします。
majiko:持ちつ持たれつ(笑)。
ーー木下さんは新作EP『GOLDEN JUNKIE』の制作にもがっつり関わっていらっしゃいます。majikoさんとしては、どんなEPにしたかったんですか?
majiko:まずはライブですね。「ライブで使える曲をどんどん増やしたい」という気持ちがあって。制作の途中で、さっきお話した中国のフェスを挟んだのも大きかったんですよ。そのフェスに出ているアーティストは低音をガンガン効かせてて、ヒップホップ、トラップ系の人が多くて。いつもとはちょっと勝手が違っていたというか。
木下:生バンドで盛り上がる曲のハマりがあまり良くない気がしたんですよ。それよりも「Princess」のような曲のほうが反応がよくて。
ーー低音がしっかり出ている、ヒップホップ的な楽曲ですよね。
木下:いろいろトラブルとかもあったんですけど、結果、すごくいいライブになって。あの経験は確かに大きかったかも。
majiko:うん。そこからインスピレーションをもらって、また曲を作り始めて。それこそ「いかにライブで覚醒できるか」がテーマになった気がします。
木下:自分もちょっと思うところがあって。明確なキックがあって、L・Rに歪んだギターが鳴ってて、真ん中にmajikoちゃんの声がドーンとある。そういうシンプルな発想がいいんじゃないかなと。そういう話したよね?
majiko:したね。その後で作ったのがEPの4曲目に入ってる「ロカ」なんですよ。4つ打ちのキックがあって、歪んだギターがあって、サビで“ギャーッ”って叫んでるっていう。
木下:いいよね。バラードだけじゃなくて、アップテンポの曲でもmajikoちゃんのヤバい声をどんどん落とし込んでいけたらなと。中国もそうだけど、アジア全域でもヒップホップが中心になっているし、生バンドを打ち出すよりも「ロカ」のような発想がいいんじゃないかと思ってます。
majiko:中国の知り合いのイベンターさんも言ってたよね。「今はヒップホップですよ」って。
木下:言ってた。ヒップホップをそのままやるんじゃなくて、majikoちゃんに合ったやり方があると思ってるので。まあ、majikoちゃんはアイデアがいろいろ出てくる人なので、結果的にいろんな曲が出来ちゃうんですけどね(笑)。
ーーその他の収録曲についても聞かせてください。1曲目の「NA TTE NAI」は、フォンクミュージックを意識して制作されたそうですが、木下さんはどう捉えていますか?
木下:デモを聴いたとき、最初のリフがめっちゃいいなと。リフの音がよければ、それだけでOKな曲だなと思ってたし、実際そういう曲になりましたね。音の質感もかなり時間をかけて作ったんですよ。音作りは自分の趣味でもあるんですけど(笑)、エンジニアさんとも「いや、違う」って何度もやり取りして。
majiko:エンジニアさんとも付き合いが長いので。
木下:もともと僕がバンドをやっていたときからの知り合いなんですよ。
majiko:それこそ「冬の太陽」のときから一緒にやってくれてて。
木下:あんなに時間をかけてやってくれるエンジニアはいないので、本当に助かってます。
majiko:おかげで「NA TTE NAI」もいい音になりました。SNSで、「最初のイントロだけでどんな曲かわかった」というコメントがあったらしくて。
木下:好きな人は絶対好きだからね、あの曲は。そういう人に確実に届く曲にしたかったので、よかったです。