Mrs. GREEN APPLE、自己も他者も包容する覚悟 「GOOD DAY」が10周年の“集大成”である意味

「GOOD DAY」は“2025年のミセス”を象徴する1曲に

 大森はこれまで自分の心と向き合うように曲を書いてきた。それが結果的にたくさんの人の心に届くという順序だったが、今回はキリンから「日本を丸ごと明るくしたい」とコンセプトの説明を受け、出発点から日本国民という“大勢”を意識していたという(※1)。この違いは非常に大きなもので、大森も自身のSNSで「この楽曲以前と以降で僕の作家としての想いが変わった」と語るほど(※2)。そうして生まれた「GOOD DAY」は、人の心を徒に波立たせず、誰もが安心して触れられる明るい作品に。今を生きるミュージシャンとして、時代を背負い、照らすのだという覚悟が〈明るい希望を謳うのはダサいこと?〉という反語に込められた。

 〈私の人生は/「ほんと、素晴らしいもの。」/言えない日があるのも/自然なグルーヴ〉という歌詞も重要だ。「GOODと言える日も言えない日もひっくるめて人生は素晴らしい」ではなく、「GOODと言えない日があってもいい」という許容。グリッドに合わせるよりも人間的な弾みや弛みを楽しむような、それこそ自然なグルーヴに乗せて、言えない日があってもいいのだと歌われている。

Mrs. GREEN APPLE「GOOD DAY」Official Music Video

 人は生きていると、大切な人との別れや自分を含む人間の愚かさなど、受け入れるしかない現実に直面する機会も多い。それはミセスのメンバーもきっと同じだろう。彼らは青春とともにフェーズ1を駆け抜け、フェーズ2では、自分一人の力では動かしようのない事柄とどのように向き合っていくか、今後も長く続く人生をどのように生きていくかを音楽として鳴らしてきた。例えば2022年リリースの「ダンスホール」では〈いつだって大丈夫〉と高らかに歌いながら、この地球を大きなダンスホールに見立て、ステップを踏んだ。2023年リリースの「ケセラセラ」では、メロディに乗せて〈ケセラセラ〉(=なるようになる)と唱えた。それは単に華やかなだけではない、苦しくても悲しくてもやってくる毎日を乗り越えるためのまじないだった。同じく2023年リリースの「Feeling」では、受難によってもたらされる心の浮き沈みを〈feeling〉と比喩し、自身を俯瞰して〈試されてる。/私はきっと/愛されてる。〉と歌った。その系譜の先に「GOOD DAY」があるのだろう。加えてこの曲では、「天国」「breakfast」で描いてきた受容が、より日常的で誰もがアクセスできる形に昇華されている。6カ月連続新曲リリースの先で彼らが手にしたのは、自分も他者も包容する力と確固たる覚悟。その両輪が2025年のMrs. GREEN APPLEを象徴している。

 「GOOD DAY」はミセスが年内にリリースする最後の曲だと明言されており、2025年の怒涛のリリースラッシュは締めくくられる。この曲には、バックグラウンドボーカルとしてメンバーやサポートミュージシャン、ミセスの活動を支えるスタッフらの名前がクレジットされており、10周年の集大成という印象がある。同時に、フェーズ1の最後にリリースされた2020年の楽曲「Theater」(コーラスメンバーにメンバーやスタッフがクレジットされている)を彷彿とさせることから、「フェーズが変わるのでは?」「再び活動休止するのでは?」という憶測も広がっている。10周年という節目を越えた彼らが次にどんな物語を紡ぐのか、その行方を期待と共に見守りたい。

Mrs. GREEN APPLE - Theater

※1 https://realsound.jp/2025/10/post-2181288.html
※2 https://x.com/MotokiOhmoriMGA/status/1970823854542233890

Mrs. GREEN APPLE、終わらない航海と変わらない原点 10年間の軌跡が美しく輝いた野外ライブ『FJORD』

Mrs. GREEN APPLEがメジャーデビュー10周年を記念して、神奈川・山下ふ頭特設会場で野外ライブ『MGA MAGICA…

Mrs. GREEN APPLEの“夏曲”が持つ特別な輝き 「夏の影」で綴る永続性への憧憬、人生そのものの美しさ

Mrs. GREEN APPLEが新曲「夏の影」を8月11日にリリースした。Mrs. GREEN APPLEがタイトルに“夏”が…

関連記事