初音ミク関連ライブの新潮流 『デコミク』『ポケミク』ら解釈の多様化に表れる文化の成熟と寛容さ

VOCALOIDカルチャーの根幹は“多様性の肯定”にあり?

 一方、『ポケミクライブ』は、2023年に始まったポケモン×初音ミクのコンテンツコラボ企画『ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE』を背景とするライブイベントだ。これまでのプロジェクトでは、syudouやEve、原口沙輔ほか新旧問わず多数の人気ボカロPによるコラボ楽曲のリリースや、「18タイプの初音ミク」ビジュアルなどを公開。そのため、公演中にはデフォルト像でない各タイプの初音ミクの登場も大いに期待できるだろう。加えて、すでに当日は初音ミク以外のバーチャルシンガーやポケモンたちの登場も発表されており、この日限りのスペシャルかつバラエティ豊かなステージが楽しめるはずだ。

【公式】「ポケモン feat. 初音ミク VOLTAGE Live!」ポケミクライブ開催決定!

 思えば、VOCALOIDカルチャーがここまで広く普及した理由のひとつには、間違いなく文化そのものが持つ「どんな姿の初音ミクも存在を許容される、二次創作・多様な解釈への懐の広さ」があった。これまで楽曲やイラストなどの創作物の観点でその性質が語られることは多々あったものの、ライブ・公演の領域において触れられる機会は、ごくわずかなものであったように思う。

 その点でも今回のイベント群は、ボカロ文化そのものが持つ魅力や特性がより深い深度で表出したライブと言っても過言ではない。これらの事例を下地に、今後はカルチャー内において、より多彩かつユニークなコンセプチュアルライブの手法が普及する可能性も十分にあり得るだろう。VOCALOIDというジャンルの中にさらに一定のコンセプトを設ければ、当然演奏される曲目やパフォーマンスには制限が出る。しかし裏を返せば、それでも数千~数万の観客を動員する公演が成立するほど、VOCALOIDというジャンル、あるいは初音ミクという存在が今や大勢の熱狂的なリスナーに支持されている、ということなのかもしれない。

 既存の枠組みや従来の発想に囚われず、音楽は、創作は、表現は、もっと自由で多様なものでいい。今後もさらに初音ミクは、まだ見ぬ斬新で前衛的な数々のクリエイティブに、きっと多くの翼を与えてくれるはずだ。

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