スーパーギタリスト・高中正義が魅せた言語を超える音楽と圧巻のパフォーマンス ワールドツアー東京公演

 日本のフュージョン界の第一人者として70年代〜80年代にかけて絶大な人気を誇り、「BLUE LAGOON」のヒットなどで知られるギタリスト・高中正義。いわゆるロックやジャズのサウンドとは異なる、ポップでトロピカルなギターサウンドは唯一無二。近年の世界的シティポップブームの波に乗り“歌のないシティポップ”として海外の若者の間で人気を集めている。今年72歳を迎えたスーパーギタリスト・高中によるワールドツアー『高中正義 SUPER TAKANAKA WORLD LIVE 2025-2026』が9月13日、東京・かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホールで幕を開けた。

72歳、ギターと笑顔で駆け抜ける——笑顔溢れる高中流ステージ

 トレードマークのYAMAHA SGを携え、オールバックヘア、口ひげ、サングラスという往年のスタイルそのままの高中がステージに登場すると、オールスタンディングとなり大歓声に沸いた会場。高中は名刺代わりとばかり、1曲目からヒットナンバー「BLUE LAGOON」を繰り出すと、疾走感あふれるギターフレーズと軽快なリズムとともに、青い海と空の夏の情景が目の前に広がった。そして高中の歌声とコーラスが爽快に鳴り響く2曲目の「RADIO RIO」へと繫がる流れは、名盤『JOLLY JIVE』の流れだ。間髪入れずサンバのリズムの「BELEZA PULA」、体を左右に揺らしながらギターを奏で、コーラスも心地よい「BRASILIAN SKIES」と続くと、会場は南国のビーチのような開放感あふれるムードに満ちていった。また「ILLUSION」ではステージの中央に置かれたソファに、足を組んでゆったりと腰掛けて演奏し、夕陽がゆっくりと海に沈んで行く様子をイメージさせた。

 客席を埋め尽くしていたのは、青春時代を高中サウンドとともに過ごしてきたベテランのファンを中心に、20代や30代の若い世代、そして外国人ファンの姿も。Tシャツなどのグッズを身に付け、カラフルなペンライトを揺らして楽しむのは今の時代ならではだろう。「BLUE LAGOON」では曲中で「ヘイ!」と掛け声がかかるなど、さながらアイドルのコンサートのような盛り上がりとなった。

 実際に高中の海外での人気の高さはまさしくアイドル的で、ツアーの前哨戦として3月に米・ロサンゼルスのウィルターン・シアターで開催された『TAKANAKA SUPER LIVE 2025 BLACK SHIP in L.A.』は2日間のチケットが即日SOLD OUT、5,000人の観客を熱狂させた経緯がある。この日もファンの声援に応えるように、腕をぐるぐる回すようなパフォーマンスで演奏したり、腕を振り上げながら「イェー!」と叫ぶなど、初日の緊張感はどこへやらといった雰囲気の盛り上がりに、高中自身終始ご満悦の表情を見せていた。

 唯一のMCでは、会場から上がる「待ってたよ!」「かっこいい!」などの声に、少し照れくさそうにはにかんだ72歳。海外での人気に触れ、「大昔から応援してくれている人が多いと思うけど、よくぞ僕のことをここまで応援し続けてきてくれました!」と、感謝の気持ちを高中流でコメント。次に演奏する「SHAKE IT」を紹介する際には、「昔この曲を“鮭弁”と言った奴がいてね。失礼だよね」とユーモアたっぷりに語り、笑いを取る場面もあった。

 「SHAKE IT」は高中の80年代を代表する曲のひとつで、女性パーカッショニストのシーラ・Eが参加したことや、とんねるずの主演ドラマに使用されたことなどでも知られるディスコナンバー。大滝裕子・斉藤久美・吉川智子による女性コーラス隊の“AMAZONS”の振り付けを真似して、一緒に踊って楽しむファンも多かった。また、この日のバンドメンバーには、斉藤ノヴ(Per)、岡沢章(Ba)、宮崎まさひろ(Dr)といったともに同時代を駆け抜けて来た同じ70代の同志。高中のライブではお馴染みとなった若手の井上薫(Key)、そして新たにメンバーとして加わった髙本りな(Key)といった面々。髙本のソロパートで彼女の名前を呼んで盛り上げ、高中が信頼を寄せる圧倒的なプレイに会場が沸く場面もあった。

関連記事