Lucky Kilimanjaro、かつてないほどの躍動感に驚き 5人体制ならではの武器を示したアグレッシブなステージ
攻めは最大の防御。変わらないための変化。その先に新たなバンド像が待っているに違いない。今日のライブを観て、その思いを強くした。ラッキリことLucky Kilimanjaro pre.『LOVE MY DANCE LOVE YOUR DANCE』と題した全国ツアー・Zepp Fukuoka公演(9月23日)は、従来のファンはもちろん、今日初めて観た人にとっても驚きの空間になったのではないか。
18時、客電が付いた状態で9月から産休に入った大瀧真央(Syn)による影アナが流れる。「10年以上、誰一人休むことなくLucky Kilimanjaroの活動を続けてきたので、一時的とはいえバンドを離れるのはとっても寂しいですが、留守を守る人を送り出すためにご挨拶させてもらいます。福岡のみんな、今夜はよろしくね! さあ、そろそろ参りましょうか?」という主旨のコメントに満杯の会場が沸き上がる。それから暗転し、1曲目は「かけおち」からスタート。熊木幸丸(Vo)、松崎浩二(Gt)、山浦聖司(Ba)、上手にラミ(Per)、下手に柴田昌輝(Dr)が並ぶ新たな配置でショーに挑む。「350ml Galaxy」に入ると、生楽器の迫力は増し、観客を一気にダンスフロアへ導く。曲中に熊木はオーディエンスと乾杯してビールを飲み、楽しそうに歌う姿も印象的であった。
その後も曲の繋ぎにインタールードを挟み、ほぼノンストップでショーを展開していく。いい意味でフロアを微塵も退屈させない構成にも唸らされた。インタールードでは山浦がベースソロを弾いたり、「後光」においては柴田のドラムとラミのパーカッションが力強く鳴り、そこに乗る熊木の歌声も伸び伸びとしていた。バンドのレベルが底上げされ、パワーと開放感は一段とアップしている。それはこの曲に限らず、ビートが前面に出ることで図太いバンドサウンドを獲得していた。
「Burning Friday Night」に入ると、5人体制ではあるものの、まるで彼女もこの場にいるような演出を施す。それも観客による巨大なシンガロングに繋がっていた。続く「エモめの夏」でも抜けのいいドラムの音にフロアはノリノリ状態だ。
そして「楽園」では、特別ゲストとしてyurinasia率いる福岡在住のダンサーチーム「jABBKLAB」のダンサー5名を加えて披露。音楽とダンスの融合により、お互いがスパークする相乗効果に観客も大興奮。演奏後、「やばい、やばい」と熊木も気持ちの昂りを抑えられない様子であった。この曲を転機にバンドグルーヴはますます上昇カーブを描いていく。「太陽」ではラミのパーカッションが活躍し、お祭り感に拍車がかかり、フロアの熱気は上がるばかり。
シンプルなビートを用いた「獣道 兵が踊る」、パーカッションのきめ細かなリズムが映える「実感」、骨太ドラムで畳み掛ける「はるか吠える」と続き、ダンスミュージックの新たな一面を知らしめるラッキリ。「Kimochy」では観客全員をジャンプさせる。「Dancers Friendly」では11人の男女ダンサーを招き、ステージもフロアもカオティックな盛り上がりを記録。とんでもない活気が渦巻き、個性際立つダンサーの踊りも楽曲を勢いづけていた。その勢いを「楽しい美味しいとりすぎてもいい」で加速させ、「メロディライン」と走り抜け、本編を終了。
アンコールに応えると、「まだ踊れますか? 皆さん踊ってください!」と煽り、「雨が降るなら踊ればいいじゃない」に移ると、踊る人たちが増えていく。〈さぁ踊ろう今こそ 乗り越えられるさ一緒なら〉の歌詞を感情たっぷりに歌う熊木。まさにラッキリを5人体制で守り続けるという現モードを象徴する言葉に感動を覚えたのは筆者だけではないはず。MCでは、「新しい夢ができた。ダンサーになりたい」とラミが言えば、「ダンサーすごかった。いつもより調子良くなっちゃった」と柴田は零し、演者にとっても今日の特別パフォーマンスは大きな刺激となったようだ。それがまた観客に伝わり、熱の冷めないフロアをキープした要因だろう。
ラスト曲「君が踊り出すのを待ってる」を含め、約2時間サイズで見せつけたラッキリ。1曲1曲の密度、ライブトータルの濃度に圧倒された人がほとんどだろう。何よりもボトムが太くなり、かつてなく攻撃力と躍動感を高めたバンドサウンドは、今だからこそ体感できる内容である。限定的にして、今しか観ることができない5人体制のラッキリを絶対に見逃さないで欲しい。