FOMARE、10周年でも変わらない“等身大”を歌える強さ 最新EP『overturn』で見つめる未来
10周年の節目に迎えた大きな別れ
FOMAREが10周年を迎えた今年は、さまざまな動きが続いている。仙台・Rensaを皮切りにスタートした『揉みに揉まれて10周年ツアー』は、全公演のチケットがソールドアウト。憧れの大先輩であるMONGOL800との2マンとなったツアーファイナルの東京・Spotify O-EAST公演は、絶好調の彼らを印象づけるライブとなった。また、各地の音楽フェスでも大活躍。夏の素敵な思い出のひとつとしてFOMAREのステージを胸に刻んだ人々が全国各地にいるに違いない。
そして……やはりこのことに触れないわけにはいかないのだろう。2019年11月に加入して以来、バンドのリズムの土台を担ってきたドラマーのオグラユウタが、8月30日の『SWEET LOVE SHOWER 2025』への出演をもって脱退した。9月からのFOMAREは、サポートドラマーを招いた体制での活動をスタートさせている。理由や経緯についてはオフィシャルウェブサイトなどで発表されているので、ここであらためて詳しく触れることはしないが、とても寂しいということだけは書いておきたい。音や歌声を重ねるだけでなく、メンバー各々が人生を交わし合うのがロックバンドだ。3人でともに過ごした時間のなかでかけがえのない瞬間がいくつもあったはずだし、大切な曲たちもたくさん生まれた。重ねた日々は、これからも色褪せることはないだろう。そして、9月24日にリリースされた最新EP『overturn』が、あの3人体制のラストを飾るにふさわしい作品となったのも、嬉しい事実としてありのままに受け止めておきたい。
変わらぬ瑞々しさで放たれる“等身大”のメッセージ
FOMAREの魅力の捉え方は人それぞれにあるだろうが、“爆発的な熱量と叙情性の融合”とでも言うべき部分は、おそらく多くのファンが感じているのではないだろうか。彼らのライブでクラウドサーフとシンガロングが同時に起こり続ける理由は、まさしくそこにあるのだと思う。作風の広がり、ソングライティングやアレンジの洗練、演奏スキルの進化は着実に重ねているが、この点は10年のあいだで揺らいでいないという印象だ。EP『overturn』に収録されている5曲は、活動の軌跡のなかで育まれてきたものを強く感じさせてくれる。
リリースに先駆けてラジオなどでのオンエアが解禁された「over」は、ソングライティングの切れ味の良さが際立っている。穏やかなテンポと温かなメロディで彩られているなか、強い印象を残してくれるのは〈ずっと〉。使い方や前後関係によって意味が変化するこの3文字を軸としながら、大切な人への強い想い、繋がり合えている感覚から生まれる大きな力を奥行き深く描写している。たとえば……〈繋がっていようずっと〉と〈愛しいよりもずっと〉を並べてみるとわかりやすいかもしれない。前者の〈ずっと〉が“継続する状態”を示しているのに対して、後者の〈ずっと〉は“ほかの何かとくらべて大きい様”。音の響きは同じでありながらも意味の差異があるこの言葉の活かし方に気づくと、曲に込められている意味は一際深く胸に染み入ってくる。
6月にデジタルリリースされた「サウンドトラック」は、爽やかに疾走するサウンドが徐々に熱を帯びていくのが気持ちいい。上手く育むことができなかった恋への後悔をほろ苦く滲ませつつも、大切にし続けている姿が浮き彫りにされている。まっすぐな愛情表現を煌めかせる「余韻」は、随所に盛り込まれたスリリングなタメとキメ、起伏に富んだ展開が刺激的。ロックバンドとしての生々しいエネルギー、奥行き深い物語性、多彩な描写の融合が、FOMAREの十八番であることを再確認させられる。そして、そんななかに「宝物」が収録されているのが楽しい。FOMAREのルーツのひとつであるメロディックハードコアパンクの要素をストレートに発揮しながら、情熱的な想いを躍動させるこの曲を聴くと、爆音を奏でるピュアな喜びで満ちたバンドキッズの表情が想い浮かぶ。10周年を迎えても変わらぬ瑞々しさで“等身大”のメッセージを放つのがFOMAREであり、表現力とサウンドアプローチの幅を広げ続けつつも、“ライブハウス生まれライブハウス育ち”の息吹を常に漂わせる彼らの姿に触れられるのが、この3曲だ。
そして、このEPを締めくくる5曲目「24/7」は、とても美しい。ピアノの調べも加わりながら瑞々しいメロディを高鳴らせ、思い描いていたような未来に辿り着けなかった恋に対する無数の想いを渦巻かせている。「寂しい」「切ない」という想いがどれほど募ったとしても、ともに過ごした時間を大切にする気持ちは捨て去れるものではない。しかし「幸せを祈るよ」と躊躇なく言えるほど潔くもなれない……という複雑な堂々巡りの果てに、未来を見つめる言葉に辿り着くのが、この曲の深い味わいだ。リリース後に何度も繰り返し聴かれるなかで、リスナーが強く感情移入していくことになると思う。
9月23日にGメッセ群馬で開催された『10周年記念無料LIVE “愛する人、場所”』で披露された『overturn』の曲は「over」「サウンドトラック」「宝物」。畝狹怜汰(mother)と小松謙太(ハルカミライ)をサポートドラマーに迎えた編成で、アマダシンスケ(Vo/Ba)とカマタリョウガ(Gt/Cho)が活き活きと音を奏で、歌声を響かせていたことが思い出される。2026年5月22日に日本武道館公演を開催することも発表されたこのライブは、これまでの軌跡を大切にしながら前へと進む姿を鮮烈に印象付けてくれた。大きな変化を経たこのタイミングでのライブの開催地が地元である群馬だったのも、積み重ねてきた過去を精一杯に抱きしめながら未来へと向かう意志の表れだったように感じる。10年間活動してきたバンドは“中堅”と呼ぶのが適切だろうが、2人編成で動き始めた今のFOMAREについてアマダは途中のMCで「のびしろがある」と表現していた。その通りだと思う。今後のFOMAREが魅力をどのように深めていくのか、とても楽しみだ。
■リリース情報
New EP『overturn』
発売中
配信リンク:https://tf.lnk.to/overturn_stdl
・初回生産限定盤
TFCC-81152~81153
価格:¥3,300(税込)
仕様:CD+Blu-ray(『FOMARE揉みに揉まれて10周年ツアー』ドキュメンタリー)
・初回仕様限定盤(通常盤)
TFCC-81154
価格:¥2,420(税込)
仕様:CD
<収録曲>
1. over
2. サウンドトラック
3. 宝物
4. 余韻
5. 24/7
■公演情報
『FOMARE LIVE at 日本武道館』
日時:2026年5月22日(金)open 18:00 / start 19:00
会場:東京・日本武道館
チケット情報は公式サイトをチェック
https://fomare.com
■関連リンク
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