ONE OK ROCKはなぜ世界を舞台に闘い続けるのか――4人の本当の凄み、『DETOX』ジャパンツアーのすべて

 8月16日の大分公演からスタートした『ONE OK ROCK DETOX JAPAN TOUR 2025』。今年2月にリリースしたニューアルバム『DETOX』を携え、4月の南米、5月の北米と巡ってきたONE OK ROCKによる、待望のジャパンツアーだ。音楽性においてもメッセージ性においてもかつてなく強靭でディープなアルバムとなった『DETOX』だが、そこに込められた意思は、ライブにおいてもとても強く、鋭いものとして表明されていた。

Photo by MASAHIRO YAMADA

 なぜONE OK ROCKは世界を舞台に闘い続けるのか、今ロックバンドが鳴らし伝えるべきものとは何なのか。そんな、自分たち自身の存在意義を問い直すようなパフォーマンスは、まさにそのシリアスな意思ゆえにどこまでもエモーショナルでパワフルなエンターテインメントとなっていた。ここに掲載するのはツアー4公演目、日産スタジアム2日目となった8月31日の公演の模様である。今この時代に、この国にONE OK ROCKがいてよかった。素直にそう思える、圧巻の一夜だった。

Taka(Vo)(Photo by MASAHIRO YAMADA)

 開演時刻、スタジアムに設置された巨大なステージのLEDスクリーンに、オープニングムービーが映し出される。そこで描かれるのは、神さまによりばら撒かれた謎の菌類によって荒廃した世界と、地上に住めなくなった人類の逃げ場所となった仮想世界、そしてそこで起きる争い。紛争が絶えず、インターネット上でも諍いがやまず、AIによって思考力が奪われていく――そんな、僕たちが生きる世界を投影した寓話だ。その寓話の果てに、ナレーションがこう語る。「ONE OK ROCKは気づきます。平和でない国があったから、平和な国があったのだと。本当に大切なのは、『知らない』ということを知っていること」。それを伝えることがONE OK ROCKの使命であり、そのために彼らは世界中で歌っているのだと。

Toru(Gt)(Photo by MASAHIRO YAMADA)

 そう、それこそが彼らが『DETOX』――“浄化”というアルバムタイトルに込めた意味だ。そんなメッセージに応えるように、スタジアムを埋め尽くしたオーディエンスから歓声と拍手が起きる。それを受け止めながら、メンバーが姿を現した。そしてTaka(Vo)が高らかに歌い出したのは「Puppets Can't Control You」。オーディエンスを鼓舞するように鳴り響く重厚なバンドサウンドとTakaの咆哮。「いくぞ、日産!」。スクリーンに映るポップなアニメーションとは裏腹の、切迫感と緊張感をもった音がスタジアムを席巻していくのだった。

Ryota(Ba)(Photo by MASAHIRO YAMADA)

 続く「Save Yourself」でも、「Make It Out Alive」でも、「Cry out」でも……どの曲でも観客はバンドに負けじと声を張り上げ、全力で手を叩き、まるで自分もバンドの一員かのように音楽に参加している。“一体感”などという生半可な言葉では到底言い表せない雰囲気が、ONE OK ROCKの最強ぶりを絶えず証明するように広がっていく。先ほどのオープニングムービーにもあったとおり、裏側にはとてもシリアスなテーマを持ちながら、それを説教臭く伝えるのではなく、あくまで最高のロックショーとして見せつける、それがONE OK ROCKというロックバンドの流儀だ。「Cry out」を終え、まだまだいくぜとばかりに手首を回すTaka。そして、続く「NASTY」でも彼の「歌え!」の声にまたしても大合唱が巻き起こったのだった。

Tomoya(Dr)(Photo by MASAHIRO YAMADA)

 ここでメンバーそれぞれからMCが行われる。それぞれに今年結成20周年であることに触れ、ファンへの感謝を口にするなか、Toru(Gt)は「一緒にここまできてくれて、ありがとう」とメンバーにまっすぐな言葉を伝えた。それを受けたTakaは、「やめろよ、序盤でそういうこと言うの!」とツッコミを入れていたが、彼自身もToruの言葉に気持ちが高まったのだろう。「俺もおまえらと一緒に音楽できて……う、う、嬉しいよ」とおどけながら言葉を放つ。「20周年と言ってるけど、実は加入して19年」というTomoya(Dr)の発言にもRyota(Ba)がすかさずフォローを入れたり、いつまで経ってもこのバンドのメンバーはとても仲がいい。最後にTakaが「初のスタジアムツアーというのもあるので、みなさんが聴きたいなと思っている曲、もしくは懐かしいなと20年を振り返れるような曲でセットリストを作ってきたつもりです」と宣言。その言葉どおり、懐かしい「Living Dolls」からライブは再開されていった。

Photo by MASAHIRO YAMADA

 ライブ中盤では、「Party’s Over」や「Tiny Pieces」といったスケールの大きな楽曲をTakaが力強く歌い上げて空気を変えると、「ここからは少し静かな曲を」とサポートメンバーとしてピアノを弾くOsamu Fukuzawaを紹介するTaka。この日産スタジアム2DAYSで初めて一緒にライブをするという彼のピアノとともに演奏されるのは、「This Can’t Be Us」。Takaが自身に愛情を注いできてくれた大切な存在である祖母を想って書いた曲だ。遠くへ、遠くへと投げかけるようなTakaの歌声を、Fukuzawaのピアノが優しく、力強く後押しする。さらにスクリーンに映し出された星空を背に「All Mine」、そしてステージ上で火が灯るなか「Renegades」を、いずれもピアノと歌のみで届けると、曲中静まり返っていた客席から、わっと拍手が湧き起こった。

Photo by Kosuke Ito

 ここから後半戦。神秘的なインタールードに続いて、Toruのギターを皮切りにRyota、Tomoyaとのセッションが繰り広げられる。暴れ馬のようなドラムを叩きながら笑顔を浮かべているTomoyaの表情が印象的だ。と思ったら、そのセッションが鳴り止んだ刹那、空間を切り裂くようなギターサウンドが鳴り響いた。弾いているのはToruではない。ふと客席に目をやると、そこにいたのは上半身裸で演奏するPaleduskのギタリスト・DAIDAIの姿。その横にはラッパー・CHICO CARLITOもいる。ふたりがステージにたどり着くと、そこにはPaleduskのほかのメンバーもいる。Takaが叫ぶ。「このメンツが集まったってことは、やることはひとつしかないよな!」。そして鳴らされるのは、もちろん彼らが参加した「C.U.R.I.O.S.I.T.Y.」。さらに分厚さを増したバンドサウンドとツインボーカル+1MCの迫力に、日産スタジアムのテンションは沸騰。空気をビリビリと震わせるようなシンガロングが鳴り響いた。

Photo by Rui Hashimoto(SOUND SHOOTER)

 さらに同じメンツによるスペシャルバージョンで「One by One」を披露すると、ゲスト陣を送り出し、再び4人だけで「The Beginning」。ToruとRyotaのプレイが喝采を浴びるなか、Takaはオーディエンスに歌を預け、会場をさらなる熱気で充満させると、早くもライブは最終盤に。Takaは「大事なことは、どれだけ自分たちの気持ちをピュアにまっすぐにみなさんに伝えられるか。これだけなんです。世のなかには金がほしいヤツがいるかもしれない。でも、それと同じくらい、自分たちにまっすぐ生きることを欲している人間もいるんです。それがONE OK ROCKです」と告げ、「今の僕らの、日本や世界に対するメッセージです」という言葉とともに「Delusion:All」に入っていった。巨大なシンガロングが生まれるなか、Takaが堂々と中指を掲げる。時代の空気に抗って闘い続けるという意思表明だ。

Photo by Kosuke Ito

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