「舐めんじゃねえ」――野音に刻んだアユニ・Dの存在証明 BiSHから持ち続ける反骨精神、PEDROの軌跡と次なる“夜明け”

 BiSHでこの野音に立ってから9年、PEDROが始まって7年。その間にアユニ・Dにとってこのバンドをやる意味は変わってきた。そして今、彼女を走らせているのは「舐めんじゃねえ」という思いだ。「グリーンハイツ」の迫力に満ちた歌は、これが、これこそが自分の存在証明なのだと訴えるような切実さと決意を感じさせるものだった。

 「あとちょっとで終わっちゃうんですけど、これからも私は音楽を続けてゆくので、よかったらまた遊びに来てください」。そんなシンプルな言葉にさまざまな思いを滲ませて、ライブは終盤へ。「hope」を経てアカペラで始まった「春夏秋冬」、そしてまばゆい光の中で「雪の街」が始まっていく。ふと、この曲が最後に演奏された4年前の横浜アリーナ公演を思い出す。あのライブのこの曲が、PEDROのひとつの終わりと始まりを象徴していたように、今またPEDROは新たな出発をしようとしているのかもしれないと思った。そして「最後に1曲やって帰ります」と「アンチ生活」を披露すると、振り返ればあっという間のライブ本編は終わりを迎えたのだった。

 しかし、この日はここからがある意味でPEDROの“本領”だった。アンコールの声に呼ばれて再びステージに登場。アユニはステージのバックドロップを引き剥がし、その後ろに隠れていた新たなビジュアルをあらわにする。これは、このあとにリリースが発表されたミニアルバムのアートワークだった。それを背負って、新曲「1999」が鳴らされた。高らかなリズムと明るいアユニの声に、再び野音の空気がブライトに塗り替わる。さらに、「9月10日にミニアルバムを出します。全部で6曲あって、今1曲やったんで、残り5曲やります」と、新作からの楽曲初披露が繰り広げられていく。田渕のギターがキャッチーなリズムを刻む「ZAWAMEKI IN MY HEART」、どこかサイケなサウンドが印象的な「拝啓、僕へ」。今一番歌いたいことを詰め込んだであろう歌詞を、アユニは生き生きとした声でなぞっていく。「朝4時の革命」を経て鳴らされた「いたいのとんでけ」では、ベースを置いてハンドマイクで踊るようにして歌う姿も披露。PEDROがより自由にアユニ自身を表現するものになっていることを象徴するような一幕に、客席も大いに盛り上がった。最後はミニアルバムのタイトル曲である「ちっぽけな夜明け」。どんな曲かはぜひその耳で確かめてほしいが、歌詞の内容もサウンドも含めて、これからのPEDROを指し示す1曲になっていると思う。

 これで新作も全曲披露、ライブは無事終了……かと思いきや、オーディエンスからのアンコールを求める声が止まず、なんとライブはWアンコールへ。そこで演奏されたのは、これまでPEDROがたびたび鳴らしてきたNUMBER GIRL「透明少女」のカバーだった。大興奮の客席を前に最後まで力強く音を届けると、今度こそPEDRO初の野音は閉幕を迎えたのだった。

■セットリスト
『Special One-Man Show「ちっぽけな夜明け」』
2025年8月11日(月・祝) 東京・日比谷公園野外大音楽堂

M01. NIGHT NIGHT
M02. GALILEO
M03. 夏
M04. 東京
M05. 感傷謳歌
M06. 生活革命
M07. ラブリーベイビー
M08. 音楽
M09. 祝祭
M10. 愛愛愛愛愛
M11. EDGE OF NINETEEN
M12. 万々歳
M13. 吸って、吐いて
M14. グリーンハイツ
M15. hope
M16. 春夏秋冬
M17. 雪の街
M18. アンチ生活
<EC>
M19. 1999
M20. ZAWAMEKI IN MY HEART
M21. 拝啓、僕へ
M22. 朝4時の革命
M23. いたいのとんでけ
M24. ちっぽけな夜明け
M25. 透明少女(NUMBER GIRLカバー)

関連記事