Mrs. GREEN APPLE「青と夏」はなぜ“夏うた”の新たな定番に? 9億回再生達成の背景にある「ライラック」との相乗効果

 Mrs. GREEN APPLEが8月11日にリリースした新曲「夏の影」。この曲は、酷暑が続く2025年の日本の夏を涼しく彩ってくれる新たな“夏うた”だ。あまりの暑さのなかで、私たちがつい忘れかけてしまっていた日本の夏特有の風情を思い出させてくれるのと同時に、そこには不思議と親しみ深い懐かしさが滲んでいる。同曲は、きっとこれからも私たちの夏に優しく寄り添い続けてくれるはずだ。

Mrs. GREEN APPLE「夏の影」Official Music Video

 Mrs. GREEN APPLEに対して夏うたのイメージを持つ人は多いはずで、実際に、「サママ・フェスティバル!」や「点描の唄 (feat. 井上苑子)」をはじめ、夏をテーマにした楽曲、夏を描いた楽曲は多い。ただ、タイトルに“夏”がつく楽曲は意外と少なく、先述の「夏の影」と2018年8月にリリースされた「青と夏」、この2曲だけだ。

 「青と夏」は、自らが青春の季節の渦中にいた当時21歳の大森元貴(Vo/Gt)が書き上げた楽曲だ。リリース後も、年数を重ねるたびに夏の定番曲としての存在感を高め続けている。バンドの支持の高まりに合わせて、夏という季節がやって来るたびにチャートに再浮上、そして上昇。他アーティストなどのカバーも次第に増え、その結果、2024年1月にはストリーミングの累計再生回数5億回を突破(※1)。同年には、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で6年ぶりに同曲を披露した。また、キリンビールのCMに出演した大森が同曲のアコースティックバージョンを弾き語ったことも、この曲の存在感の向上を後押し。そして先日8月13日には、ストリーミング累計9億回再生を突破(※2)したことが発表された。つまり、2024年1月以降のたった約1年半で4億回も再生されたことになる。単なる“過去曲のリバイバルヒット”という言葉では説明が追いつかない現象と言えるだろう。

Mrs. GREEN APPLE - 青と夏

 その理由には、複数のポイントがあると思う。たとえば、ほかの定番の夏うたよりもはるかに速いBPM。この速さこそが暑い夏を、青春の季節を鮮やかに駆け抜けるような爽快感をもたらしてくれる。聴く人の世代や聴く季節を問わず、多くの人がこの曲から爽快なエネルギーを受け取っているはずだ。

 また特に大きな理由として挙げられるのが、2024年に特大ヒットを記録した「ライラック」との連動性だ。「ライラック」には、〈あの頃の青を/覚えていようぜ/苦味が重なっても/光ってる〉という歌詞がある。この〈青〉は、青春そのものの象徴であり、この曲で歌われているメッセージは「青と夏」と深いところで繋がり合っている。実際に、ライブではこの2曲が続けて披露されることもあり、8月17日の『SUMMER SONIC 2025』のステージで最後に披露されたのもこの2曲だった。サブスクリプションサービス、またライブなどを通して、「ライラック」をきっかけに「青と夏」の真価を再確認した人は、きっと少なくなかったはずだ。

Mrs. GREEN APPLE「ライラック」Official Music Video

 Mrs. GREEN APPLEのメンバーも、ファンも、年を重ねていくごとに少しずつ大人になっていく。その過程で、かつて大切にしていたものを手放してしまいそうになることもある。「ライラック」の〈あの頃の青を/覚えていようぜ〉という言葉は、まさに、Mrs. GREEN APPLEの音楽を聴きながら大人になっていくリスナーへ向けた渾身のメッセージだ。そして、「ライラック」がそう歌ってくれることによって、一人ひとりのリスナーに向けて〈主役は貴方だ〉と呼びかけ、青春の季節を誰しもが“当事者”として存分に謳歌することを促す「青と夏」の輝きも増すのだ。

 この曲には、〈大人になってもきっと/宝物は褪せないよ〉という歌詞がある。これは、のちに生まれた「ライラック」の〈あの頃の青を/覚えていようぜ〉とも呼応し合うように思う。年齢や世代なんて関係ない。いつだって私たちは、自分の意思と行動次第で〈青〉の季節を存分に謳歌することができる。この楽曲は、まったく新しい夏うたであるのと同時に、極めて普遍的なメッセージを描いた青春ソングであり、これからも季節を超えて、そしていくつもの時代を超えて、たくさんの人々の心を奮い立たせ、背中を押し続けていくのだと思う。

※1:https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/133450/2
※2:https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/152333/2

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