「夏色えがおで1,2,Jump!」「Marine Border Parasol」……『ラブライブ!シリーズ』“夏曲”の魅力とは?

 しかし、スクールアイドルは夏が終わる寂しさだけでなく、再び夏が訪れる希望も知っている。たとえば、Aqoursの2年生が歌う「Marine Border Parasol」では、冷えた砂浜から過ぎ去った季節へ想いを馳せる一節の直後に、彼女たちは夏が再びやってくる予感を歌っている。大切な仲間と過ごせる夏や青春はこの瞬間にしかないが、どれほど日々が過ぎ去ってしまっても、熱い日々を過ごしてはいけないなんて決まりもない。夏が再びくるように、夢を見て、全力で駆け抜ける日々もまた訪れる。同じ夏は二度とこないが、同じように熱くなれる夏は自分が願う限り何度でもやってくる。これが“なんどだって青春”という『ラブライブ!シリーズ』の信念と相性がいいのだ。

 “スクールアイドルの夏”が歌われ始めてから、実に15年近い月日が経った。その間、μ'sに続く後輩が次々と現れ、それぞれの夏を歌ってきた。そのため、シリーズごとにファンが抱く“夏”の印象は違うかもしれない。たとえば、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』ではアニメ作中で、スクールアイドルフェスティバルが始動し、多くの熱が集まるきっかけになった。『ラブライブ!スーパースター!!』ではアニメ1期に「常夏☆サンシャイン」、2期で「ビタミンSUMMER!」とそれぞれ夏曲が披露されているが、どちらもメンバー加入回の挿入歌となっている。そのため、暑さに当てられた少女たちが“新たな夢”に踏み出していく、刺激的な季節を歌っている印象が強い。

【限定公開】ビタミンSUMMER! / Liella!【TVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』2期第6話挿入歌】

 『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』にとって夏は、みらくらぱーく!が本格的に始動した季節でもある。本コンテンツが現実のカレンダーと連動して進行する都合上、現実の暑さと、藤島 慈が戻り『蓮ノ空』が完全体になった熱さがリンクしている方も多いだろう。

 シリーズが始まり15周年を経て、スクールアイドルの数だけ熱く駆け抜ける季節があった。しかし、どれほど時が過ぎても、どこで過ごしていても、少女たちが過ごす夏の普遍性は今も変わらない。熱さ、高揚感、恐怖、希望、そして「終わってほしくない」という切実な願い。誰にも奪えはしない少女たちだけの想いが込められた夏はまだ終わらない。

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