DREAMS COME TRUE、クリープハイプ、ME:I、cero、ØMI、LANA……注目新譜6作をレビュー

New Releases In Focus

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はDREAMS COME TRUE「BEACON」、クリープハイプ「ざらめき」、ME:I「THIS IS ME:I」、cero「健忘者たち」、ØMI「To be feat. 三浦大知」、LANA「Summer Ride (feat. ¥ellow Bucks)」の6作品をピックアップした。(編集部)

DREAMS COME TRUE「BEACON」

DREAMS COME TRUE「BEACON」【Official Audio】

 ドラマ『大追跡〜警視庁SSBC強行犯係〜』(テレビ朝日系)主題歌。DREAMS COMES TRUEの二人にとって地上波テレビドラマの主題歌の書き下ろしは5年ぶりで、制作側から「主題歌は、いつの時代も人々のあらゆるシーンに寄り添った楽曲を多数生み出しているDREAMS COMES TRUEにおいて他にいない」と熱烈なオファーが送られたそうだ(※1)。完成したのはシリアスながらも情熱的なミドルバラード。〈罪悪感〉〈後悔〉などのワードは犯罪と向き合う刑事ドラマらしいものだが、サビに〈あなたの物語に わたしをいさせて〉と隣人の目線を入れることで、楽曲は普遍的なラブソングに昇華される。また、アレンジ面では別のノイジーな打ち込み音がいいスパイスになっている。(石井)

クリープハイプ「ざらめき」

Zarameki

 暑さと気だるさを想起させるメロディライン、煌びやかな輝きとノイジーな響きを併せ持ったギターのフレーズ、そして、どこにも行き場所がない恋愛感情を描いた歌詞。クリープハイプの新曲「ざらめき」は、「憂、燦々」(2013年)、「ラブホテル」(2013年)、「青梅」(2023年)などに連なる、どうしようもない夏の恋歌だ。ダサい恋をして、また好きになって、話しかけないでほしかったり、何か言ってほしかったり。情けなくて愛おしい記憶を詩的に映し出す言葉、そこから想起される映像や匂い、そのすべてを増幅させるバンドサウンドと歌声がゆったりと溶け合うこの曲は、クリープハイプの音楽表現がさらに深みを増していることを告げている。決して派手さはないが、いつまでも心と身体に残ってしまう新たな名曲の誕生だ。(森)

ME:I「THIS IS ME:I」

ME:I (ミーアイ) ⊹ 'THIS IS ME:I' Official MV

 1stアルバム『WHO AM I』から先行配信された「THIS IS ME:I」はタイトル通り、このグループが目指すビジョン、自らのアイデンティティを明確に表した楽曲だと思う。まず印象的なのは、ハイブリッドとしか言いようがないトラックメイク。HIPHOP、フューチャーベース、EDMなど多彩な要素を織り交ぜることで、圧倒的なオリジナリティを実現しているのだ。歌詞の軸になっているのは、「私は私、あなたはあなた。他の誰とも違う存在として輝こう」というメッセージ。それを象徴しているのが〈You & ME, One & Only, Yeah/未来を照らすよ 今〉というフレーズだろう。ファンはもちろん、聴く者すべての自己肯定感をグイッと上げてくれる、極上のエンパワメントソングだ。(森)

cero「健忘者たち」

健忘者たち

 なんと2年ぶり、何度聴いても意識が遠くなるほど気持ちのいい新曲の登場だ。歌自体はループしながら淡々と続くのだが、代わりに美しいレイヤーを作っているのが絶品のコーラスワーク。また、ピアノ、電子音、ハンドクラップ、シンセベース、ドラムなどが、すべてビートメイクの役割を担いながらくるくる入れ替わっていく構成にも刮目したい。先鋭的なのにスッと耳に馴染む軽やかさがあり、最新鋭のジャズやエレクトロニカのフィーリングも備えているうえ、とぼけた風味の歌詞にはさりげない希望のメッセージが光っている。素晴らしい。星野源「Mad Hope (feat. Louis Cole, Sam Gendel, Sam Wilkes)」と同じく、今最も鮮やかに日本のポップミュージックを更新していく一曲と言えそうだ。(石井)

ØMI「To be feat. 三浦大知」

ØMI - To be feat. 三浦大知 (Official Music Video)

 ラグジュアリーな雰囲気のダンスチューン「Feel Gold feat. 山下智久」、“レペゼン日本”をテーマに掲げた「Purple Pill feat. SKY-HI」に続くコラボプロジェクト第3弾は、「To be feat. 三浦大知」。壮大さと繊細さを併せ持ったサウンドメイク、大らかな雰囲気をたたえた旋律、そして、三浦とØMIの声の重なり合いが豊かな感動へと導いてくれる。一つひとつの言葉を丁寧に紡ぎながら、開放的なスケール感へと結びつける二人のボーカルこそが、この曲の核だろう。〈すれ違いや弱さも/抱きしめていこう/答えはここにある〉という一節も印象的。もちろんラブソングとして捉えることもできるが、あらゆる場所で分断が進む現代社会に対する大切なメッセージとしても機能していると思う。(森)

LANA「Summer Ride (feat. ¥ellow Bucks)」

LANA - Summer Ride (feat. ¥ellow Bucks) (Official Lyric Video)

 夏真っ盛りのタイミングで到着する最新サマーチューン。ジャケットにもリリックビデオにもド派手なアメ車が映っているが、とにかくぶちアゲるパーティ感が希薄なのは、海も夏もカーライフもLANAの地元・湘南に普通に根付いているからだろう。バウンスしながらメロウに揺れるウエストコースト系HIPHOPトラックに乗り、平塚、逗子などの地名を散りばめながら日常を歌う。客演でラップする東海エリア出身の¥ellow Bucksが、〈オレの縄張り〉として名古屋への夜遊びを誘っているところもナイス。夏のパリピたちに相応しく〈プールサイド空けるchampagne〉といったフレーズも出てくるが、あくまで二人は自分たちのリアルを歌にしている。(石井)

※1:https://www.tv-asahi.co.jp/daitsuiseki/news/0005/

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